あるピアニストの一生

音楽関係の文章  誤訳について

 

時々あれっと思う日本語に出会うことがあります。私のこれまで出会った例としては

○同じ曲に「気持ちのいい朝」と「農夫の朝」という違う題名がついていました。
pleasantとpeasant, どちらかが読みそこないでしょうね。

○トンプソンピアノ教本1巻に「シリアに寄せて」という曲があります。原本を見てないので断定できませんが「シチリア(シシリー)に寄せて」だと思うんですがね。その曲はシチリアーノ風ですから。「シリア」はあまりクラシック音楽に関係のある土地とも思えない。

○明白な誤訳を一つ。フランクの「Praeludium,Choral und Fuge」誰が最初に訳したのか知りませんが「プレリュード、コラールとフーガ」という訳がまかり通っています。中学校1年生で習うはずなんですがね、事物を並立するとき欧米系の言語では、「A,B,andC」と最後に一つだけandを入れる。日本語では「AとBとC」すべての間に「と」を入れると。「Apple,Orange and Banana」訳したら「りんごとみかんとバナナ」。「りんご、みかんとバナナ」とは訳さないでしょ。

当然この曲は「プレリュードとコラールとフーガ」です。

「プレリュード、コラールとフーガ」ですと、

1、「コラールとフーガ」という名前のプレリュード。
2、「プレリュード」と「コラールとフーガ」の2部分に分かれる曲。
3、「プレリュードとコラール」と「フーガ」の2部分に分かれる曲。

のどれかになります。もちろんそうではない。なぜこういう誤訳がいつまでもまかり通っているのか不思議でならない。

○誤訳とは言えないが、日本語のセンスの全くない訳を一つ。ドビュッシーの The snow is dancing 「雪が踊っている」という訳が通用してます。danceは確かに「踊る」ですが、日本語の「踊る」よりもう少し幅が広い。日本語では雪は「舞う」というのです。そしてもちろんdanceに「舞う」という意味が含まれています。従ってこの曲のより日本語らしい訳は「雪が舞っている」 大体「雪が踊っている」なんて文学者が聴いたら吹き出すんじゃないの(怒るかな)。

追加)「雪が舞っている」については数人の方から「雪が踊っている」の方がいいんじゃないかというご指摘がありました。「日本語のセンスの全くない」という言い方は取り消すことにします。しかし私としては、あの曲は「雪が舞っている」の方がいい訳だと思うことには変わりありません。       

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