あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 作品集 

 

グレード別ピアノ小品集 3 中津留絵里加 編 千蔵八郎監修  ATN

 その昔、日音から「ピアノ小品集」という楽譜が出ていた。数曲ではあるが珍しくかつ良い曲が入っていた。カタログを見ていたらそれの後継版ともいえるような楽譜を見つけたので調べてみよう。全3巻であるが検討するのはその3。なお編者は(なかつる・えりか)さん。私、初め(なかつるえ・りか)さんかと思ってました。

曲名 作曲者 難易度 評価
メヌエット キルンベルガー   9  B
カノンふうに ハスラー   9  A
フォークダンス ケーラー   8  B
アレグロ ハスラー   9  B
オルゴール グルリット   6  C
メヌエット  J.C.バッハ   7  C
バディネリ グルリット   8  A
プレリュード クーナウ   8  C
ソナチネ ヴァーンハル   7  C
アレグロ F.バッハ   9  A
ソナタ チマローザ  10  B
森のよう精 キルンベルガー   9  C
ロマンス ランゲ   7  A
ロンド  ディアベリ   8  B
6つの変奏曲 クーラウ   9  B
ソナタ チマローザ   9  C
ソナチネ モーツアルト 10(8) B(A)
トッカータ パラディージ  14  A
ファンタジー ヘンデル  14  A
小さなロンド クーラウ  10  A

○メヌエット 少し弾きにくい曲です。

○カノンふうに この曲を是非とも一覧表に入れたくてこの本を見つけたのです。良い曲です。

○フォークダンス (a)(b)と註らしきものがあるが、肝心の注釈がどこにもない。多分他の版の丸写しなのだろう。チェルニーの30番にもあるが、このプラルトリラーと短前打音は、同一奏法で弾く、ということだと思う。(この時期、19世紀前半に奏法そのものが変わり、表記法もほぼ同時に変わったと考えられる)

○アレグロ 最後の1段だけ突出して難しい、オクターブは省く方がいいだろう。

○オルゴール リズムさえ分かれば易しい。

○バディネリ ちょっとおしゃれな佳品。

○アレグロ 「春」としてある楽譜もある。中間部の終わりが見慣れない形、異版であろう(以前はこうでなかったから、最新の研究結果かもしれない)。出だしの指はやや珍しいが問題ない。右ページ1段4小節2拍目右手1とあるが4でいい。

○ソナタ 1と42小節、同じ形だがスラーが異なる。ここは42の方で統一する方がいいと思う。

○ロマンス ソナチネの楽章だという。美しい曲です。

○ロンド 割と弾きやすい曲です。B durの良い曲は少ないだけに記憶にとどめておいていい。

○6つの変奏曲 昔の本にはよく入っていた、最近この曲を収録している楽譜を余り見ない、人気がないのかもしれない。43小節目右手最初の音、EになっているがFisの誤りと思われる。

○ソナチネ ウィーンソナチネの5番。1楽章、最初のテンポに注意。3楽章は単独で良く弾かれる(かっこ内)。

○トッカータ ソナタの2楽章。作者は通常「パラディエス」と呼ばれます。

○ファンタジー 音は原典に従っている。フレージングその他もまあ妥当なところか。

○小さなロンド 連弾。Secondもほぼ同じ難易度。クーラウにこんな連弾曲があったとは。

総合評価  B

で言えば、その昔日音から出ていた「ピアノ小品集」全2巻の拡大再生産版というところでしょう。

派からロマン派の小品を集めたもの。私は以前の「ピアノ小品集」しか持っていませんので、1,2巻については定かなことはいえませんが(大半同じ曲ですが追加されているものがありますので)、珍しくてしかも価値があるものはこの3巻に集中しているのではないかなと思います。といってもこの本でしか見られないのは3曲ですが(私の知る限り)。

オーソドックスな教材で指導をなされている先生には良いかもしれません。

連弾を除いて最後の二曲だけ場違いに難しい。

指使いは割と安心してみることが出来る。フレージングその他もさほど異論はないだろう。

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