あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 作品集 

 

ギロック 叙情小曲集     全音楽譜出版社

 さてギロックである。「田舎に住む貧乏なピアノ教師」さん、菊池のりこさんからのリクエストがある。ギロックは相当数出回っているが、やはり一番先に紹介された「叙情小曲集」を取り上げるのが順であろう。なお近年改訂版が出ているようであるが、筆者の調べたものは旧版である。

題名 調性 難易度 評価
森のざわめき ハ長調   9  A
海の風景 ハ短調  10  A
10月の朝 ト長調   6  C
荒れ果てた舞踏室 ト短調   7  A
伝説 ニ長調   7  C
間奏曲 ニ短調   8  B
人魚の歌 イ長調   8  C
夏の嵐 イ短調   9  B
色あせた手紙 ホ長調   6  C
とんぼ ホ短調   9  B
月の光 ロ長調  11  A
秋のスケッチ ロ短調   6  A
中国人の行列 変ト長調   9  B
冬の風景 嬰ヘ短調   7  B
セレナード 変ニ長調   8  B
はちどり 嬰ハ短調  12  A
ダイアナの泉 変イ長調   9  A
まぼろしの騎士 嬰ト短調  10  B
飛しょう 変ホ長調   9  B
音もなく降る雪 変ホ短調   5  B
夜想曲 変ロ長調   8  C
夜の飛行 変ロ短調   8  C
なつかしいヴァレンタイン ヘ長調   7  B
魔女の猫 ヘ短調  12  A

○海の風景 速さによって大分難易度は異なる。指示通り弾けば11くらいか。  

○夏の嵐 ギロックは左手にメロディーがきている曲が結構ある、これもその一つ。

○とんぼ これも速さによって難易度が変わる。指示通り弾こうとすればかなり難しい。

○月の光 ロ長調の初心者用の曲としては最高のものの一つ。題名のみならず書法も雰囲気もドビュッシーのものに似ている。

○秋のスケッチ 私はこの本で一番好きな曲です。中間部のメロディーはその昔中村雅俊が歌ってヒットした「ふれあい」と同じ(もちろんこちらの方が古い)。

○はちどり この曲はある程度の速さで弾かないと「はちどり」の感じにならない。右手の16分音符はもちろんブーンという音です。

○ダイアナの泉 見た目ほど難しくはない。

○まぼろしの騎士 解説にもあるが、これは妖怪である。そういう感じで弾かなければならない。

○音もなく降る雪 曲というよりはその断片といった方がいいくらい短い。

総合評価    A-

 20年ほど前でしたか、ギロックブームを引き起こしたのがこの「叙情小曲集」です。全音が出版し、確か途中でサミーミュージックに版権が移動して、また全音に戻ったようです。版権の奪い合いとなるほどのブームだったということなのでしょうか。

 今振り返ってみてあのブームはさて何だったのか、と思う節がないわけでもない。たしかにこの「叙情小曲集」は優れた曲集ですが、他の優れた教材と並べてみても一段と光る、というほどのことはない。初心者用の優れた教材の一つ、というぐらいの評価が妥当であろうと思います。

 解説にはソナチネ程度とあります。そして同じギロックの「子どものためのアルバム」のほうが易しいとあります。しかし私の見たところ、平均すればソナチネよりは易しいし、「子どものためのアルバム」と似たような難易度ではないかと思います。

 24すべての調性を使っているだけに取っつきが悪い、譜読みに難がある、ということなのでしょうが、演奏自体はさほど難しいものはないようです(テンポにもよりますが)。

 ただ教材として与える場合、ぎりぎりの難易度で与えるよりは多少余裕のある方が好ましい気はします。ぎりぎりの難易度ですとシャープやフラットの多さを見ただけで拒絶反応が返ってくる場合がありますから。

 ギロックという方は本職はピアノの先生なんだろうと思います。指使いは文句を付けるところがない。

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