あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 作品集 

 

やさしいインベンション バッハのインベンションをひく前に 市川都志春編著 教育芸術社

マナティーさんのリクエストにより「やさしいインベンション」を取り上げます。93年初版発行とありますからさほど古い本でもないですね。二部に分かれていて一部はバロックの作曲家の主題を元にした31のインベンション(おそらく市川さんの作曲であろう)と二声練習が8つと輪唱曲が8つある。二部は21曲のバロック音楽が入っている。やや教則本的な感じ(多声音楽の)がある。表の方は1部はインベンションのみとする。

○一部のインベンション

番号 難易度 評価
 1   2  C
 2   3  D
 3   3  D
 4   3  D
 5   4  C
 6   4  B
 7   4  B
 8   4  C
 9   4  C
10   4  C
11   5  C
12   4  C
13   4  C
14   5  C
15   5  C
16   5  C
17   4  C
18   5  C
19   5  B
20   5  C
21   5  C
22   6  C
23   6  C
24   6  B
25   6  C
26   5  C
27   5  C
28   6  D
29   6  C
30   6  C
31   6  B

5.知的な面白さはあるかもしれない。

6.原曲は有名であるが・・易しくはなっているが改悪と言わざるを得ないでしょうね。

7.使えなくもないかな。

 8までにはそれぞれに予備練習として「二声練習」が入っている。親切と言えば親切だが、ただ私見ではこのインベンション自体がインベンションの予備練習みたいなもので、予備の予備という感じがする(そこまでせなあかん曲かいな)。

 11以降「輪唱曲」と題されて8曲ほどカノンが入っている。2段の譜面に先生と生徒と記されているが、使うのならば最終的には一人で両手で弾くのであろう。 

22.後半少し左右が合わせにくいだろう。リズムの練習にはなる。

23.腕の運びからすると2小節目右手Gは2か4。

24.これなどは出来のいい方だと思う。

26,27.ここら辺に限らないが、バロック調を模しているのだろうが、微妙に古典派的(バイエル的)な音の運びが混入している。

28.これなどは和声的にはむしろ近代に近い(誉めているのではない)。

○21のバロック音楽

番号 曲名 作曲者 難易度 評価
 1 フロットーラ カーラ   4  C
 2 パスピエ テレマン   4  C
 3 リゴドン ラモー   5  B
 4 サラバンド コレルリ   5  C
 5 リゴドン パーセル   5  C
 6 サラバンド ノイフビッレ   5  C
 7 ファンファーレ・メヌエット ダンコンベ   5  A
 8 メヌエット フィッシャー   5  C
 9 メヌエット クリーガー   5  C
10 メヌエット パーセル   5  B
11 メヌエット ヘンデル   5  C
12 ブーレー L.モーツアルト   6  A
13 カドリーユ 17世紀の舞曲   5  C
14 カドリーユ(2) 17世紀の舞曲   5  B
15 ブーレー フィッシャー   6  C
16 タンブラン ラモー   6  A
17 タンブラン ダカン   5  C
18 メヌエット 古いフランスの舞曲   5  C
19 メヌエット キルンベルガー   6  B
20 メヌエット Anh.115 バッハ   6  B
21 メヌエット Anh.114 ペツオルト   6  A

1.初期バロック、対位法ではない。

2.3段4小節目左手、○212とあるが、○241の方がましか。

7.少し易しく変えてある。

9.有名なメヌエットとは異なる。

14.これは有名な旋律。

16.有名なタンブランを易しくしたもの。

17.左手が全て同一で、こういうのは易しい。

19.トランペットのイメージ。

20.調性をdに変えて、かつ少し易しくしてある。なぜdに変えたのか理由不明、全く賛成できない。それぞれの調性には独自の感覚がある。教育上の明らかなメリットがない限り、変えてはならない。4小節目の左手の指はやや首をひねる。4から2312と弾くのがまだ良いか。

21.その昔のバッハのメヌエット。掲示板でも話題になりました。この本はペツォルトと明記してあります。

総合評価    D

 久しぶりのきつい評価です。

 二部に分かれたその前半はバロックの作曲家の主題を使って、市川氏が作曲したものでしょうが、はっきり言って大学の対位法の試験の答案を見ているような気になりました。別に落第の答案ではないが、褒め称える答案でもない、その程度のものだろうと私は判断します。少なくとも私は自分の生徒には使いません。

 「何々のために」といういわゆる目先の効果を狙うものは、使用すれば確かにそれなりの効果はあるでしょう。しかし音楽において三級品以下の作品を使うということは、目先の効果があったにしても、その子の音楽的成長には、一級品の作品を使った場合に比べてずっと大きなマイナスが生じていることは間違いありません。

 これがまだしもハノンのようなものなら子供の目にも「これは曲ではない」ということが明らかですので害は少ない。一見芸術的な曲であるかのような体裁を取っているところが、かえってまずいと私は思います。

 この本を使えるようになっている生徒ならば、あと半年か一年待てば、本物のバロック音楽の作品を集めた曲集を使うことが出来ます。待つべきです。

 後半は本物のバロック音楽が入っているが(一部改変してある、私の知らない曲が多いので、大部分という可能性もある)、これぞという曲はあまりない。

 なお評価は絶対評価を心がけているのだが、人間心理の常として、つまらないものが並ぶとその中のましなものにいい点を付けたくなってしまう。第1部の評価Bは大分甘い。

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