あるピアニストの一生

ピアノ教材研究

教本まとめ ・・・2011年くらいに父が今までの教本の評価を自分で取りまとめたメモのようです。なお見出し文は管理人の作文です。

○アキピアノ教本(呉暁) ・・・お勧めしない
自力で符を読めるようにということに意を払った教本。教師には使いやすい。致命的欠陥は子どもが喜ぶ曲が極めて少ないということ。バイエルの呪縛に著者がかかっているとでもいえようか。お勧めできない。

○アルフレッドピアノライブラリー  ・・・教師の考え方によってはお勧め
まず音楽を楽しみましょう、知的理解もおろそかにしません、という方針の下に作られた、アメリカ系ピアノ教本の最右翼に位置する本。全般に軽い傾向はあるが、それが欠点と言えるのかどうかは別問題。特に「クラシックの勉強」を強調する必要を認めない教師・保護者にはお勧め。なお基礎コースと幼児用の導入コースがあるが、基礎コースでも特に進み方が早いというほどではない。

○おとなのためのピアノ教本(橋本晃一) ・・・大人にはいいかも
中学生以上ぐらいで、将来専門家になる可能性のない生徒のためのもの、全5巻。ポピュラー・クラシック混交。伴奏付けの課題が不要だと思うが、おとなにはいいかもしれない教本。進度はやや速い。

○グローバーピアノ教本  ・・・3巻までは優れた教本
中央ハから一音ずつ増やしていく方針をかなりのところまで貫いている。初めの内は伴奏型に和音が多く、その意味からも易しい。3巻までは優れた教本と言える。それ以降は他に乗り換えたほうがいいと思う。

○スオミ・ピアノスクール  ・・・二冊目としてはとてもいい
フィンランドのピアノ教本。創造性の開発も目指し自由課題などがある。教師の事前研究があればお勧めと言えるが、楽譜がやや小さく、幼児には少しつらいかも。教本を二冊使用する先生には、二冊目としてとてもいい。3巻は中級の併用曲集として単独で使える。

○ツィーグラー 耳から学ぶピアノ教本  ・・・方針は極めて正しいが教本としてはしんどい
「音の核」を意識し、音に耳を済ませることと言う方針のもとに作られた教本。その方針自体は極めて正しいものであるが、教本としてのできはどうか。ドイツ系らしく極めて理屈っぽく、厳密に計算されて作られているが幼児にはしんどい。小学生でも相当頭のいい子以外は脱落の危険性大。中学生以上なら大丈夫かも。楽譜はかなり見づらく使いにくい。教師が熟読してその精神を理解し、他に応用するのが望ましいと思われる。

○トンプソンピアノ教本  ・・・今なお最良の教本の1つ。2巻までお勧め
一時、バイエル、メトードローズに続く第三の教本と呼ばれたもの。前二者が今となってはお勧めできない教本になったのに比べ、トンプソンは今なお最良の教本の一つに数えられる。難点はロマン派に偏りすぎていること。全5巻だが、2巻まででほぼ初級の終わりになる、そこから先はいろいろな曲集に乗り換えるのがいいだろう。

○バイエル  ・・・前半は論外でダメ。後半はいい曲もある
日本に最初に導入されたピアノ教本。功罪もう言い尽くされたような感もある。前半は論外、子どもはいやになるだけ。後半はなかなかいい曲もあり、使おうと思えば使える。

○バスティン  ・・・主教材よりもむしろ編曲ものなどに優れたものが多い
日本に紹介される前に一部で高く評価されていた曲集。いまは東音企画からシリーズすべて入手可能。主教材である「ベイシックス」に関しては、「まあまあ」程度の評価が妥当かと思う。難点は新しいポジションが出てくるときの一度の大量の新しい音。普通の子どもはまず確実にクリアできない、教師の工夫が必要。調性の進め方が独特。バスティンは主教材よりむしろ、教本としての順序を意識していないシリーズや、クラシックの編曲ものなどに優れたものが多い。

○バスティン おとなのピアノ教本  ・・・1巻は大人男性の初心者にはいい
とても分厚くバインダーのような製本で全二巻。一巻は大人に、特に男性の初心者にはいいと思う。二巻は難易度がほとんど上昇しないのが難。

○バーナムピアノ教本  ・・・曲自体の出来があまりよくない
「一度に一つのことしか教えない」方針の下にかかれた教本。教本としての出来はしっかりしている。進み方はかなり遅い。ただいかんせん曲自体の出来があまりよくない。教師がレッスン内容を工夫できるのなら使用も可、という感じ。

○ピアノコスモス・シューレ(成田稔子編)  ・・・単独ではなく併用曲集として使うべき
導入時にノンレガート奏法を徹底的に叩き込むという独自の観点から編まれた曲集。教本とは書いてないが、教本だと思われる。ロシア・東欧圏の目新しい曲がほとんど、その大部分が「音楽表現」を狙ったものであり、教師が前もって準備しておくのなら、高い効果が期待できそう。この本だけだと読譜が困難になる恐れあり、併用曲集もしくはもう一冊の教本は必須かも。2,3巻は教本としてより、むしろ曲集として使用すべき。

○ピアノで歌を(教育芸術社)  ・・・導入後の幼児向けに素晴らしい
教本とはうたってないが、内容は教本といっていい。幼児用に、懇切丁寧にじっくり進ませている。教材のほとんどが「歌」だがよく考えられて配列されているし、非ピアニスティックなものは避けられている。導入がないのが残念。他の本で導入を終えてからこの本に進むことが可能。昔からある教本の中では出色のもの。

○ピアノドリーム(田丸信明)  ・・・お勧めできない
進度が極めて緩やか、曲は陳腐なものが多い。挿絵と紙質が豪華。お勧めできない。

○ピアノの宇宙(湯山昭)  ・・・お勧めしない
教本としては、あまりにも湯山臭というものがきつすぎると思う。作曲家として個性が強いのは決してマイナスではないが、「教本」という最初に与えるものとしてはいかがなものか。

○ピアノの学校(江口寿子)  ・・・3巻まではお勧めできる
子どもが受け入れやすいようにいろいろと工夫をこらし、進度も緩やかな日本人の手によるピアノ教本。だが、曲そのものがバイエル・チェルニー路線一辺倒と言う大きな欠点がある。全6巻中、3巻まではお勧め、それ以降は他の教本に乗り換えるのがいい。

○ピアノの学校(コダーイ)  ・・・2巻はいい曲が多い
ハンガリーの教本。編訳者によればハンガリーと日本とは音階が類似していて日本の子どもたちにも親しみやすいということだが、そうは思えない。ただ2巻は、そのハンガリー以外の教材にいいものが多く、結構使える。

○ピアノひけるよ(橋本晃一)  ・・・遊び感覚で習っている子どもに最適
ほとんど、子どもになじみのある曲だけで構成された教本。進み方もよく工夫されている。遊び感覚でピアノを習いたい子どもには最適かも。まじめにピアノを「学習」させたいと考える向きには合わない。

○ピアノランド(樹原涼子)  ・・・優れたピアノ教本
日本人の手による優れたピアノ教本。すべてオリジナルの楽曲でありながら音楽性豊かでしかも雰囲気が偏らないように考慮されている。あえて欠点を指摘しておくと、6/8の導入が早すぎると思われること、教材の数が少なく、特に優れた子ども以外途中でついていけなくなる可能性が高いと思われること。後者に関しては著者も気づいたのか、副教本的な教材が次々と出されている。ただそれらをすべて使うとあまりにも樹原色が強まるので、私としてはもう一冊別の教本を使うことを勧める。

○みんなのオルガン・ピアノの本  ・・・バイエル系では最良
当初ヤマハの音楽教室の教材だったもの。全4巻。バイエルの影響を受けている教材の中ではおそらく最も出来がいい。バイエル系だけに感覚の新しくない教師にも使いやすい。練習曲と楽曲に分かれているが、練習曲は3巻あたりからは無視してもいいだろう。   

○メトードローズ  ・・・後半を補助教材としてなら使える
バイエル一辺倒からの脱却を図り導入されたもの。正直なところバイエルの地位が低下するにつれて、この本の存在意義もなくなってきた。特に前半は使えない。使うのならば後半を補助的な教本として使用するのがいい。新版は旧版の終了段階からさらに二冊ある。難易度の上昇は緩やかで、基礎を固めたければ使える。

ラーニング・トゥ・プレイ  ・・・お勧めできる
余分な説明を排した教本。楽典その他の説明は必要最小限、曲だけが並んでいるという感じ。自由に教えたい先生向き。アメリカ系教本の中では軽すぎず中庸を得ている。全4巻のうち3,4が特にいい。他の教材から乗り換えて主教材にできる。1、2は副教材にするほうがいいかも。

○リラ・フレッチャーピアノ教本  ・・・幼児ではなく小学生の入門者になら最適
少しドイツっぽい(やや堅めの)アメリカ系教本。よく考えられた独自の視点から順序良く配列されている。小学生の入門者には最適かもしれない。幼児には不向き。最大の不満点は、詰め込みすぎていて、楽譜が少々見づらいこと。

○ロリンピアノコース―レパートリー(キャサリン・ロリン)  ・・・1巻は併用曲集として使える
難易度3からの教本。入門書ではないので注意。すべてロリンのオリジナル。バロックから現代までの様式を一人で作曲しているわけだが、結局バロックや古典様式は本物を使うほうがずっといい。全3巻中1巻が一番いい、教本と言うよりは併用曲集として使える。  

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