あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 作品集 

 

ジョン・ジョージ 森の夜明け  全音楽譜出版社

 マナティーさんからのリクエストにより「森の夜明け」を調べてみることにします。全体が3部に分かれていて1部には田村智子さんによる身近な楽器のアンサンブルやお話が付けられている。また3部は連弾である。

☆第1部 ジャングルの一日

曲名 難易度 評価 アンサンブル楽器
ノソノソ象さん   3  B 大だいこ
ピョンピョン ガゼル   3  B すず
ニョロニョロ ヘビくん   3  C マラカス(シェーカー)
土人の踊り   3  B コンガ(ボンゴ)
ジャングル・リヴァーは流れ   4  A ツリーチャイム
ワニくんの日なたぼっこ   4  B メロディオン
モソモソ虫くん   4  B 木琴 ウッドブロック
忍びのタイガー   3  B コンガ(ボンゴ) 大だいこ
ランの花咲く   4  C リコーダー
ペチャペチャ ヒヒくん   3  B ウッドブロック コンガ(大だいこ)
大きなぶどうの木   4  B  
ジャングルの夕焼け   4  A 鉄琴

○ニョロニョロヘビくん 題名とお話があって初めて生きる音楽ですな。

○ジャングルリヴァーは流れ ペダルが必須。訳はいただけない。

○忍びのタイガー これもお話があって生きる。

○ランの花咲く ペダルは欲しい。

○ペチャペチャヒヒくん 右手がヒヒコ(雌)なのだろうから「おーい、何かかわったことあるかい」はまずいでしょ。「ねーえ、何か変わったことなーい」でしょうな。

○大きなぶどうの木 ペダル必須。

○ジャングルの夕焼け ペダル必須。

☆第2部 森の一日

曲名 難易度 評価
森の夜明け   4 A(C)
雨・・そして虹   6 A(B)
V.I.P.(とても大事なハリモグラ)   5  A
ウズラの群れ   5  A
カタツムリの旅行   5  B
年老いたハチドリ   4  B
小川の急流   7  A
たそがれ   5  A

○森の夜明け 音楽そのものは美しい。だが25の6度、12の分散5度などがあり、相当手が大きくないと教材として使うのは難しい。ペダルも必須。

○雨・・そして虹 8度ポジションあり。ある程度脱力が出来ていないと後半が難しいだろう。

○V.I.P. これは7度ポジションまで。

○ウズラの群れ 8度ポジションがあるがまあ使えるかな(ペダルが使えれば問題ない)。

○カタツムリの旅行 これは完全な描写音楽。

○小川の急流 最後の段の左手Gが4になっているが、その前のFisが4の誤り。

○たそがれ ペダルはなくても良い。25の6度が届くことが条件。最後に3回出てくる右手の形は指換えを使う。

☆第3部 たのしい夢(連弾)

難易度は左がsecondo、右がprimoです。(逆にするか迷いましたが、楽譜の見開きと揃えることにします)お間違えのないように。

曲名 難易度s 難易度p 評価
小さな曲   4   1  A
サーカスがやってきた   3   3  A
悲しいちょうちょ   4   2  A
歩道の歌   2   2  B
カニのダンス   3   2  A
日曜日の午後   3   2    A
水玉ポルカ   3   2  A
星の王子様   3   3  C
たのしい夢   3   3  B
集合!   4  2(4)  B
フランスの舟歌   4   4  A
かわうそのいたずら   3   4  B
カーニヴァル・ソング   3   4  B
巨人の谷   4   4  A
古代の行列   4   4  A
大牧場で   4   4  B
ヴィレジ・ダンス   5   5  B
森の花   5   4  A
トロッコの歌   5   4  A
牧歌   5   4  A 
お祝いのパーティー   5   5  B

○小さな曲 全曲の中で一番易しい。

○悲しいちょうちょ 「悲しい」味を出すのはちょっとセンスが必要。

○歩道の歌 子どもどうしでいけそう。そのときはペダルはいらない。

○日曜日の午後 合わせると美しい。

○水玉ポルカ ある程度速く弾きたい。

○集合 (オクターヴ上の音を重ねて)とあるが具体的にどうせよというのか不明、やや不親切。少なくとも3,4段目は関係ないことは明らか。1,2段目すべてオクターヴ上を重ねるという意味なら、記譜されている音はすべて左、右手がオクターヴ上ということになる。記譜どおり弾く場合と難易度が大分異なる。

○巨人の谷 決してあわてないこと。大きなイメージで悠然と弾く。合わせて初めて良さが分かるだろう。

○古代の行列 私はこの本の中で一番好きです。真ん中の平行5度が効果的。(ここの繰り返しは付けた方がいいと思う)

○大牧場で 34の3度があるが、まあテンポが遅いし、このくらいのレヴェルになっていれば避けなければならないということもないか。

○森の花 とても美しい曲です。secondがうまくリードしてあげること。

○牧歌 合わせてみて美しさが分かる曲。なおsecondの指は完全に教師用になっている。

○お祝いのパーティー primo4段4小節目左42で次135、421,24がベストだと思うが、この曲がおそらく3部の中で一番教材としては使いにくい。

総合評価     A

 へえ、こんないい本があるの、知らんかったわ、と言うのが正直な感想。

 ただ、マイナスを付けるかどうかでちょっと迷いました。最高の評価は少しおまけかもしれない。

 何がマイナス要因かと言えば、第1部、この部分は音楽がどちらかといえば題名あるいはお話に従属している、従って音楽それ自体としてみた場合、さほど魅力のないものが結構あるということ。ただこれは教材としてみた場合、マイナスと言えるのかどうかについては異論はあります。

 つまり、年齢が幼いほど抽象的なものに対する理解力に欠けます。だから子供向き教材としては、仮に中身が全く同じでも、題名がついている方がついていないものより良い、という考えは正しいと私は思っています。音によって、子どもに理解できる具体的な何かを表現するということは、初心者用教材としては、何らとがめられるべき事ではないのです。その意味でこの本の目指していることは正しい方向を向いていると言えます。

 ただそれにしても、音楽それ自体を独立して取り出しても充分魅力のある作品の方が、そうでないものより望ましいに決まっている、ということですな。

 もう一つのマイナス要因は、これがアメリカのこどもたち用に作られたということから必然的に生じてしまったこと、つまり体格が日本のこどもたちより大きい、あるいはピアノを始める年齢が日本のこどもたちより遅い、従ってちょっと小さい子が使うには苦しいという曲がパラパラ見かけられます。ペダルも使いたい曲が多数を占めます。

 結局最も異論なく使えるのは第3部ということになります。数も結構多いし初心者用の連弾曲としては最高のものに近い(物部一郎のものはことごとく長く、基本的に発表会用、もしくは出来の良い子供用、ディアベリのものもとてもいいが、これとはまるで雰囲気が異なる。たとえていえばディアベリはソナチネ系統、これは日本の優れた現代作品に通じる系統です)。

 手が大きい子、少し大きくなってから始めた子などには丸ごと使えるとても優れた教材です。

 なお第1部のその他の楽器は、別に使用せずとも問題ない。

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