あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 作品集 

 

音楽の花束 4 ロマン派3 長峰和子編纂  教育芸術社

 カノンさんのリクエストにより教育芸術社の「音楽の花束4」(ロマン派3)を調べてみます。国内版の楽譜にない隠れた名曲多数収録というのがウリ、CD付きしかなく値段が高いというのが難点。*印はCDに収録されているもの。

  曲名 作曲者 難易度 評価
* ノクターン「別れ」 グリンカ  16  A
* ポルカ バラキレフ  24  A
* ひばり グリンカ=バラキレフ  22  A
* いたずらっ子 Op.72-12 チャイコフスキー  19  B
  村のこだま  Op.72-13 チャイコフスキー  20  B
  5拍子のワルツ Op.72-16 チャイコフスキー  19  B
* ノヴェレッテ Op.11-2 リムスキーコルサコフ  20  B
* 即興的前奏曲 Op.38-1 リムスキーコルサコフ  22  B
  悲しい歌 カリニコフ  12  A
* エレジー カリニコフ  20  A
* 3つのノクターン №2 ラフマニノフ  16  A
  メロディー Op.3-3 ラフマニノフ  19  A
  道化師 Op.3-4 ラフマニノフ  21  A
* V.R.のポルカ ラフマニノフ  27  A
  ワルツ形式の練習曲 サンサーンス  27  A
  憂鬱 シャブリエ  15  B
  即興曲 シャブリエ  24  B
  ノクターン №4 フォーレ  23  A
* バルカローレ №8 フォーレ  22  B
* 演奏会用練習曲 秋 Op.35-2 シャミナーデ  24  A
  春によす グリーグ  17  A
* トロルハウゲンの婚礼の日 グリーグ  23  A

○ノクターン 美しい。やや感傷的。手は大きい方が楽。

○ポルカ オクターヴの連続があり、テンポ次第では派手というより曲芸という印象になる(CDは少し遅めと思う)。8小節目の左のアルペジオの最終音は右で取る方が良いだろう。

○ひばり 比較的有名な曲。派手で演奏効果があるがそれほど難しい箇所はない。序奏のアルペジオの最終音は右手で取る方が楽。なおCDは9~10小節のリズムを明らかに間違えている(多分ないと思うが、ひょっとしてそういうリズム〔音価が2分の1〕の版があるのかもしれない。しかし仮にそうであっても楽譜に付いているCDなのだからダメですよね)

○いたずらっ子 跳躍が多く手の大きさにより大分難易度が異なる。CDは大分遅めだろう。

○村のこだま オルゴールのような印象。120の速度指定はちょっと速すぎるような気がする。

○5拍子のワルツ 近代以降ならともかく、ロマン派で5拍子の曲を複数作っている作曲家は珍しい。それともロシアに5拍子の伝統舞曲でもあるのだろうか(カリニコフも作ってるから)。

○ノヴェレッテ ある種の厚みがある。

○即興的前奏曲 短いが速く弾くと相当難しい(CDは指定速度より大分遅い)。

○悲しい歌 全音版では中間部のデュナーミクは付いていない。

○エレジー ショパンの遺作のcisのノクターンを少し思い出します。感傷に溢れていますが名品でしょう。 

○ノクターン こんな作品があったんですねえ。ラフマニノフ14歳だそうです。

○メロディー これはよく弾かれる。全音版よりデュナーミクが細かい。

○道化師 これは全音版との間に指以外の差異はない。Agitatoに入って3小節目Tenor、全音版はFisになっているが、これは全音の方の誤りだろう。

○V.R.のポルカ これは結構有名な曲。ポルカらしく軽やかに弾くのは極めて難しい。CDは軽やかさより情緒を優先した演奏。

○ワルツ形式の練習曲 これは一覧表にもある。サンサーンスのエチュードは18曲、いずれも激ムズ、うち有名なものは2曲かな。もう一つはOp.111-6。

○シャブリエ なぜこの2曲なのかよく解らない。まあ、お気に入りなんでしょうかね。

○フォーレ 初期のものと晩年のもの、一般になじみやすいのは初期の方でしょう。

○秋 同じシャミナーデのコンチェルティーノ(フルートソロ)のメロディーを使ってます。演奏会用練習曲とあり、結構派手ですが弾きやすく書かれている。私の楽譜を持っていなかった曲が9曲あるんですが、その中でこの曲が一番好きかな。

総合評価  A

 海千山千というか、大抵のめぼしい作品は持っているという先生用の楽譜。もしくはみんなが知っているような曲では物足りない、私こんな曲知ってるのよ、とちょっぴり同好の士に自慢してみたい相当うまいアマチュア向きの本。

 他に国内版がないのは10曲前後だと思います、それがそこそこの価値のある作品で占められているというところがこの本のウリでありミソですな。

 金沢孝次郎の「ピアノ名曲選集」のもう一段難易度の高いヴァージョンという感じですね。

 なお全5巻で、おそらくこの巻が最も価値があります。私が基準にはならないでしょうが、他の巻は私は1~3曲を除いて楽譜を所持しています。

(CD付きのため購入限度の値段を上回っていますので、他の巻のリクエストがあった場合、この楽譜を購入せずに、私が楽譜を所持している作品だけで間に合わせることになります)

 演奏の方は二人で分担しているが、山脇さんの方に一日の長がある、遅めのテンポが多いがまあまあ。吉田さんの方は、楽譜を忠実に音にしているという感じ、それだけでは音楽とは言えない。何が悪いのかなと考えてみたが、リズムの感覚に少し問題があるのかもしれない、拍の表と裏がほとんど音量が等しくなっていて、結局リズムが死んでいる。

 当会では演奏評は原則として行わないつもりだが、あえて付け加えると、ロマン派の音楽にとって最も必要な「自由な感情の飛翔」というものに欠けている。シャミナーデがまさにそうだし、グリーグからは「婚礼の日」の陽気さは伝わってこないし、フォーレはこれはそういうロマン派とは別物だが、さりげない上品さ、というものを感じさせてフォーレと言えよう。

 苦言を呈してみたが、CD付き楽譜というのは時々最低水準の演奏があるが、そういうことはなかった、アマチュアの方も安心して買うことは出きる。

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