あるピアニストの一生

難易度別 おすすめピアノ教材一覧表

 

一覧表の作成経緯と田所ピアノ教室のレッスン方法(管理人著)

 田所ピアノ教室では、(晩年はどうだったかわかりませんが少なくとも私が習っていた時代までは)下の図のような感じで、レベルが上がった生徒にそのレベルの曲目一覧と音源カセットを渡して、「弾きたい曲にマルをつけてきなさい」という方式で、やる曲を決めていました。◎○△×の4段階で、それぞれ「絶対弾く」「弾きたい」「弾いてもいい」「いや」だったと思います。

一覧

 そうするとまあこんな感じで、小学生ならかわいらしいイラストを描いてきたり、◎をつけた隣に「絶対ひく」「おねがいたのむ」「本気でやる」などと書いてきたり、むしろ「全部弾く」と書いてきたり、三重丸・四重丸・五重丸などとマルをインフレにしてきたり(私です)する一方、控えめな子は全部○と△だったりするわけです。

 ほとんどの子は一覧のうち半分くらいマルをつけてきますから、それ全部やっていてはなかなか次のレベルに行けません。マルがついている中から父がさらに8~10曲くらい精選してやらせていたようです。 私も何度か、「この曲◎をつけてくれてるけど、まだ手が小さいから今回はパスするね」などと言われた覚えがあります。

 ざっくり言って、初心者(レベル10くらいまで)は1年で3レベルアップ、中級者(10~20くらい)は1年で2レベルアップ、上級者は1年で1レベルアップくらいのペースだったように思います。初心者は3曲同時進行で2週目のレッスンでマルがもらえる、中級者は2曲同時進行で3週目のレッスンでマルがもらえる、上級者は1曲ずつで1ヶ月ちょいくらい弾けばマルがもらえる、って感じでしたか。


 この新レベル曲目一覧が、本サイトに公開しましたおすすめ曲一覧の元になっています。ここから改訂に改訂を重ね(遺品に確認できるだけで6版ほどあります)、そのたびに曲目や順番がかなり入れ替わっているのですが、その最新版が本サイトのものだとお考え下さい。つまりは、生徒に自分で弾きたい曲を選ばせる際の候補曲一覧として、父本人はこの表を作成したわけです。

 

 さて、少しばかり私見と思い出話をさせていただくと、この「候補曲の一覧を渡して生徒に好きな曲を選ばせる」方式は、実際にこれで指導された側の自分から見ても、たいへん良い方法であったと思います。

 まず、自分の好きな曲ばかりできるのがうれしい。私などは小さい頃はロマン派・短調が好きだったので(男の子はそういう傾向があると言ってました)、そういうのばっかりマルをつけていた覚えがあります。天下の名曲、バッハの平均律1番を容赦なく×にしたりしていたので、とうとうバッハやモーツァルトを1曲も弾かないままレベル26まで行きましたが(さすがにそういう人は珍しいとも言われましたが)、そういうことも可能だということです。
 ただまあ、あまり曲調が偏るのはよくないという異論も十分考えられます。個人的には別にピアニストや音楽学者を目指すわけでもなく、純粋に音楽に親しんで人生を豊かにしようという意図でピアノを習うなら、好きな曲を弾けばいいと思いますが、しかしパッと聴いた段階であまり興味が湧かない曲でも、付き合っているうちになんかいい曲かもなと思うことはやはりあるわけで、その自分の興味の幅が広がるかもしれないというメリットと、また逆にやっぱり最後までイヤイヤ弾いて特に得るものがなかった、時間を損した、ピアノが嫌いになった、というリスクと、これはどちらをとるのかは微妙なところです。小学生までは基本的に好きな曲、中学生以上はちょいちょいチャレンジ曲も混ぜてみる、という感じでしょうか。
 一つ別の視点で見れば、先生がハイ次これね、と渡してしまわず、生徒が自分でマルをつけてくるということは、子どもの主体性を育てる上ではプラスに働くことは間違いありません。

 そして何より、これは当時はそのような自覚はまったくなかったのですが、このときに大量の曲を聴いたことが、音楽的感性の醸成上すごく良かったのではないかと思います。なにせレベルが1上がるたびに50曲くらい聴くわけです。オーソドックスなトンプソンやブルグから、普通に生きていればまずお目にかからないであろう作曲家の曲まで、独仏伊露蘭西日、長調短調無調教旋、本当に幅広いメニューがありました。しかも、1曲1曲自分が好きかどうか判定しないといけませんから、軽く聞き流すということはありません。いい加減に聞き流して、好きでもない曲をやらされたらたまったもんじゃないですから、いやでも集中するわけです。これがその子の音楽的下地の形成に資すること洪大であることは疑いの余地がありません。私は今ではそれほどピアノは弾けませんが、音楽を聴くときにはいつもこの下地をもって聴けることを幸せに思います。
 全国のピアノの先生方、このやり方、おすすめですよ。これからピアノ教室を開こうとお考えの方、何だったらこのサイトの一覧表まるまるそのまま使って頂いてもいいですよ。

追記

 音源については、カセットから1曲1曲データ化してアップロードしています。CD以降の世代のメディアでこういった音源セットが遺品から見つからないのです。最近はこういうやり方をしていなかったのでしょうか。カセットが残っている版のと最新版とでは、曲目や順番が相当違うものですから、どうしても音源があるものとないものができてしまいます。見つけ次第、アップしていきたいと思います。逆に言えば音源がないものは、この最新版で新たに追加した曲というか、晩年になって発掘した曲であると推測できます。

 なお、このレベルアップ時に渡す音源カセットは、遺品を見る限りレベル20までしか存在していないようです。確かに自分の記憶をたどっても、あるレベル以上になるともうカセットは渡されずに、1曲仕上がるたびに父が2~3曲冒頭だけを弾いて、「ってな曲」といい、自分が肯けばそれになる、といった感じで進んでいった気がします。さすがの父といえども、レベル20以上の曲をすべて録音しようと思うとかなりの練習時間が必要になり、また長い曲も多くなるのでカセット1枚に5~6曲しか入らないということもありえますから、聞く方にしてもちょっとしんどいなあと思ってそこまではやらなかったのでしょう。あるいは、レベル20以上に到達する生徒はそれほど多くない(最盛期でも4,5人に1人くらいだった記憶があります)という実際的問題によったのかもしれません。

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