あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 教本 

 

おとなのための ポピュラー・バイエル 1 遠藤容子編著   サーベル社

 これはは取り上げるべきかどうかちょっと迷ったものである。というのはこの本は中身を確かめずにカタログだけで「ポピュラー・バイエル」という書名につられて購入したものだからだ。購入してみて1巻ではこのシリーズの特色なり長所なり短所なりがよく解らないことが分かった。一巻だけの評価では正確さに欠くおそれがあるが、せっかく買ったのにという思いもあるので、全体像は不明であるという但し書きつきで、1巻の分析をすることにする。

○右手のトレーニング 

○左手のトレーニング ヘ音記号を導入している。音域はGからD。従ってCが2の指になるのが新工夫ともいえる。14番は「オーラリー」。

 以上各16曲

○CとGのコード・トレーニング

左手のコード練習が5曲ある、GCEとGHD。次いで両手の曲に入る。

番号 難易度 評価
 1   2  D
 2   2  D
 3   2  D
 4   2  C
 5   2  C
 6   2  C

1.バイエル(以下省略)8番の左手を和音に変えたもの。

2.同じく12番の改変。

3.同じく13番の改変(左はすべて和音、3,4小節目は連打)。

4.同じく14番の改変。(右メロディ、左和音)

5.同じく18番の改変。

6.同じく19番の改変。

 これらの改変が望ましいものであるかどうかは意見が分かれるだろう。つまり対位法的な側面が全くぬぐい去られてしまうからである。

○分散和音のトレーニング

 先に出てきた二つのコードの分散和音の練習が4つ。

番号 難易度 評価
 7   2  C
 8   2  D
 9   2  D
10   2  C
11   2  D
12   2  D
13   2  C
14   2  D
15   2  C
16   2  C

7.10番の改変。

8.9番の改変。

9.20番の改変。

10.21番の改変。

11.17番の改変。

12.23番の改変。

13.25番の改変。

14.24番の改変。

15.これは35番そのまま。

16.36番そのまま。

○スラーとタイ

 これ以前にも出てきていたが、ここでスラーの説明がある。タイと区別させる意味であろう。タイの練習が7つある。

番号 難易度 評価
17   2  D

17.29番の改変。音楽としては改悪であろう。

○左手のトレーニング

 CEGとHDGが登場する。左手の練習が7つ。

番号 難易度 評価
18   2  D
19   2  D
20   2  D
21   2  C
22   2  D
23   2  C

18.26番の改変。

19.28番の改変。

20.27番の改変。

21.31番の改変。

22.22番の改変。

23.30番そのまま。

○8分音符

リズムトレーニングが3題、両手のトレーニングが一つある。

番号 難易度 評価
24   2  D

24.44ばんそのまま。

○反復記号 

 普通の繰り返しと、1番かっこ2番かっこのある繰り返しの説明。

番号 難易度 評価
25   3  D

25.46番の改変。

○Fのコード・トレーニング

CFAとACFの二種類。5つの練習課題。

番号 難易度 評価
26   3  D 
27   3  C
28   3  D

26.49番の改変。

27.50番を易しくしたもの。

28.45番の改変。

○付点四分音符 

説明とリズム・トレーニング3つ。右手のトレーニング、左手のトレーニング各2題。

番号 難易度 評価
29   3  C
30   3  B
31   3  C

29.48番の改変。

30.これは48番そのまま。

31.61番をハ長調に変えて、さらに改変したもの。

○下の加線

トレーニングが5題。

番号 難易度 評価
32   3  C
33   3  C
34   3  C

32.47番そのまま。

33.58番の強弱に関する記号を取り除いたもの。

34.55番の強弱に関する記号を取り除いたもの。

 なお最後に「用語の説明」とあって速度記号と強弱記号が記されている。33と34の強弱記号を取り除いた意味が分からない。

総合評価        D

 最初に断ったように、この評価は暫定なものである。この教本にユニークな点、評価するべき点があるとするならば2巻以降にあると思われるからだ(全3巻)。

 最初にGCEとGHDのコードを練習させて、左手をそれで片づけてしまうというやりかたは、橋本晃一さんが「大人のためのポピュラーピアノ曲集」で使用している。私が知らないだけで他にも採用している本があるかもしれない。

 前書きに「将来ポピュラーの曲を弾く上で不必要と思われる部分は徹底的に削除しています」とある。その通りバイエルの中の数少ない対位法的な部分は全くなくなってしまった。

 対象が大人、趣味でポピュラー曲を弾きたい人のため、という限定本みたいなものだから、それでもいいのかもしれないが、根本的疑問を言えば、「なぜバイエルなの?」という一言に尽きる。

 大人の、趣味でポピュラー曲を弾きたい人の教則本というのはほとんど皆無だが(前記の橋本さんの本はそれに近いが、少し最初から難しすぎるかもしれない)、そういうものを作るのなら、それにふさわしい曲を選ぶ(もしくは作る)べきなのではなかろうか。ポピュラー音楽的要素の全くないバイエルの左手をコードに変えるだけというのはあまりにも安直な気がする。

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