あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 作品集 

 

ル・クッペー ピアノの練習 ABC Op.17  音楽之友社
ピアノのアルファベット     全音楽譜出版社

 メトードローズと共に安川加寿子さんがフランスから日本に導入してきた教材の一冊。現在、全音からも違う翻訳名で出ている。練習曲集ではあるが、音楽性豊かな曲も多く、当会では普通の曲集として扱う。両版調べることにする。各曲の前に予備練習がある。

番号 難易度 評価
 1   5  B
 2   5  C
 3   5  B
 4   5  B
 5   5  A
 6   6  C
 7   6  A
 8   5  B
 9   7  C
10   6  A
11   7  A
12   5  A
13   6  B
14   6  A
15   7  C
16   7  C
17   6  B
18   8  C
19   7  C
20   7  A
21   7  A
22   7  B
23   8  C
24   8  B
25   9  B

1.全音版は速度指定88、音友版は84。スケールの練習、なめらかに美しく弾く。

2.音友版はAndante、全音版はAndantino。15小節目の右手はスラーの切れ目で離すこと。

3.出だしの右手、音友版は2,全音版は3、音友の方がピアニスティックであるとは言える。3段目最後の小節の右、音友は1232、全音は43、私は4232が良いと思う。音友は速度116,全音は120。

4.和音の練習。中間部の短いスラーの切れ目、離す必要はない。

5.ある程度速く弾いて2分の2の感じを出すこと(音友は116,全音は126)。にぎやかに弾く。中間の指、全音は普通、音友はピアニスティック。

6.5指の練習のつもりなんだろうが、むしろポジションの移動の練習。こういうのは難しい。予備練習Fに、全音版はcrescとdiminがある。

7.A dur。全音は速度100、音友は96。4小節目に全音は松葉のcrescとdimがある。中間部右手スケールの指、全音は1231345,音友は1231235、どちらでもいいのだが、音友の方がピアニスティックかな。

8.前半お終いの左手、音友は32もしくは21,全音は42、その3つのいずれかでしょう。

9.指使いに1カ所差異がある(4段目の終わりの右)、やはり音友の方がピアニスティックで、全音は普通の指。5段2~3小節目にかけて音友は松葉のcrescがある。最後、音友はp、全音はpp。

10.いかにもフランス風に洒落た佳品。装飾音は前に出す(近代奏法)こと。8、25小節目あたりで微妙なritが入るようになれば、なかなかのもの。2段目最後の左、音友は5から31,全音は4から21、次出てきたときに、音友は4から21にしている、理由不明。

11.ペダルを使っても良いが、使わなくても充分表現できる。中間部のpはsubitoで極めて美しく。最後の6拍をきちんと数えさせること。最後の音符、音友は3拍、全音は6拍(音友のミスだと思われる)。指は両版で微妙に異なるがどちらでも良い。ペダルを使わない場合は和音の箇所のレガートは不可能、変につなげようとしない方が良いと思う。予備練習との共通点はト長調ということのみ(ほとんど無意味?)。

12.ホ長調の練習と思われる。速度、音友は132,全音は152。

13.やや練習曲っぽい。左ががちゃがちゃしないこと。速度、音友は116,全音は126。

14.連打の練習曲として極めて良くできている。2段目、音友はmf、全音はpiu f、イタリア人に訊かないと解らないが、厳密に言えば全音はおかしいような気がする。速度、全音は152,音友は138。

15.34のトリルの練習。最後から3小節目左、全音は2123,音友は2312、全音は普通の指、音友は右手との組み合わせを考慮した指。

16.繰り返しの直後に全音版はmf、4小節後にpiu f、音友版は直後には何もなくて、4小節後にmf。dolceの次の小節、全音版は松葉のdim、音友版はない。なおこの曲集は時々あるのだが、この曲などは予備練習と楽曲との間にほとんど関係がない。

17.左手が鐘の音、ということで一音一音割とはっきりと弾くこと。4段3小節目右手最後、全音は3で次が2、音友は2で次が1、私は3から2にしてそこで指換えで1もしくは4にするというのがベストだと思う。速度、全音は152,音友は138。

18.これはほぼ純然たる練習曲、交差及びポジションの移動の練習。

19.同じ指による連打の練習だと思われるが、指使いの指示がいまいちはっきりしない。つまり4段目最後の小節、右手が2○3、あるいは最後の左手、4○3とあるが、だとすると最初の左は332なのか、それとも333なのか、333と私は思うが、整合性に欠けると言われても仕方あるまい。

20.美しい曲。なめらかに柔らかく弾くこと。初心者は3連符以外の音符が速くなりやすい。最後から3小節目、左手3拍目、音友はG、全音はE、どちらが正しいか不明。

21.「半音階の練習です」と音友にあるが、予備練習しかそうは言えない。また予備練習の指使いはフランス式で最初に学ぶ半音階の指として適切とは言えない。速度、全音は80,音友は72。

22.左手のレガートの練習。3段3小節目左、音友は1323,全音は1212、音友の方がいい。

23.これも予備練習は楽曲と全く関係のない半音階の両手練習、この指使いもフランス式、フランス式は特に両手では非常に弾きにくい、私はこれは指使いを変えるか、パスしてしまうかだと思う。楽曲の方は左右のずれたアーティキュレーションで、練習曲集としてこの本を使うのならば、必ずさせるべき(チェルニーにはこの程度のレヴェルでは私の記憶する限りない)。手首のダウンアップを付けてやるといい。

24.装飾音と跳躍の練習。右手黒鍵で全音は1を避けて2に変えている場合がある、音友は1で通している。

25.速度、音友は66,全音は76。臨時記号が多く、読符がやや面倒。

総合評価  A-

 Bかなとも思いましたが、オリジナル曲集で3分の1評価Aがあれば、まあ上等でしょう。

 曲集としては迷ったところ、練習曲集としては文句なしのAです。

 私は練習曲不要論者ですので、この本も抜粋してしか使いませんが、たとえばチェルニーのリトルピアニストや100番、110番をお使いになってらっしゃる先生には、こちらの方がはるかにいいとお薦めしておきます。(チェルニー的テクニックという奴が最も有用である可能性が高いのは、中級すなわち30~40番辺りだろうと思います)

 全曲使うのならば、メトードローズ終了というのが安川さんの思っていたことのようですが、メトードローズをきちんと終えていないと少し難しい、バイエルを終えていたら楽に使える、程度。

 何というかフランス的色彩が強い。その意味で私はむしろメトードローズではなく、バイエルやツィーグラーなどドイツ系の入門書を終えた子どもに、別の文化的香りを与えるつもりで使いたい。

 この本を終えたらどうするのかというのは、昔は少し困ったのだが、(30番には未だ届かない、ラジリテはつまらない)今は「こどもの国」「虹のリズム」等々、日本人の素晴らしい曲集がぴったりです。

 現在2種類の版が入手できる。原著を入手していないので定かには言えないが、音友の方には安川さんの手が入っているような気がする。私は全体としてはそちらの方が良いと思う、安川さんが偉大なピアニストであったということの片鱗がうかがえるような微妙な差異が全音版との間にある。

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