あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 作品集 

 

湯山昭 お菓子の世界       全音楽譜出版社

 noriさんのリクエストにより「お菓子の世界」を取り上げます。湯山さんは2冊目ですね。出版された当時は非常に話題になった曲集だという記憶があります。

  曲名 難易度 評価
序曲 お菓子のベルト・コンベヤー  10  B
 1 シュー・クリーム  11  A
 2 バウムクーヘン  13  A
 3 柿の種  13  A
 4 ショートケーキ   9  B
 5 ホットケーキ  10  B
間奏曲1 むしば  11  B
 6 ウェハース   9  A
 7 ドロップス  10  B
 8 チョコ・バー  10  A
 9 バースデー・ケーキ   9  B 
10 クッキー  12  C
間奏曲2 どうしてふとるのかしら  10  B
11 ヌガー  11  C
12 ソフトクリーム  10  B
13 ボンボン  12  A
14 鬼あられ  12  A
15 マロン・グラッセ  10  B
間奏曲3 くいしんぼう   8  A
16 金平糖   8  C
17 プリン 11(9)  B
18 ポップ・コーン  12  A
19 チューインガム  13  B
20 甘納豆  11  B
21 ドーナッツ  13  C
終曲 お菓子の行進曲  17  

2.私はこの曲集の中で一番いい曲だと思います。最後から2段目の和音連打が素晴らしく効果的、発表会向きですね。なお私はこの曲を与えるときは、「先生たちがこどもの頃は、バームクーヘンというのは滅多に食べることのできない最高級のお菓子だった」ということを必ず言います、今ではスーパーで100円でミニバームクーヘンが買えますものね。安物のお菓子のイメージで弾かれるとたまったものではない。3小節2拍目右手3とあるが2の方がいいと思う、次が3、その次が5から1への指換えとなります。最初のペダリングが2小節ごとになっているが、1小節ごとの方がいいんじゃないかな。

3.見た目より弾きにくい曲です。最後の曲を除けばこの曲集では一番難しいかもしれない。11小節目からの左手のフレージングが大切(ここが弾きにくい)。8小節2拍目裏の右手は343の方が易しい。

4.あの独特の湯山昭さんの匂いが珍しくあまり感じられない作品。

むしば.Meno mossoの部分は前後と対比するようにある程度自由に弾く方がいい(ラプソディ・イン・ブルーを私は思い出します)。またこの部分は多分左手が届かない。一旦ペダルに任して手を離し、その後音を出さずに弾き直すのがベスト。

6.ペダルは必須。

7.難易度の決定に困る曲。臨時記号になれていないともっと難しいし、それが苦にならなければ実はさほど難しくない。

9.余り速く弾かないように。

どうしてふとるのかしら. 1~4小節はお菓子を食べている幸せな気分、6~9は体重計を見ているブルーな気分。10小節以下、でもやっぱり食べちゃうのよね。

13.湯山さんの曲はどれもそうですが、特にこの曲には都会的センスという奴が要求されます。お洒落にね。

14.好悪の分かれる曲かもしれません。私は柿の種の方が出来はいいような気がしますが・・

15.「こどもの国」の「フランス人形」を一段難しくしたような作品。あちらの方が出来映えはいいと思う。

くいしんぼう  くりかえしをつける場合は、よく考えて表現に差を付けること。私はこの曲は少しずつテンポを速めていくと面白いと思う。160の指定速度は平均スピード、もしくはラストでのスピードと思ったらいい。

16.ペダルは必須。

17.余り速くない方がいいと思う。評価Aでもいいな。難易度が二つあるのは最後のオクターヴだけが突出して難しいので( )はそれを省いた場合。

18.この曲集の中で最も解りやすいかもしれない。テクニックさえあれば低学年で充分弾きこなせる。

19.ジャズっぽい。手が小さいと苦しい。この曲のオクターヴはちょっと省くたくない。

20.ホ短調で始まってト長調で終わる。長調と短調が交錯し、何かほんのり甘酸っぱいような郷愁の感じられる曲。

21.少々安直な気がする。ずっとここまで同系色の作品ばかり見てきただけに、飽きてきたというか点が辛くなってるかもしれない。

終曲 これはたとえば全曲を発表会か何かで通して弾くときに最後を飾る感じの曲、単独では使いにくい。評価の対象とはしないでおきます。2小節目左手41から32だが、51から42でもいいと思う。158小節からチョコバーとあるが150からですね。

総合評価  A-

 これも非常に優れた曲集である。

 同作者の「こどもの国」に比べるとやや難しい。そしてこれは重要なことであるが、手の大きさについての配慮はない。やや高学年向きということになる。

 湯山昭さんの作品には強烈な個性がある。この作品集の「柿の種」と「バームクーヘン」はまるで違う曲であるが、どちらにも「湯山昭」と聞く人が聞けばすぐ解る強烈な香りというか匂いがある。その匂いがこの作品集には特に強く感じられる。個々の作品を取り上げてみれば非常に優れた曲集なのであるが、こどもに一冊買わせて全曲しましょうということにはまずならないし、おそらく半分もすることはないだろう。これだけ強烈な個性のある曲ばかりになれさせるというわけにはいかないのである。マイナスがついた由縁である。

 もちろん先生は必携の一冊。

 題名だけで弾きたくなるこどももいる。先生はいつでもこどもの注文に応じて弾けるようにしておくのが望ましい。

 この曲集の難易度については(これに限らないが)異論があるかもしれない。「そんなにやさしくない!」と。通常というかバイエル、ブルグミュラー、ソナチネとやってきたこどもたちには難易度1か2プラスした方がいいかもしれない。ただ私は入門の時からバロックから現代作品まで弾かせるべきだと思っている人間であるし、そうしている。まんべんなく色々な作品に当たってきていればこの程度の難易度ではないかと思う。弾くことそのものより、臨時記号になれていないと読譜が難しいのである。

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