あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 作品集 

 

発表会用ピアノ曲集 フレッシュプログラム 3   カワイ出版

 かめママさんのリクエストにより、カワイ出版の「フレッシュプログラム」を取り上げます。出来れば3か4でということでしたので、3巻にしてみました。前書きにもあるように、主にソ連(現ロシア)とフランスの現代作品から成り立っている。

番号 曲名 作曲者 難易度 評価
 1 ゆううつなワルツ フリード   8  A
 2 悲しい小さなお話 カバレフスキー   7  B
 3 手廻しオルガン ショスタコーヴィッチ   7  B
 4 ゴンドラの中で カークビー=メイソン   6  C
 5 リゴドン キルヒホッフ   7  B
 6 メリーゴーランドのダンス ソエ=ブールノワ   7  C
 7 お家で ソエ=ブールノワ   6  B
 8 ヴェニス舞曲 ラモー   8  C
 9 ハンガリア舞曲 アダン   7  B
10 B,A,BAのリズム シャルル=アンリ   8  B
11 赤ん坊の歌 シャルル=アンリ   8  B
12 取り入れ フェー=ジョンザン   6  B
13 冗談 ルコムスキー   7  C
14 クラリネットのソロ パスカル   7  A
15 くるみとワイン カークビー=メイソン   8  C
16 羊飼いの少女 リフォー   7  C
17 プロヴァンスのジャスミン タイユフェール   7  B
18 森の妖精が歌ったうた 高嶋みどり   6  B
19 小さな兵士のラッパ ジョーム   7  B
20 終曲 フュルマンデル   8  C
21 スイッチョ君のタップダンス 高嶋みどり   8  B
22 勇気のマーチ 西村朗   7  B
23 秋の想い 西村朗   8  B
24 すてきな夢 フィリップ   8  B
25 ソナタ Hob7 1楽章 ハイドン  10   C
26 ジグ C.P.E.バッハ   9  C
27 エコセーズ ベートーヴェン   7  A

2.ペダルが使えないと魅力半減。

6.4段3小節目2拍目の左手を1で二つとるようにしたということは、5小節目の頭は3でとるということでしょう。2ページ1段3小節目から右手43~とあるが、42123といく方がいい。2段5小節目からも42124。

10.題名の意味がいまいち分からない。右ページ1、2段目の8分音符はスイングさせた方がいいような感じもあるが、ここだけスイングというのもやはりまずいかもしれない。

11.右ページ2~3段目の左手は、記譜通りの指だとブツギレになる。指換えを多用してレガートでいくべきだと思う(もしくはペダルをうまく使うかだが)。

15.4小節目後半の左手は他の指も考えられるが(たとえば32から135,21から315等々)、どう弾いてもある程度の難しさは残る。

17.この微妙な感覚を生徒に伝えることが出来るのかどうか・・範奏するしかないだろうが。

18.ペダルは必須。

21.中間部の遅いところがどういう情景なのかを子供に想像させるといい。

23.手が小さいと苦しい。速さは四分音符で80前後でしょうか。

24.素敵な曲だが、ある程度手が大きくないと大分苦しいと思う。手首の回転の練習と思ってさせる手もあるが・・。4段2小節左手2拍目121とあるがオクターブが届かない生徒には無意味な指使い、123でいい。

25.Hob7。一楽章のトリルの註は、初心者の場合こういう奏法でも良いという参考にはなる。

26.4段3小節5拍目の左3とあるが1の方がいいだろう、続いて21。3ページ2段5小節目左121とあるが前音からのスラーがない以上やや奇妙、531でいい。2小節後も同様。

27.4小節1拍目の裏右手Ais左手CDだが、他の楽譜では右手H左手HDとなっている。再現も同様。どちらが正しいのかは不明。

総合評価    B-

 悪い本ではない、どちらかといえば良書に属すると思う。しかし教師と生徒を選ぶ本です。

 つまり大半を占めるフランスの現代物であるが、子供用教材にありがちな安直に流れるような書法ではなく芸術性が感じられる、それは正当に評価されるべきであると思う。しかしたとえば私の生徒を思い浮かべてみて、この本を使用して生徒がその気になってやってくれそう、という子供は一人か二人しかいないのではなかろうかとも思う。

 幼い頃から恵まれた音楽的環境の下で育ってきた子供なら、この本の作品群の魅力を感じ取ることも可能だろうが、ごく普通の子供たちは1,2曲を除いておそらくさほど喜んで弾くことはあるまいと思われる。

 たとえてみればベートーヴェンの「運命」と「ヴァイオリン協奏曲」との違いである。「運命」はクラシックに無縁な人間に対しても何ほどかの感銘を必ずや与えるであろう、しかし「ヴァイオリン協奏曲」はクラシックファン以外にはおそらく退屈もしくは苦痛であろう、その深い芸術性にもかかわらず。

 芸術性がありしかもなお子供に解りやすい曲というのが最上の教材であろうと思われる、そしてそういう作品は確かに存在している、この閻魔帳でもいくつか取り上げてきたはずである。

 なお、<フレッシュプログラム>という表題は発表会用の作品という印象を与えるが、どちらかといえば普段のレッスン用であると思われる。発表会で取り上げて映えるためには相当の力量というかセンスが要求される。

 もう一つ、散見される古い音楽はそのほとんどがあまりなじみのないものであるが、まあどうということのない作品であると思われる。 

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