あるピアニストの一生

おしゃべりコンサート 音楽の三要素 その1

1990年に草津文化芸術会館(現クレアホール)で行われたおしゃべりコンサートです。
カセットテープが残っていましたので、テキストに起こしてみました。
この時代は司会の方と2人でやっていたようです、半分漫才のようなユニークな雰囲気を感じていただけるでしょうか。

 

(バッハ プレリュード1番)

司会:みなさま、ようこそ、いらっしゃいませ。まだまだ暑いさなか、地元の方々はもちろんのこと、遠く大阪、神戸あたりからも、たくさんお越しになっていらっしゃるようで、どうも、本当に、篤く御礼申し上げます。
本日は、肩肘の張らないコンサートとして、音楽のこと、ピアノのことなど、いろいろお話をさしていただきまして、ただ、このコンサートは、プログラムはございましても、シナリオがございませんので、話がとんでもない方向へなるかもわかりません。また、事前に打ち合わせなどあまりしておりませんので、ピアニストの先生がびっくりするような、突然、何かを弾いていただきたいゆうこともあるかもわかりません。
やっと秋めいてまいりまして、芸術を語り合う気分になってきたこの秋の一日を、ゆっくりお過ごしいただけるよう、お願いいたします。
私、本日の司会をさしていただきます、○○でございます。それから、本日の主役でございます、ピアニストは、田所政人先生です。(拍手)みなさんもご存知かと思いますけれども、地元では夙に有名でありまして、世界的に、はまだなってはいないようですけれども(会場笑)まあこれからなるでありましょうから、この場をよく聞いていただいて、世界的になったときに、あの人の昔のコンサートを聞いた、というのを財産にしていただきたいと思います。では、よろしくお願いします。(拍手)

それではですね、まず最初に、先生、プログラム通り行きますとですな、 音楽の三要素から話を始めようではないか、いうことなんですが、みなさん、音楽の三要素ってご存知ですか。先生はひょっとして、ご存知でしょうな。

田所:ええ、なんとか。(笑)

司会:では、言っていただけますか。

田所:そうですね、まずリズムですね、そしてメロディー、そしてハーモニーですね。この3つの順番ですね。順番を変えるとちょっとまずいんですけれども。

司会: リズムと、メロディーと、ハーモニー。音楽の三要素っていうことですが、芸術で言えば、絵画にも三要素いうのがございますな。色の三要素。赤黄青と。

田所:それは三原色とちゃいましたっけ。(笑)

司会:音楽で三原色、三要素いうとね、そういうのとは全然違うわけですね。音の三原「音」ですか、色のように混ぜ合わせると透明になるってことは絶対ないわけですね。不思議ですね。あ、のっけから話がとんでもない方向に行きましてこれは申し訳ございません。まずリズムの話をやっていきましょう。

私に関して申し上げますと、リズムっていうのは、非常に難しいんです。今まで簡単やと思っているリズムっていうのも、実は大変難しいリズムやっていうのを最近感じるんですけど、たとえば、符点のリズムですね。たんたたんたってやつですね。

田所:ちょっと違います。(笑)

司会:そうでしょうか。(笑)実は私が申し上げているのは、3連符のリズムを、2対1に分けていうるのが、今のリズムであって、これは符点のリズムではないんですね。ところが、これを符点のリズムに直すっていうのは非常に難しいわけです。私には到底できないと思うんです。

 音源 符点のリズムの難しさ 提示編 

司会:ちょっと口で言うててもよくわかりませんから、ひとつ弾いていただきましょうか。符点のリズムがたくさんでてくる曲というのはたくさんあるんですけれども、ユーモレスクという曲がございますね、あれを弾いていただきましょうか。

 音源 ユーモレスク 

司会:私が弾くと全部たんたたんた、になってしまいそうですが、ではどうしてこうなるのか、日本人におけるリズムの欠陥とは根源的にはなんなのか、というのをお聞きしたいんですけどね。

 音源 符点のリズムの難しさ 解決編 

司会:そうすると、かつて、大変な昔、大変な昔ではないかもしれない、バッハくらいにまで遡りましょうか、バッハが書いた符点のリズムっていうのは、ひょっとすると、今演奏している符点のリズムではないかもわからんねんな。

 音源 バッハの場合 

司会:ちょっと余談になりますけどね、リズムとは関係ないんですが、テンポの話をさせてください。テンポも昔の楽譜を見てますと、たとえば、一分間にいくつ、と書いてあればわかるんですけどね、allegroと書いてあるとするでしょ。そうすると、今のメトロノームでやると、まあだいたい、えー、120~170くらいですか。

田所:ちょっと速過ぎますね、144か152まででしょうね。(笑)

司会:あの、私のメトロノームでは、120~168と書いてあるんです(笑)

田所:ああ、はい(笑)

司会:だからね、たとえばallegroって書いてあるバッハのソナタなんかはね、第三楽章なんかをやろうと思ってメトロノームつけますな。そうするとギョッとするわけですわ。ひょっとしたらこれは、時代とともに速さも変わってるんやないか、とおもうんですけれどもね。

 音源 時代とともにテンポも変わる 

司会:じゃあね、たとえば、ちょっと何か1つ、易しい曲でいいですからね、楽譜通りに弾いたらこんなとんでもない曲になるんだよ、っていうのはありませんか。

田所:とんでもない曲になる?

司会:なんというかね、ふだん聴き慣れた曲ではないんだ、という。まあ練習曲なんかはよくあると思うんですけどね。ブルグミュラーなんかは、全部・・・

 音源 アラベスク 

司会:あっという間に終わってしまいましたが。

 音源 ブルグの例 

司会:リズムにしろ、テンポにしろ、時代によって進歩しているというよりも、変わってきているということはあるようです。

 → その2へ続く

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