あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 作品集 

 

こどものための現代ピアノ曲集 Ⅰ 桐朋学園子どものための音楽教室編 春秋社

 カノンさんのリクエストにより「こどものための現代ピアノ曲集 Ⅰ」を取り上げます。1967年の初版、出たときは随分話題になった曲集だという記憶があります。現在はコンクールの自由曲などで取り上げられるのをたまに見ます。

曲名 作曲者 難易度 評価
こどものえほん 安部幸明    
 1.行進曲     9  B
 2.蝶は舞う    10  B
 3.おどるのははじめて     8  C
 4.小犬はじゃれる     9  B
 5.オルゴールを聞きながらおやすみ     9  C
 6.スケルツオ     9  B
 7.ワルツ    10   B
組曲 にしきめがね 別宮貞雄    
 Ⅰ はじめに     9  B
 Ⅱ いきいきと    12  B
 Ⅲ ゆるやかに    11  C
 Ⅳ さわやかに    10  B
 Ⅴ 力づよく    11  C
 Ⅵ やさしく    10  B
 Ⅶ きっぱりと    10  C
 Ⅷ おどけて    13  B
 Ⅸ しずかに     8  B
 Ⅹ おわりに    11  A
ソナチネ 林光  19  A
こどもの世界 石井歓    
 Ⅰ ソ音のあそび    10  B
 Ⅱ 楽しいリズム     8  B
組曲 石桁真礼生    
 Ⅰ 前奏曲    12  A
 Ⅱ ガボット    11  B
 Ⅲ カンティレーナ    11  B
 Ⅳ 間奏曲    11  B
 Ⅴ マヅルカ    13  B
ある日のぺぺ 入野義朗    
 Ⅰ おしゃべり    14  C
 Ⅱ おすまし    12  C
 Ⅲ おりこう    11  C
こどものための四つの小品 清瀬保二    
 Ⅰ    12  A
 Ⅱ    10  B
 Ⅲ     9  B
 Ⅳ     9  B
かごめ変奏曲 小山清茂  15  A
ソナチネ 丸田昭三  14  C
ソナータ形式による練習曲 三善晃  20  B
ソナチネ 諸井誠  17  B
変奏的練習曲 中田喜直  18  A
ピアノのためのコンポジション 小倉朗    
 1    16  B
 2     7  B
 3     9  B
 4    11  B
 5     8  B
 6     9  B
 7    14  B
 8    13  B
ソナータ 宍戸睦朗  12  A
ソナチネ 戸田邦雄  17  B
三つの自由画 湯山昭    
 Ⅰ きつつきの歌    10  B
 Ⅱ 貝がらのヨット    10  B
 Ⅲ ラッシュラッシュラッシュ    11  B

○こどものえほん 子どもが喜ぶほど分かりやすくもなく、かといって現代曲というほど難解であるわけでもない。やや中途半端なものに終わっている。

○にしきめがね 分かりやすいのはⅠとⅩだけ。後はいわゆる現代物が好きな人以外には拒否反応が返ってくる可能性大。

○ソナチネ 本格的な現代曲の入門に良いかもしれない。3楽章はハノンのパロディーだがやや出来映えが劣るような気がする。

○こどもの世界 当時はそれなりに新鮮な感じもしたが、もはや「古い」という感は否めない。

○組曲 叙情性に溢れた組曲。今でも時々弾かれる。

○ある日のぺぺ 子どもが受け入れる音楽ではないと思う。

○こどものための四つの小品 いずれも親しみやすいが1曲めは内容に深いものが感じられる。

○かごめ変奏曲 変奏曲というものを知るに良い曲。

           変奏1 左右の受け渡しになるが手の大きさでどう分担するかは変わる。
変奏2 4拍目B、2小節2拍頭A、3小節2,4拍全部等が左手になる。
変奏5 2拍目DHAと左手、3小節目は色々考えられる。
変奏7 5段目は左右受け渡しになる。
変奏8 最後から2小節目、右手4度の連続、51,42,51と弾く。 

○ソナチネ これも子どもが喜ぶとは思えない。          

○ソナータ形式による練習曲 難解だがごく一部の子どもは受け入れるかもしれない。3楽章だけが飛び抜けて難しい。指定速度を守ろうとするとさらに一段と難しくなる。1,2楽章は14~5くらい。 

○ソナチネ 現代物の入門に適する? なお諸井誠には「ソナチネの花束」がある。 

○変奏的練習曲 良くも悪くも中田喜直的(日本の田舎を思い出させる)。近年この曲を聴くと何となくほっとした気になるのはこちらが年をとったせいか。

○ピアノのためのコンポジション 現代作品の色々な技法がごちゃごちゃと入っている。これを聞いて面白いと思う子どもには、現代物(小山、中田、湯山は現代物とは言えない)を与えることが出来るだろう。 

         2.最後から3小節目の右の最高音はGisではなくGかと思われる。
6.ペダルはなくても良いだろう。
7.これはペダル必須。

○ソナータ 分かりやすいので、特に1楽章はよく弾かれる。私見では2楽章は少々劣る。

○ソナチネ 「古典風」とあるが、12音技法の日本への紹介者の一人だけに相当モダンである。

○三つの自由画 湯山さんには他にいくらでも良い曲がある。

総合評価    B

 何というか真面目な先生向き(わざわざ会費を払っている先生方が不真面目なわけはないのですが、どう言うべきか、つまりお堅い先生向け)です。

 先生にとって必修ともいえるのは二曲ある変奏曲ですが、どちらもこの本以外で手に入ります。他にもAと評したものはありますが、先生にとっても好悪が別れると思います。

 この本が出た当時は、日本人作曲家の作品集はほとんどなく、この本はピアノの先生にとってはほぼ必携に近い本でした。しかし今となってはこの本に収められた曲目のうち演奏されるものとされないものがはっきり別れてきました。

 またこの本が出された1960年代は、いわゆるモダンな曲の全盛時代で、そういう曲目にも付いていけるように自らを錬磨することが、良心的な先生の証でもありました。しかし今当時の作品の相当数が省みられなくなりつつあります。音楽の世界において、モダンであればそれで良いというのは、やはり何かしら人間の根本的な感情を無視した暴論であったことの証左であろうと思われます。

 日本人作曲家の作品集は、現在それだけでも当研究会が調べ尽くすのは苦しいくらい出版されています。その大半が良い意味でも悪い意味でもより子供向きと言えます。

 この本の存在価値としては、まるっきり子どもに迎合していない作品の中に現代の無調系の作品の入門に適するかと思われるものが含まれています、そういうものを真面目にきちんと取り上げてみようという先生には、今なおお勧めであるかと思います。

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