あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 連弾・二台ピアノ 

 

ピアノ連弾名曲選集 1 ヤーノシュ・ツェグレディ校訂  全音楽譜出版社

 連弾曲集は取り上げないのかという質問を前に頂いていました。こちらの甘い目論見としては、会員数がたとえば関西だけで50人くらいにもなれば、どこか場所を借りて文字通り「ピアノ教材研究」を開いて、そこで会員の出席者の方と共に連弾曲集を検討してみようかななんて思ったりしていました。しかしどうも夢のまた夢で。近くの会員のどなたかに手伝ってもらって二人で検討するというのも、現状ではバイト料が払えそうにないのです。ということはいつまで経ってもソロの曲集ばかりになります、しかし連弾はピアノの先生は是非とも相当数レパートリーに加えておくべきなので、見切り発車で私一人で検討することにします。

 ただし難易度・評価ともその正確さにおいて、ソロの曲集より信頼度が落ちるということをご承知おき下さい。連弾特有の難易度というものがあります、それは実際に連弾してみないことには分かりにくいのです。ほとんどソロと変わりないようなものもあれば、一人で弾くより遙かに難しくなるものもありますので。

 で、最初に少し難しめですが、全音から出ている<ピアノ連弾名曲選集>を取り上げてみます。なお難易度1はprimo、難易度2はsecond です。

曲名 作曲者 難易度1 難易度2 評価
フーガの技法 対位法 Ⅰ バッハ=ツェグレディ  16  14  A
               Ⅳ 同上  17  16  A
ソナタ Op.14-3 クレメンティ  20  19  A
変奏曲 Op.82-2 シューベルト  20  20  B
ロマンス Op.3-2 ウェーバー  13  14  B
ロンド Op.60-8 ウェーバー  18  19  A
子守歌 リスト  16  14  B
古いプロヴァンス地方のクリスマスの歌 リスト  15  13  B
ペトーフィの霊へ リスト  14  14  B
愛の歌 №6 ブラームス  15  12  A
     №9  ブラームス  11  12  A
     №10 ブラームス   8  10  B
     №11 ブラームス  15  13  A
ポロネーズ Op.55-3 モシュコフスキ  18  16  A

○フーガの技法  見た目よりは難しい。バッハの余り好きじゃない子にむしろ良いかもしれない。2ndを弾かしてやる手もある。Ⅰの方が分かりやすく、お勧め。Ⅰが気に入った生徒にはⅣも、という感じか。なおⅣ、私は8分音符はすべてレガートで良いと思う。

○ソナタ 良くできた連弾用ソナタ。1楽章が一番いいと思う。
1楽章 4小節目の8分音符はスタカートが良いと思う。繰り返しの直前のトリルは、註は6音になっている、5音でも良いが、両者が形を揃えること。Primo 4ページ6段1小節目16分音符、最後の2音を左で取ると良い。

 2楽章 中間部の主導権はsecondが取る。

 3楽章 音楽的には単純だが、ピタリと合わすのは最も困難かもしれない。

○変奏曲 若きシューベルトの作品であるが、ご承知のようにシューベルトには連弾曲は山ほどあって、その中では特に優れた作品であるとは思えない。なお、合わすのはそれほど難しくないと思う。

○ロマンス この曲集の中では最も易しい部類。リズム譜の読符に良いかもしれない

○ロンド 繰り返しはどちらも付けた方がいいと思う。手が重ならないようにという、連弾特有の指使いが見られる。

○子守歌 難しいのはFis durであるという点くらいか。(Fisの練習としては使える)

○古いプロヴァンス地方のクリスマスの歌 日本語としては「プロヴァンス地方の古いクリスマスの歌」もしくは「プロヴァンス地方のクリスマスの古い歌」の方がいい。ゆっくり弾けば易しい。

○ペトーフィの霊へ やや派手(派手に弾きこなすにはそこそこの力量はいる)。Aでも良いかもしれない。

○愛の歌 6 secondは易しいんですが、生徒どうしでさせるのなら、ぎりぎりでやらせるのは良くない(一般的に言って、secondの方がPrimoよりうまい人です)。最初の繰り返しは付ける。

○10 繰り返しは付ける。Primoの初めの形は、スラーの切れ目でいちいち離す必要はないが、手首(腕)の動きはスラーに揃える。

○11 あまり遅いとまずい。鋭角的に感じられる速さで。

○ポロネーズ これは良い曲です。second4ページ目1段4小節2拍目右、EはGの誤り(というか加線が一本落ちている)。

総合評価   A

 これくらいの(中級)レベルになると連弾はある意味、使う必要はなくなります、ということで大抵ソロばっかりになってしまう・・またソロだけでもいくらでも曲がある。

 しかしときおり連弾をやはり混ぜてみたいものです。生徒もソロをするときよりちょっぴりやる気が増える(のはうちだけではないと思います)。

 この曲集にあるものは、バッハを除いてオリジナル、しかも比較的珍しいものです。そして大半なかなか良い曲ですから、先生は持つべきですねえ。

 発表会あたりのお勧めは、クレメンティとモシュコフスキかな。

 難点をあえてあげるとすれば、先生も練習しなくちゃいけない、というところでしょうか(笑)。でもそれを嫌がってちゃ、おしめえよ(寅さん)。

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