あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 作品集 

 

ピアノのステージ B   カワイ出版

 これも20年以上前に出された本である。当時はA,Bではなく、1,2であった。出版当時よりもむしろ最近になって楽譜屋でよく見かける。このシリーズは1,2とあり、出版意図としては同じカワイ出版の「ピアノのメトード」の併用曲集ということである。カワイの音楽教室のLevel7,6の生徒用で、

課程1・・Level7  「ルネサンスからバロックへ」

課程2・・Level7  「古典派」

課程3・・Level7  「ロマン派」

課程4・・Level7  「印象派と現代」

課程5・・Level6  「中世からバロックへ」

課程6・・Level6  「ロココから古典派へ」

課程7・・Level6  「ロマン派」   そして「連弾」

と八部に分けられ、それぞれに3ないし6曲配置され、またあちこちに音楽史に関する有益かつ興味深い話が記されている。なお連弾曲の難易度はすべてprimoのものである。

番号 曲名 作曲者 難易度 評価
 1 前奏曲 作曲者不詳  10  C
 2 ソールズベリー伯爵に捧げるパバーヌ バード  10  B
 3 ロンドの形をしたガボット リュリ  13  A
 4 前奏曲 BWV935 バッハ  13  A
 5 ブレ F.バッハ  13  A
 6  ソナタ Hob16-4 ハイドン  12  C
 7 ソナチネ 1楽章 モーツアルト  11  B
 8 バガテル Op.119-1 ベートーヴェン  11  A
 9 嘆きのワルツ シューベルト  10  B
10 レントラー シューベルト  11  B
11 野ばら シューベルト   8  A
12 子どものためのソナタOp.118-1 1,2楽章 シューマン  11  B
13 マズルカ チャイコフスキー  10  A
14 小さな羊飼い ドビュッシー  13  A
15 スロバキア舞曲 バルトーク   9  B
16 いなかの夕暮れ バルトーク  11  A
17 セリョ坊主 福島雄次郎  12  A
18 踊り 平吉毅州  12  B
19 前奏曲 野田暉行  10  B
20 オルガン・エスタンビー 作曲者不詳  13  A
21 トリスタンの嘆き 作曲者不詳   9   B
22 神はわがやぐら パッヘルベル  16  C
23 前奏曲とフーガ フィッシャー  15  A
24 前奏曲 パーセル  13  B
25 おしゃべり ダンドリュー  14  B
26 ソナタ L.104(K.159) スカルラッティ  13  A
27 カッコウ ダカン  13  A
28 アンダンテ ハイドン  13  C
29 ベネチアのゴンドラの歌 Op.30-6 メンデルスゾーン  12  A
30 マズルカ Op.67-2 ショパン  14  A
31 眠りの精 ブラームス  11  A
32 小さなハンガリー狂詩曲 リスト  12  C
33 蝶々 グリーグ  17  A
34 軍隊行進曲 シューベルト  13  A
35 悲しみ シューマン   8  A
36 人形 ビゼー  10  B
37 小舟で ドビュッシー  14  A

1.音楽史的な興味の域を出る作品ではないと思う。

2.装飾音は省かない方がよい。

3.原曲は弦楽合奏、ピアノ譜は19世紀の編曲。16小節目後半にrit、次の小節にa tempo。19小節1拍目後半にrit、21小節にa tempo。24小節目アウフタクトにrit、次の小節1拍目後半にもrit、27小節目にa tempoの記されている版あり。

5.前半の指使いは他にも考えられる。

6.ハイドンの有名じゃない、しかも易しいソナタを一曲収録したかったんでしょうな。

7.ウイーンソナチネの6番。これもモーツアルトの曲を一つ入れたかったんでしょうな。

9.Op.9の2曲目。単独で弾くには少し短すぎて、使いづらい。

10.Op.171の2曲目。№9よりもう一つ使いづらい。

11.弾き語りをさせる珍しい教材。ただしこのキーは子どもたちにはちょっと高すぎるのではないかな。訳詞は巷間にもっと流布したものがある。

12.「ソナチネ」とあるが、原題は「子どものためのソナタ」である。

13.手が小さい場合は、1小節目の左和音は521,次は421、その次は521でいいだろう。

15.2段目最初の左5とあるが、1もしくは2の方が易しいのでは。

17.非常におもしろい曲です。左手はもちろん木魚。4段3小節目右手A、3になっているが4でもいい。

18.閻魔帳32の24番「真夜中の火祭り」です。題名が違っているのは、多分曲集に入れたときに変えたのでしょう。こちらが古い題名だと思われます。「虹のリズム」の版とは中間部が大きく変わっている。これはどちらが正当な版であるのか少々迷うが(本人も亡くなられている)、私は「虹のリズム」版の方が良いと思う。他の部分も指使いなど相当な変改がある、これくらい指使いというのは迷うものだという一例、これに関してはどちらでも私は良いと思う。

19.なかなか良い曲だと思うのですが、私としては終わりが何となく・・

20.中世の音楽とはこんなものですよ、という恰好の教材。

21.片手で弾くと6程度。教材にするというより、レッスン時間に初見で弾いて楽しむという感じか?

22.私はクリスチャンではないので、この旋律に別に思い入れはないし、さほど良い曲だとは思えないのです。

23.バッハの平均律を導いた作品として著名なもの。フーガよりむしろプレリュードの方が難しい。プレリュードの持続低音の打ち直しの提案があるが、後半は少し頻繁に過ぎるような気がする、最後から2小節目の頭で一度打ち直すだけで良いと私は思う。

26.冒頭の指は色々考えられる、この版の指は特に左手は弾きにくいと思う。私は12313553とします。14小節目からの左も、私は1214とする。

28.ソナタHob16-12の1楽章。

31.これも弾き語り。もしくは生徒に伴奏させて先生が歌ってもよいだろう。

35.良い曲だが、「悲しみ」を表現するのは相当難しい。

総合評価       A-

 ピアノの先生というのは楽器店とのおつきあいがあります。

 私この本が出された直後に購入してますが、しばらくしてつきあいのある河合楽器の営業マンの方から「この本は評判が悪い」という話を聞いています。首をひねったものでした。

 今にしてその理由が推測できます。つまり当時の河合音楽教室の先生の平均水準では、この本を使いこなすことが出来なかった、というのが「評判が悪い」ということになったのでしょう。

 一言で良書です。ただし先生を選びます。この本を使いこなすことが出来れば、平均以上の力をお持ちの先生と言えるのではないでしょうか。

 特にバロックと現代がいい。それだけでもこの本を購入する価値はあります。

 古典派はどうでもいいというかんじ、これはつまりこのレヴェルの古典派の曲というのは、基本的にソナチネになるわけで、それを収録しないという方針にたてば、もうやむを得ない。どうでもいいハイドンのソナタやらモーツアルトのソナチネやらを入れざるを得ないということでしょうね、ここら辺はパスしてしまってソナチネを使うべきでしょうね。

 メンデルスゾーン、ショパン、グリーグあたりは別にそれぞれの曲集を手に入れるべきでしょうな。

 なお、いうまでもないが現代作品を除いて、すべて編者による校訂が入っている。特にバロックの作品には注意すること。ただし私の見たところ、この校訂通り子どもに弾かせてまず問題ない。

 昔はこの本を楽器店で見ることはまずなかったが、最近必ずおいてあるような気がする。ようやく正当な評価を得始めたのであろう。喜ばしいことである。

 教本に分類すべきか曲集に分類すべきか少し迷った。姉妹本の「こどものメトード」は明らかに教本であるが、これはその併用曲集という色彩が強いので、曲集に分類しておく。

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