あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 作品集 

 

湯山昭作曲 ピアノ曲集 こどもの国    音楽之友社

 いつの間にやらこの本も古い本となってしまった(67年初版)。この本が出た当時はこどもたちにとって最も喜ばれた本の一つではなかったかと思う。ほとんど古典となった感のあるこの本を検討してみることにする。なお近年改訂版が出され、一部フレージングなどが変えられているようであるが、評価を変えなければならないほどのものでは無論あるまい。

  題名 難易度 評価
いいことがありそう 11
ワルツ  9
赤い紙風船  7
星の国の物語 10
フランス人形  8
悲しい夢  9
童話 10
レーシングカー  9
あくび  9
10 ジャズ 12
11 ともだち 12
12 熱帯魚  8
13 ゴーカート 11
14 水たまりにうつった世界  9
15 ホップステップジャンプ 10
16 あつそうね ひまわりさん  9
17 ティーカップ 11
18 宇宙ステーション 10
19 電子計算機 12
20 なぞなぞ 12

1。名曲です。最初の左手が重くなるとまずい(スタカートに近くていいと思う)。3段2小節目後半右手321だとレガート不可能、543として次を21から41への指変え、でレガートが可能。2ページ1段4小節目左手5421の方が普通。4段4小節目右手後半5321でもいい。5段3小節目左手後半、子どもなら5131でしょう。6段4小節目左手やはり5131。3ページ2段3小節目左手最初の音、42の方がいい。最後の左手21245の方が多分普通。

2。中間部は8小節まとめて大きなうねりのように。

4。全音音階が極めて効果的。

5。6小節目左手、31から521でもいいと思う。

6。最後から3小節目右手、12312315でもいい。

8。6小節目の左を521にするのなら7小節目は421にするべきだと思うが(これは相当ピアニスティックな指)。もしくは6小節目を421、7小節目を321とする(普通の指)。

13。ちょっと見ただけでは首をひねるかも知れない指使いがある、たとえば2ページ3段目の右手、しかし実際に弾いてみれば分かるように、ピアニストならではの工夫された指使いである。さてそう承認した上で、2段目の左手と3段目の左手の指が違うのは意味不明。どちらも4の方が私はいいと思う。2ページ3段目の左手は右手とおつきあいさせたのだろうが、5131でいいと思う。3ページ2段4小節目左手4214とあるが、これは何かの勘違い、4212です。

17。右ページ4段目最後の小節左53とあるが54、次が212となる。その次の左も121とあるが、私は231もしくは21234の方がいいと思う。

19。電子計算機という言葉がほとんど死語になりつつある。昔のSF映画に出てくるような大型コンピュータを音にしたもの、ということが理解できるのはわれわれの世代くらいでしょうな。

20。2段目の終わりの右と3段目の最初の左のフレージングが異なるのはなぜ? どちらかがミスプリ? それともあえて変えたのでしょうか?

総合評価  A

 「こどもたちのために音楽的でしかも実用的なピアノ曲をつくってみたい・・」この作曲者の言葉がそのまま見事に実現された曲集である。

 私の乏しい経験からではあるが、無数にある子供用ピアノ曲集の中でも子どもたちに最も喜ばれる曲集の一つである。特に邦人作品の中では少なくとも子どもたち自身の受容度という点において、この曲集にまさるものを知らない。一冊ほとんど丸ごと使える曲集である。

 ブルグミュラーの中程にさしかかった頃から与えてソナチネと併用するのがいい。オクターブが全くなく、小さい子どもたちにも安心して使用できる。

 指使いもまず大丈夫であるが、一部プロ用というか、学習者にはどうかと思われる指も見受けられる。具体的にいえば4を避けて3を使っている、プロにはよくあることであるが、学習者にはやはり4の練習をさせるべきだと思う。

トップへ戻る   1つ上に戻る

© 2015- 田所理央 ご意見・ご感想は t.masato@mathemarimo.bird.cx までお願いいたします。