あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 作品集 

 

スコット・ジョプリン ラグタイム・ピアノ名曲集 校訂ジョン・ヤング  リットーミュージック

 Sakaeさんのリクエストによるジョプリン(1868~1917)の「ラグタイム名曲集」を取り上げます。ジョプリンは何といっても「エンターテイナー」で有名ですね。なおSakaeさんには楽譜を御寄贈いただきました。厚く御礼申し上げます。

番号 曲名 難易度 評価
 1 メープル・リーフ・ラグ  20  B
 2 パーム・リーフ・ラグ  17  B
 3 エンターテイナー  19  A
 4 ピーチェリン・ラグ  15  B
 5 ソラース  16  B
 6 ストップタイム・ラグ  16  C
 7 イーズィ・ウィナーズ  19  A
 8 アラバマからの微風  20  A
 9 エリート・シンコペーション  17  B
10 ストレニュアウス・ライフ  17  C
11 しだれ柳  16  B
12  16  C
13 ユウジニア  18  C
14 カスケード  20  C
15 グラジオラス・ラグ  20  A
16 パイナップル・ラグ  18  A
17 ユウフォニック・サウンド  18  B
18 パラゴン・ラグ  17  C
19 スコット・ジョプリン・ニュー・ラグ  20  C
20 リフレクション・ラグ  16  C
21 ノンパレル  17  B
22 マグネティック・ラグ  17  B

1.ジョプリンの出世作。3ページ目がTrioとなっているが別にD.Cする必要はない。

2.叙情的なラグ。

4.技術的には易しい。ラグを弾きたい人が最初に弾くには良いかもしれない。

5.タンゴの伴奏の上に、ラグのメロディーが乗っている、という感じの曲。

6.かかとで床を踏みならせ、という奇怪な?指示のある曲。

7.比較的有名かもしれない。

8.註に、フレーズが一定しなくて難しいとあるが、それは別に大したことではない。オクターヴの連続が単純なオクターヴだけではないということがおそらく技術的には一番難しい。

9.註に、リリカルな部分とシンコペーションの部分の対比が重要とあるが、クラシック関係者から見れば、リリカルと言っても、まあしれているわけで(ルバートなんぞは絶対にあり得ないから)、妙に感情を込めて弾かない方がいいような気がする。

11.この本の中では最も叙情的な曲。何度か出てくる、テーマの最初の四分音符の形、Emの和音になっている所などに少し重みを付けても良いだろう。

12.途中16小節にわたってマイナーの部分がある(ハ短調)。晩年のものを除いてジョプリンには極めて珍しい。

14.左のオクターヴの連続が難しい。テンポを遅くすればぐっと易しくなるが。

15.この作品あたりから微妙に作風が変わっているように見える。和音の使い方にやや複雑さが増し、よく言えば単なる娯楽品から芸術作品に変貌しつつあるような感、悪く言えばややこしく、分かりにくくなっただけ、評価は分かれるところであろう。

16.15よりずっと分かりやすく、かつ成功している。

18.註に「最初の部分を感傷的に」とあるが、もちろんロマン派の作品の如く「感傷的に」弾くわけではない。

19.指定速度(校訂者のものだろうが)は大分速い。

22.もしジョプリンがもう少し長生きしていたら、この曲の方向に変化をしていたんだろうな、と思わせる作品。ラグにマイナーはいまいち合わないのだが、この曲では成功している。

総合評価  B-

 基本的には、ラグのお好きな方はどうぞ、という曲集。

 普通のピアノ教師、あるいは愛好者には「エンターテイナー」以上のものはない、ということで、まあ、うっちゃってしまってもさほど実害はない。

 要するに、アメリカのアニメやらコミック映画などで背景に流れている音楽の元祖(あるいはそのもの)である。普通の人にとっては「軽いBGM」という言葉で括られる部類に属する。

 前半はすべてそういう音楽であり、その域を出るものではない。「エンターテイナー」を除いては、評価AといってもBのましな方、評価Cといっても、Bの下の方、くらいに思っていただきたい、ほとんど差はないと言っていい。

 後半、最初の解説によれば、最初の妻と離婚したあたりから、微妙に作風が変わる。終着駅が「マグネティック・ラグ」である。この作品自体は私には微妙な傷が感じられるが、この方向で後10年生きて書き続けていれば、「エンターテイナー」を超える作品を生み出せたのかもしれないとは思う。だが、死児の年を数えても仕方がないだろう。

 なお、リットー版にはCDがついている。リズムの歯切れが悪く、所々ルバートしているなど私にはあまりいい演奏とは思えない。とくに「エンターテイナー」などは気色悪い。「ソラース」などはラグとは違う音楽と思えば、それなりに聞けるが。 

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