あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 作品集 

 

グルリット 24の調による練習曲 Op.201   全音楽譜出版社

バラヒロさんのリクエストによりグルリットの「24の調による練習曲」を取り上げます。練習曲となっていますが、グルリットの他の曲集と変わりがあるわけではありません。普通の曲集と同列に扱えるものです(24の調を使ったということで「練習曲」と名付けたのかもしれませんね)

番号 曲名 調性 難易度 評価
 1 こどもの喜び  C   6  C
 2 小さな悲しみ  a   6  B
 3 春の歌  G   7  C
 4 楽しい気分で  e   9  B
 5 即興曲  F  11  C
 6 大きな望み   d   9  C
 7 すばらしい勇気  D   7  C
 8 高貴なワルツ  h   9  A
 9 小さな歌  B   7  C
10 エレジー  g   6  C
11 子もり歌  A   6  B
12 ロマンス  fis   8  B
13 狩の歌  Es   7  B
14 インテルメッゾ  c   8  C
15 舟歌  E  10  C
16 小さなカプリチオ  cis  11  B
17 スケルツオ  As   9  B
18 嘆き  f  10  B
19  H   9  C
20 あこがれ  gis   9  A
21 賛歌  Des  10  B
22 バガテル  b  11  C
23 夜想曲  Ges   9  B
24 フィナーレ  es  10  B

1.二部に分かれ、後半は前半と左右がひっくり返ったような形になる。その意味では練習曲と言える(左手の)。

2.この曲も後半左手がメロディーとなる。

3.前半は重音の練習かな。後半はその変奏となる。

4.細やかな動きの練習ということになるのだろう。「楽しい気分で」というのはよく分からない。

5.右手の重音のレガート、左手のオクターヴの練習かな。指の運びはピアニスティックだが、それでも初心者向きの曲ではないかもしれない。

6.これは練習曲らしい(分散和音)。チェルニー100番をもう少し音楽的にした、というような感じ。

7.左手にメロディーがきてから4~5小節目左手指5の連続になっている、まだしも54の方がピアニスティックであるが、初心者にはさせたくない。つまりあまり使いたくない曲ということになる。

8.この曲集中の白眉。ペダルが欲しい。

9.これもペダルが欲しい。

11.ペダルが欲しい。

12.音楽としてはAだろうが10度、11度ポジションまであり教材としては使いにくい。

13.第1楽節と第二楽節とでフレージングが異なる、理由不明。

14.やや練習曲っぽい。

15.ペダルは欲しい。

16.オクターブの最も初歩的な練習曲として記憶しておく価値はあるかな。

17.美しいがあっという間に終わる。

18.前半はペダルがある方がいいかな。

19.「夢」という曲名からは少し想像しにくい。

20.ペダルを付けて、表現とペダルの練習、という具合に使える。

21.短い変奏曲。第1変奏あたりでパッヘルベルの「カノン」をふと思い出す。

22.独立した曲とは言えないほど短い。

23.難しくはないが、読符が面倒でしょうね。ペダル必須。17小節3拍目左手Gesはミスプリの可能性あり。

24.esという調性を、このくらいの段階でさせる必要があるかどうかは意見が分かれるだろう。させた方がいいという意見の方は記憶して価値がある。

総合評価     C

 24の調による曲集というのはバッハの平均律、ショパンのプレリュード等色々あるのだが、あまり易しいものはない。この曲集がおそらく最も易しいのではなかろうか。(トンプソンの3巻の巻末にあるもの、バーナムの全調練習、は曲とはちょっと言い難い) 

 まあ、つまりほとんどの作曲家は初級レヴェルにおいて全調の修得の必要性を認めていないということである。 

 それに対立する見解として近年主にアメリカで主張されている全調メソッド(ぺース、その他)があるが、少なくとも従来型の、譜面を見てピアノを教える、という方法を採る限りにおいては、初級段階に置いて、特に年齢が幼いほど、調号が4つ以上のものは極めて読符に苦労するということはほとんどのピアノ教師が経験上学んでいることだと思われる。

 さてこの曲集であるが単独で使えるものはさほど多くはない。使うとすればむしろレヴェルの20近くまでいったときに、調性の理論的説明を兼ねて初見で弾かせる、という感じだろうか。

 グルリットは他に初心者向きの良い曲集を残している。最も使えるのは「子供の音楽会」OP.210かと思う。

 なお日本ピアノ界の大御所的存在によるピアノ教本にこの曲集が丸ごと載せられている。如何にいい加減な仕事をしているか(編者としての仕事をはなから放棄していると言われてもしかたがないでしょ)、その神経を疑う。なおそのことがなくともはっきり言ってまるで使えない教本である。

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