あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 作品集 

 

三善晃 こどものピアノ小品集 <海の日記帳>      音楽之友社

 大御所ともいえる三善晃さんの登場です。私は三善さんの作品は3枚ほどLPを持っていて、特にヴァイオリン協奏曲が好きです。この曲集は以前から名前は知っていましたが、使ったことはありません。

番号 曲名 難易度 推薦
 1 海のゆりかご   4  
 2 浜かぜと夜明け   5  
 3 うつぼの時計   7  
 4 おやすみ、夕映え   7  
 5 浜百合の恋   6  
 6 やどかりのひっこし   7  
 7 大きな貝のひるね   7  
 8 波がふたりで   8  
 9 やどかりの波のり   8  
10 シシリー島の小さな貝がら   9  
11 海の弔列   8  
12 海ほうずきのうた  10  
13 あこや貝の秘密   9  
14 笛吹き奴のかくれんぼ  10  
15 沈んでいった鍵盤   9
16 伊勢海老おじさんがしてくれた「お話」   9  
17 波と夕月  10  
18 蟹の散歩道  10  
19 シレーヌの機織り歌  11  
20 水泡のおどり  10  
21 ソ、ソ、ソ・・の小烏賊たち   9   
22 珊瑚の唄  11  
23 わんぱく さざえ  11  
24 手折られた潮騒  14  
25 さよりっ子たちの訪問  14  
26 磯波のキャプリス  15  
27 水泡のおにごっこ  15  
28 波のアラベスク  13

2.テヌートの箇所に気持ちをこめる。

3.AsからEへの転調だけに初心者には読譜がしんどい。「うつぼ」というイメージとはまるっきり違うふんわりした雰囲気の曲です。

4.このレヴェルでDesというのも珍しい。

5.最初の右手が、切なげにため息をついているような「恋」のモチーフなんでしょう。

7.指換えがたくさんあるが、手が小さいと困難な箇所あり。1ページ目5段2小節4拍目右、24はもちろん反対。

8.2段3小節目右、指がかっこで記されているのは、つまり普通は5321で弾くということでしょう。

12.じっくり味わいたい曲です。譜読みがつらいかもしれない。

15.この曲集の中では分かりやすい部類でしょう。

16.2段目左手二つ目の和音13とあるが31の誤りでしょう、なお51の方がいいと思う。

17.ペダルのあるなしで大分違う。3段2小節目左最初41とあるが123と運ぶ方が易しいと思う。

19.手が入り組んでいて少し弾きにくい。

21.7小節目後半の左手2121とあるがミスプリだろうか? 2125、1で回すのなら2341、2121はあり得ないというわけでもないが、ちょっと考えにくい指。

24.指定速度は相当速い、それで弾かすと非常に難しくなる。全体にペダルを使うときれい。この曲集の中では分かりやすい部類。

25.1小節左手4拍目4とあるがおそらく2の誤り。

28.比較的分かりやすい。波のきらめきのように美しく。

合評価       C

 三善晃、という名前だけで「ははあ」と恐れ入らなければならないような感じもする。名実共に日本作曲界のトップなのだが、当研究会としては蟷螂の斧のようではあるが、この曲集についてはあまりいい評価を差し上げることが出来ない。

 一言でいえば、晦渋、という言葉がぴったりあてはまる、と思う。

 評価の低い作品は、芸術的に見て劣るとか陳腐であるとかということではない。むしろ逆である。芸術性の香り高い作品が集められているのだが、それを一般の子供が果たして理解できるかどうかという問題なのである。ショパンは子供でもすぐに理解できる。しかしフォーレは、特に晩年のものは子供に聞かせてもまず99パーセントあくびをするだけだろう。

 子供の教材という観点にたてば、ある程度の妥協が子供向けの作品には求められるのではなかろうか。この曲集で妥協した点は、技術的側面だけなのではなかろうか(ひょっとして調性があるだけでも充分に妥協していると思われているのかもしれないが)。「わかりやすさ」「親しみやすさ」そういったものがこの曲集には決定的に欠けている。

 ごく一部の極めて優れた感性及び音楽的能力を有するこどもたちには、非常に良い曲集かもしれない、とは思う。

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