あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 作品集 

 

中田喜直作曲 こどものピアノ曲            音楽之友社 

 昭和31年に出た本であるから、もう40年以上も前の本である。おそらく日本人の手になる子供用の最初のピアノ曲集ではなかろうか。年長のピアノの先生ならば多分持っていると思われる曲集である。

曲名 難易度 推薦
ひとりぽっち  5  
ひらひらちょうちょう  5  
みじかいおはなし  5  
いもむしとちょうちょう  6  
げんきなこども  6  
夕方のうた  7  
小さなお花のバレー  6  
悲しいワルツ  8  
時計のはぐるま  9  
わらべうた  8  
エチュード・モデラート  8  
土じんのおどり  6
おまつり  8
山のこども 10  
スピード自動車 10
夢のおはなし  9  
エチュード・アレグロ 13

○ひとりぽっち この曲のスタカートはやわらかく。

○夕方のうた ペダルは必須。

○悲しいワルツ この曲を「悲しく」仕上げるには、先生サイドの適切なアドヴァイスが必要と思われる。

○時計のはぐるま 5段1小節3拍目の右の指、5とあるが何かの間違い、2もしくは1。

○わらべうた 4段目の終わりでrit. かな。

○エチュード・モデラート 私にはこの曲のよさがよく分からない。

○土人の踊り 6段1,2小節左手に31,52とあってかっこでくっつけているが、これは指換えの意味ではなく、31でも52でもいいという意味だと思われる。

○おまつり 私、個人的には、この曲が一番良い曲のような気がします。

○山のこども 2段目の終わりから左手の指使いは考えるところ。5から35というのはちょっとイージーすぎる気がする。私なら1から42。

○スピード自動車 私は良い曲だと思うが、ただ感覚的にはやはりこの曲で表現されている自動車は白黒映画の時代のイメージがする。

○エチュード・アレグロ 1ページ6段2小節目右の指は全部51でいい、次も。

総合評価  B 

 二重の意味で懐かしい本である。新米ピアノ教師で教材をあさっていたときに発見した本として、そしてもう一つは曲自体が古き良き日本というものを反映しているような曲集であるという意味で。

 主観的には何となくAをつけたくなるような曲集なのであるが、冷静に考察してやはりAというわけにはいかないだろうなと思う。つまりこの本が出た当時、というよりつい30年ほど前までは日本人の手によるピアノ曲集というものは数えるほどしかなく、それも余り使えそうにないようなものが半ばを占めていたからである。その中にあってこの曲集はそのほとんどが使用に耐え、現在はもう子供用ピアノ曲としての重要なレパートリーとして定着したような曲を含んでいるのである。

 しかし現在日本人の手によるピアノ曲集はその全てを調べるのが一苦労といわざるを得ない数に達している。そしてその中には、非常に優れた曲集が確かに存在している。

 最初に書いたように、この曲集が表現している世界は「土俗的」とでもいおうか、昭和30年代の懐かしい日本である。そしてそういう日本はつい最近まではあちこちににあったが、めだかが絶滅の危機を迎えているような現在、私たち旧世代の人間の郷愁の中にしか存在しなくなりつつある(相当な田舎へ行けば別)。そして今のこどもたちがこの曲集の雰囲気をどこまで表すことが出来るのかは、私たちの指導一つにかかっているが、それも徐々に困難になっていくかもしれない。

 この曲集中の数曲はおそらく100年経っても(文明が崩壊でもしない限り)生き残っていると思う。しかし曲集として総合的に見た場合、この曲集よりもさらに現代のこどもにマッチした曲集があることは否定できないような気がする。評価Bにとどめた由縁である。

 なお、作曲者は相当のピアノの達人であり、またカワイ楽譜からソナチネの校訂版を出したりもしている。そのせいかどうか指使いは全般的によく考えられている。

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