あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 作品集 

 

ピアノおさらい会110選   ドレミ楽譜出版社

 さくらさんのリクエストにより「ピアノおさらい会110選」を取り上げます。今年出たばかりの新しい本です。110曲入っているだけあって200ページを越えている。110曲の選曲や如何にというところでしょうな。グレードが3段階に分かれていて36番までがA、74番までがB、残りがCとなっている。Aについてはそのほとんどが編曲であるが、編曲者の名前は記されていない。

 なお同じシリーズかどうかは定かでないが、ピアノ名曲110選というのが、そちらはグレード別3冊に分かれてあるらしい。 

番号 曲名 作曲者 難易度 評価
 1 ブンブンブン ボヘミア民謡   2  B
 2 ちょうちょう スペイン民謡   2  A
 3 かっこう ドイツ民謡   2  B
 4 ぞうさんのさんぽ デンマーク民謡   2  A 
 5 ビッグベンの鐘 外国曲   2  B
 6 雨あがり シュミット   2  C
 7 こどものうた ベール   2  B
 8 五月に ベール   3  B
 9 朝のあいさつ グルリット   2  C
10 小さな歌 グルリット   2  C
11 なかよしかっこう アルマント   2  B
12 きらきら星 フランス民謡   3  B
13 河はよんでいる ベアール   4  A
14 白鳥の湖 チャイコフスキー   3  B
15 ジングル・ベル ピアポント   3  A
16 さようなら ドイツ民謡   2  B
17 山のぼり ツェルニー   2  D
18 春のうた ツェルニー   2   C
19 ぶらんこ ツェルニー   4  B
20 アビニヨンの橋の上で フランス民謡   3  B
21 アンダルコのうた チェコスロバキア民謡   3  B
22 メリーさんのひつじ アメリカ民謡   3  B
23 アマリリス フランス民謡   4  C
24 おともだち シュワテル   3  C
25 泉のほとり エステン   3  C
26 谷川のながれ ハリオット   2  D
27 小川の水車 ツィリッヒ   3  D
28 かわいいオーガスチン ドイツ民謡   4  B
29 気のいいアヒル ボヘミア民謡   4  A
30 鐘がなる フランス民謡   4   B
31 ロング・ロング・アゴー ベイリー   4  B
32 人魚のうた ウエーバー   4  B
33 大きな栗の木の下で キャンピング・ソング   4  B
34 めざめのコラール バッハ   5  B
35 チューリップの王女さま サティ   3  B
36 輪まわしあそび サティ   3  B
37 チクタク時計 ツェルニー   5  C
38 10人のインディアン アメリカ民謡   4  B
39 スワビア民謡 ケーラー   4  A
40 茶色のこびん アメリカ民謡   5  C
41 ます シューベルト   5  C
42 たんじょう日のマーチ ケーラー   4  B
43 黄色いリボン アメリカ民謡   5  B
44 山の音楽家 ドイツ民謡   4  B
45 インディアンのおどり コルトー   4  A
46 みじかいおはなし リヒナー   6  A
47 ライオンの大行進 サン=サーンス   4 (A)
48 遠い鐘の音 ストリーボッグ   5  C
49 愛のよろこび マルティーニ   5  B
50 きよしこのよる グルーバー   4  A
51 ワルツ ブラームス   5  A
52 いたずらっこ サティ   5  B
53 こもりうた サティ   5  C
54 かわいい小さな女の子 サティ   5  C
55 ドレミの歌 ロジャース   5  B
56 小さな木の実 ビゼー   5  A
57 ドナウ河のさざなみ イワノビッチ   5  A 
58 こびとの行進 バース   5  B
59 舞踏の時間に リヒナー   6  A
60 スイスの田園詩 ベール   7  A
61 ティロリアンヌ ルンメル   6  B
62 すみれ ストリーボッグ   6  B
63 ちいさな妖精のワルツ ストリーボッグ   5  A
64 金の星 ストリーボッグ   5  A
65 スケーターズ・ワルツ ワルトトイフェル   6  B
66 ラデッキー行進曲 シュトラウス   7  B
67 ハバネラ ビゼー   6 (A)
68 メロディー シューマン   5  C 
69 兵隊の行進 シューマン   5  B
70 メヌエット ト長調 バッハ   6  A
71 メヌエット ト短調 バッハ   6  A
72 ゆかいなかじや ヘンデル   7  A
73 ドイツ舞曲 モーツアルト   6  A
74 トルコ行進曲 ベートーヴェン   7  B
75 大きな古時計 ワーク   6  B
76 ミュゼット バッハ   6  A
77 マーチ ニ長調 C.P.E.バッハ   8  B
78 主よ人の望みの喜びよ バッハ   8  B
79 小さい歌 カバレフスキー   5  A
80 道化師 カバレフスキー   6  A
81 ソナチネ カバレフスキー  9  A
82 トッカティーナ カバレフスキー   9  A
83 ラッパ手のセレナード スピンドラー   7  A
84 たのしい狩人 メルケル   7  C
85 魔女のおどり クラック   8  A
86 白鳥 サン=サーンス   7  B
87 あやつり人形 ローデ   7  A
88 ウィンナ・マーチ ツェルニー   9  A
89 メヌエット ボッケリーニ   8  B
90 小さな狩の歌 シューマン   8  B
91 勇ましい騎手 シューマン   7  A
92 楽しい農夫 シューマン   9  A
93 紡ぎ歌 エルメンライヒ   7  A
94 朝の祈り ストリーボッグ   8  C
95 お人形の夢と目覚め エステン   8  A
96 カッコウ鳥の歌 ポップ   8  A
97 アベ・マリア グノー   9  A
98 蝶々 ゲール   9  B
99 ジプシーの踊り リヒナー  10   A
100 かっこうワルツ ヨナーソン   9   A
101 前奏曲 Op.28-7 ショパン   9  A
102 野ばらに寄せて マクダウェル   9  A
103 花のワルツ チャイコフスキー  10  B
104 ワルツ チャイコフスキー   9  A
105 フランスの古い歌 チャイコフスキー   7  A
106 ソナチネ 第5番 ベートーヴェン   7  A
107 ソナチネ 第6番 ベートーヴェン   9  A
108 ロンド ベートーヴェン  11  C
109 メヌエット ト長調 ベートーヴェン  10  A
110 エリーゼのために ベートーヴェン  13  A

4.5指の連続があり、小さい子の場合は要注意。

6.4段目の後半の右手はレガートで弾くのかスタカートで弾くのか判然としない、私見ではレガートで良いと思う。

7.これは他にもっといい編曲がある。音域がもう少し低い方が映える(たとえばメトードローズ)。

8.前曲まではすべて編曲。これはそもそもこういう曲です。解説にもあるが繰り返しは必ずつけること。

11.これも繰り返しをつけた方がいい。

12.ここから16まで編曲もの。

14.なかなか工夫した編曲。

15.この編曲は素晴らしい。

20.3小節目右手3④⑤2とあるが、3○○1でもいい(次が2)。2段目も同様、次が423となる。

21.チェコスロバキア民謡とあるが、チェコスロバキアとはチェコとスロバキアとを並べた名前であって、現在は別々の国家になってしまった。つまりチェコ民謡かスロバキア民謡のどちらか。

22.左手はすべて51でもいい。

24.定かな記憶はないが、40年以上も前「子供のチェルニー」の中にあったような気がする。チェルニーの曲といって通るような感じの曲であることは間違いない。

25~27.ここらへんはシンコーの「ピアノ小曲集」からとったものであろう(閻魔帳19)、ただいずれも、どうという曲ではない。

28.左の13とある指使いはすべて逆さま。3小節目のDFGの密集は少し気になる。

29.最後の右の指、543212とあるが、543124でもいい。

30.2段目最初の左、121235でもいい。

31.1,2,4段の3小節目の右手最初の指は、4か5に統一した方がいい(4に統一する場合は2、4段目が432132となる)。

32.3,4段目の伴奏型の不統一の理由不明、特に3段3小節目はFGをそのまま使う方が絶対良い。

33.3段目に工夫があるが、やや唐突。

34.「めざめのコラール」という題名は、日本の子供には、朝起きるときの曲かなと思われてしまうでしょうな。変に子供に迎合するより「目覚めよと呼ぶ声あり」のままで良いと思う。最後の右手は小さい子は、41,51でいい。

35.サティの著作権が切れてこういうものも使えるようになったが、教師がフランス音楽に対する感性に自信がない場合は使用しないこと。バイエルの30番台後半を弾くような感覚でやられるとたまったものではない。私見では日本人の感覚にもっとも遠いと思われるのがフランス音楽である。

36.こちらの方は上記のようなことを余り気にする必要はない。

38.編曲そのものは良いが、後半8度ポジションが基本になっていて、小さい子には使えない。

40.これも8度ポジションがあり、しかも手の位置が移動している。初心者用教材としては首をひねる編曲といわざるを得ない。

41.上と同様の理由で初心者には使いたくない。2段3小節目後半右手42とあるのも小さい子には苦しい、52の方がいいがこのレヴェルではやや特殊か。

43.編曲自体はとてもいいが、これも小さい子には苦しい。

46.右手の6度の連続はすべて51で良い。

47.4段3小節目の右手は何かの勘違いと思われる、つまりドシラシではなくドレミレ。(もっとも編曲であるから編曲者が自由に改変した可能性も全くないわけではない、ということで(A)となったわけです。改変したのならBかCですな)

48.ペダルの練習曲ですが、この段階でペダルを使わせる必要は、少なくとも子供には不要と思う。

49.教材としては使いにくい編曲。つまり2段2小節目左手が小さい子供ではほぼ演奏不可能。HDG、CEAと処理する方が教材としては遙かに良い。1段目の左の指使いも弾きにくい。前にも書いたことだが、分散和音の端には5の指を使うのが解剖学的にもっとも正しい、3のところを4に、他はすべて5で良い。

50.なかなか工夫された編曲。私としては5段4小節目の和音が少し気になる(前小節のFをタイで残して欲しい)。最初のページ、左手の指に誰でも気づくミスプリ。

52.左の指使いに気をつけること。

53.この感覚は子供には少し難しいような気がする。

56.3段4小節目左、21とあるが43でも良いと思う。

58.記譜法に誤りがあると思われる。すなわち、1番かっこの後繰り返すのではなく、2ページ4小節目に向かうのが正しい。

61.最後の小節の左手の最初は4が良い。

62.子供用教材としてはオクターヴを省くべき。右ページ4段2小節2拍目左、531とあるが何かの間違いだろう、321。

64.5小節目右手121でも良い。4段2小節目から右手24,13,13でも良い。

65.評価Bは辛いかもしれないが、右ページ2段、3段の左右の音域の接近が少し気になるのです。

67.3段4小節目の右手は何かの勘違いと思われる、1段目と同じが正しい。3段1小節目の右は1321232でもいい。

68.3~4小節目の右手、○○○21とあるが、○○○14でもいい。3段目と5段目の右の指が異なるが、これはどちらでもいいが、統一した方が学習者には解りやすいだろう。

71.最初の右の指はいわゆるピアニスティックな指。とてもいい指使いなのだが、たいていの子が3212と弾いてしまうと思われる、そうなるとまずい。それを避けたければ4323と弾かせる。

72.主題と1つの変奏だが、変奏の方はヘンデルと関係ないどなたかのもの(この本の関係者が新たに作ったものではない)。2小節(アウフタクト含めず)3拍目右手2とあるが3の方がいいと思う。下段も同じ。右ページ1段3小節目、3段1小節目の同一箇所、右手の指が異なる。ここは214の方がいい。3段3小節3拍目から左手の指ミスプリ、35とあるが当然53。

73.右ページ3段目右手の指はよくない、1小節目から、135421として次も同様、4段目が242135となる。

74.何度も書いているが、教材としては長すぎるということでB(何かAにしてもいいような気になってきましたね)。

76~77。もちろん原典にはスラーその他は記されていない。77のフレージングは再検討した方がいいかもしれない。

78.1,2小節の右手指、3と記されている箇所、私ならどちらも2。

79.良い曲だが最後の左の3度のレガートが難しい。4段目は厳密にいえばほとんどレガート不可能。可能にしようと思えば42,51から31へ指換え、42、51で出来るが、このレヴェルでそれをさせるかどうかの判断は難しい。

81.2ページ3段2小節1拍目は、Fの音を右手てとれば、アルペジオにする必要がない。

84.2,3,4小節目の右手の指は、ピアニスティックな指だが初心者向きではない。EGを31でとり次は42から5、1段目の終わりを2にして2段目を31から始めるのが普通。

86.右ページ5段4小節目左手最初3とあるが4のほうがいいだろう。

87.3段目繰り返しの前のリズムは何かの勘違いと思われる。すなわち左手は三つとも8分音符でその後に8部休符が入る(万一意図的にこのとおり編曲したのなら、まるっきりリズム感のない編曲者だということになる)。出だしの右手は32343の方がいい。3段目最初の左手は31でもいい。

90.名曲だが結構弾きづらく教材としては使用しにくい。3小節目の指が難問、私は左手をアウフタクトから5321241とします。下段の似た形は、54212431ですかね。

91.中間部左手は、5212121,241が良いと思う。

93.中間部右手の指は色々考えられる。

96.3ページ目4段1小節目の右手は3からがいい。

97.4~5小節目の右手の指は分裂症を起こしている。すなわち124とくるのなら次は3ではなく5になるはずで、5から3への指換えになるし、5小節目を3にするのならその前は125のままで何ら差し支えない。5段2小節目の左手をレガートで弾きたいのなら5121とする(2ページ3段3小節目も同様)。2ページ4段3小節目左手は53の方がいい。なおオクターヴの届かない生徒は、思い切って2番を省略するのもよい(3ページ3小節目から4ページ5段目へ跳ぶ)

98.テンポを速くすると中間部が難しくなる。

99.最初の繰り返しはつけること。2ページ4段4小節目左手最初の和音がCisFAになっている版もある。2ページ6段4小節目最初の右手、私は1でとります(14323432)。4ページ最初の小節2拍目、大抵の版が付点になっている(このリズム型は初めて見る、ミスプリの可能性あり?)。

100.ワルツの左の音型は記譜通り12拍目をつなげるか、全部切るかになるが、オクターブがとどかない子の場合は、全部切る方に統一した方がいい。2ページ3小節目4○5とあるが、324として次の小節の頭に2を持ってくるのがいい。

101.天下の名曲であるが教材としては使いにくい。少なくとも中学生以上向きと思う。

102.これも名曲であるが使いにくい、ペダル練習用に大きい生徒なら使えるかな。

104.「子供のためのアルバム」に収録されているもの。

105.出だしの右手は、私は12341とする。最後のスラーを厳密に守らせたいのなら、最後から2小節目のEsAを31でとってから52に指換えをする。

106.1楽章 3段2小節目左手3とあるが2でもいい。
2楽章 繰り返しの前の小節のフレージングは、ケーラー=ルトハルト版の呪縛にかかっている。全部レガートで一向に差し支えない。繰り返しの後の4小節目の連打、私はその前を3でとって連打は543とする、次が21。

107.2楽章 出だしの左手は全部スタカートで構わない。

108.ベートーヴェン最初期の作品。

109.教材としては使いにくい。特に小さい子は不可。

総合評価    A-

 以前取り上げた小川一朗編の「ピアノ小曲集」及び「ピアノ独奏名曲集」を一緒にしてさらに規模を大きくしたような一種の改良版、といった感じの本です。この本に小川一朗さんの手が入っているのかどうかは解りませんが、前記3冊(ピアノ小曲集の方は、1巻と2巻)からの丸写しの楽譜もあります。

 否定的意味で言ったわけではありません。上記の本はいずれもかなり出来のいいもので、それの改良版ですから、この本も相当出来のいい本だということです。

 ピアノの先生ならばこの手の本は当然何冊か所持しているはずであるが、万一この曲集に含まれている曲の半ば以上を持っていないという方がおられるのならば、これはお買い得の本である。

 収録曲数が非常に多く、かつまるっきり使えないような曲もほとんどない、ということで、生徒に買わせて併用曲集として使用することも可能である。

 ときどき首をひねる箇所があるのが残念である。まあこれだけ大部の本になれば、ちょくちょくそういうことがあるのもやむを得ないかもしれない、すべて記しておいた。

トップへ戻る   1つ上に戻る

© 2015- 田所理央 ご意見・ご感想は t.masato@mathemarimo.bird.cx までお願いいたします。