あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 作品集 

 

原博 21のエチュード 夢と童話のコンサート    音楽之友社

 これは初版が昭和42年ですから相当古い本です。日本人の中級向けピアノ曲集の草分けにも近い存在でしょう。いつの間にか「夢と童話のコンサート」という副題がついています。その方がよく売れるのでしょうな、中身は変わらない。エチュードと名付けられてますが、まあ普通の曲集と同列に扱うべきものです。

番号 曲名 練習目的 難易度 評価
 1 オルゴール 両手の均衡とリタルダンド   7  C
 2 ねむる白雪姫 トリルの準備   8  B
 3 カノン 両手の独立   9  C
 4 タイピスト 両手の指の交差   9  C
 5 ピノッキオ オクターブ以内の分散和音   8  B
 6 コラール 保続音   9  B
 7 ねことねずみ 音階の練習  10  C
 8 シンデレラのサラバンド 音の保持と表現  11  B 
 9 二人三脚 二連符と三連符の交錯  11  B
10 ドン・キホーテのための行進曲 倚音とスタッカート  13  B
11 三声のフーガ 対位法的な訓練  13  C
12 木陰の夢 シンコペーションと両手の交叉  15  A
13 メフィストフェレス 半音階  16  B
14 不思議の国のアリス 音の反復  14  B
15 舟歌 音の保持と表現  15  B
16 ”魔王”の息子 連打  18  B
17 椿姫へのワルツ 三拍子の軽快な表現  16  B
18 大地を背負うアトラス 分散和音  18  B
19 星の王子 三度の練習  17  C
20 疾駆するペガサス 敏捷な動き  20  B
21 ロンド・メランコリック 総合的表現  21  A

1.長い、という印象。繰り返しを省くのなら2つ目と4つ目(最初と三つ目は省けないだろう)。終わり方が面白いと言えば言える(題名どおり)。

2.併用曲集などにも入っているが、微妙に弾きにくい箇所があり、私はさほどおすすめはしない。指使いは安川加寿子さんがつけたと思われるが、初心者向きではない箇所がある。2ページ2段1小節目左手53とあるが54の方がいいと思う。同じく4段1小節2拍目右手31は21の間違いだろう。

3.2ページ2段3小節から4小節目にかけての左手の指は521234,12321232がいいと思う。

4.指の交差であって、腕の交差ではないので注意。

6.これは「練習曲」として使える。使うとすればレヴェル9や10ではなく、3声インベンションの予備として指くぐりの練習とでもすべきか。4段6小節目右手21とあるが何かの間違い、35だろう。

7.3段3小節目から次の小節にかけての右手の指は理解不能。途中までその前の二小節と同じ指でよい。

8.サラバンドと言うほど遅くもないだろう。曲名でもっている感もあり。

9.この曲こそ子供の興味を引きそうな曲名が欲しい。2ページ目4段から5段目にかけての右手の指は、スラーの切れ目で手を離すことを前提としている、つまりこのフレージングの箇所は全てそう弾かなければなるまい。

10.終わりの方のト短調の箇所がやや難しい。装飾音を取ってまず練習すること。

11.三声の入門にはなるかもしれない。

12.これは良い曲です。

13.半音階の指使いがフランス式なので両手同時になると大分困難、ドイツ式に改めても良いと思う。3段1小節目右手、Cが1になっているがHが1だろう。2ページ2段1小節目左2拍目後半33とある、もちろん32のミスプリ。

15.親指を滑らせる指使いを多用しているが、たとえば1ページ目の最後の小節など21の方が遙かに易しい(よほど手が小さいのならともかく)。

16.「魔王」を知らないと意味不明でしょうね。「魔王」の出だしだけでも弾いてやると分かるかな(私伴奏したことありますけど、あの曲はどう弾くかと言うよりどうごまかすかという方が正しいような曲ですがね)。もちろん速く弾くとそれなりに難しい。

17.こういうのを弾かすのだったら、私としてはショパンのワルツを弾かせたい。

18.それなりに使える曲です。

19.他の曲もそうだが、指使いは参考程度に。大分特殊な指を使っている。

20.速さによって大分難易度は変わる。ショパンの同種のものよりは遙かに弾きやすい。2ページ最初の小節1拍目左手3○○2とあるが、もちろん3○○3の誤り。

21.私は出だしが好きで、再現がたまらなく好きなんですが、全体をまとめるのはやはり結構難しい曲です(それを作品の欠陥ととらえるかどうかでこの曲集全体の評価が大分変わる)。2ページ2小節左手2拍目12とあるが42の間違い、同じく3小節に拍目の左手の指は逆さま。

総合評価    B-

 初版以来30年以上も生き残っている曲集なのだから、それなりに評価は高いのかもしれない。ただ私としては数曲を除いて触手を動かされるものはない。ぱっと聞いて心を動かされるということが2曲を除いて、ない。

 30年前は日本人の手になる中級向けピアノ作品集は皆無という状況であった、ということで多くの先生方から歓迎されたのだろうが、今となってはその手の曲集も大分数が増え、結構いいものも生まれている。

 それでもAが2曲あるのでまあ、おまけのB-ですか。

 わざとそうしてあるのかどうか知らないが、ある種の単純さに欠けたものが多い。エチュードとしてはほとんど致命傷だと思うし、曲集としても不必要に取っつきにくくしてあるような気がする。

 指使いは相当こっているというか普通でない。これも使いにくい一因をなしている。

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