あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 教本 

 

ピアノコスモス・シューレ 1 成田稔子編    全音楽譜出版社

ピアノコスモスでヒットを飛ばした成田稔子さんによるユニークな曲集。曲集というよりむしろ教本に分類すべきものかと思う。自作の曲はほとんどなく、 他人の、特に現代のロシアの作曲家の作品が多い。リクエストでは3巻からというご希望であったが、眺めてみて1巻から検討した方がこの本の 性格、編者の主張がよく理解できると思われるので、順番通りに検討させていただきます。イラストがカラーで、なかなかきれい。

番号 曲名 作曲者 難易度 評価
 1 かたつむり 小学唱歌  1  A
 2 おうま 松島つね  1  A
 3 魔法使いのおばあさん ソコローヴァ  1  C
 4 かっこう ソコローヴァ  1  C
 5 朝早く雪がどんどん降っている ソコローヴァ  1  C
 6 ソコローヴァ  1  C
 7 雪が舞い降りてくる ソコローヴァ  1  B
 8 大きな栗の木の下で 作曲者不詳  2  A
 9 おもちゃのマーチ 小田島樹人  2  A
10 夕暮れに ソコローヴァ  2  B
11 シャベルでホイ 中田喜直  2  A
12 こもりうた ソコローヴァ  2  B
13 もみの木の実 ソコローヴァ  2  B
14 とてもおもしろい夢 ソコローヴァ  2  C
15 ねこのお家を絵にかいた ソコローヴァ  2  C
16 ソコローヴァ  2  B
17 どんぐりころころ 梁田貞  2  A
18 じょうずに話せない ソコローヴァ  2  B
19 とても退屈な日 ソコローヴァ  2  C
20 すずめ ソコローヴァ  2  B
21 雪の中の小道 ソコローヴァ  2  B
22 ペチカをたいてよ、おかあさん ソコローヴァ  2  B
23 森に咲いてるスズラン ソコローヴァ  2  B
24 森の寒い日 ソコローヴァ  2  C
25 時計台の朝 しもまきやすこ  2  A
26 リストラータの歌 フレンニコフ  2  B
27 春よ来い 弘田龍太郎  2  A
28 アルファベット ソコローヴァ  2  C
29 魔法の庭 ソコローヴァ  2  B
30 小川のほとりで ソコローヴァ  2  B
31 SLは走るよ ソコローヴァ  2  B
32 いちごの葉かげの蛙くん ソコローヴァ  2  B
33 たんじょう日 ソコローヴァ  2  B
34 短かった一年間 ソコローヴァ  2  B
35 白い鴨たち ソコローヴァ  2  A
36 あかるいお月さま ソコローヴァ  2  B
37 こいぬのお散歩 作曲者不詳  3  D
38 水色のエチュード ヴォリファルト  2  C
39 小さな秋 アベレフ  3  B
40 デュエット リュバルスキー  3  A
41 手をたたきましょう 中田喜直  2  A
42 ふるさと カバレフスキー  3  A
43 ドニエプル川の流れ ウクライナ民謡  2  B
44 アレグロモデラート ビエルコーヴィチ  3  A
45 アンテューフィエフ  4  B
46 かわいい男の子 チェコ民謡  5  A
47 小さなソナチネ しもまきやすこ  5  C
48 マーチ ビエルコーヴィチ  5  B
49 小鳥の赤ちゃん シュッティ  5  B
50 春がきた 文部省唱歌  2  A
51 靴が鳴る 文部省唱歌  4  A
52 希望にもえて たけたにひかる  5  C

1.最初の楽譜は、先生が弾いて生徒に歌わせるもの。次の連弾二つが生徒の課題。primoで3の指、secondで2の指のノンレガート奏法を学ぶ。 音はCとG。鍵盤上の位置を学ぶ、譜面上の位置はまだ学ぶ必要はない。(こういうことは後ろの説明に細かく書いてある。先生は前もって必ず ここを読んでおくこと)

2.メロディをすべて3の指、すべて2の指で弾く。譜面上の位置を覚える必要はない。耳で覚えて鍵盤の位置だけ覚えろってことね。「おうま」 を知らない生徒のために、先生は他にも予備の曲を考えておく必要がある。「きらきらぼし」とか「ちょうちょう」とか

3.ここから読譜の作業。最初がC,D,F,G,C(二点)、少し多いんじゃないかねえ。他にfとテヌートの説明がいる。

4.これはE,F,G。3番より絶対やさしい。

5.ここからポジションの移動がない。4の指、5の指が出てくる。繰り返しと1番かっこ2番かっこ。

6.左手に2分音符の連続がある。編者の意図はノンレガート奏法だろうが、もしレガートで弾けるものなら弾かせてもいいと思う。A,Hが出てくる。

7.1の指が出てくる。二点D,E。

8.子どもに親しみやすい曲を、ということで入れてあるみたい。ノンレガート奏法をきちっとマスターしてないと、ポジションの移動があるので かなり難しい。この曲は子どもはまず知ってるから頑張るけど。

9.これはノンレガートで弾くのは、かえって難しいかも。8分音符とアクセント。ここまででト音記号の音がすべて出てきている(加線は まだ)。

10.タイ、フラットが出てくる。曲としても結構いい。

11.親しみやすい曲という意味で入っている。9と同じ感じ。ノンレガート奏法のまとめになる。

12.両手でかわりばんこのレガート奏法の練習。ある意味片手より難しい。ここまでで音をよく聞く習慣が付いているかどうか。

14.片手のレガートが出てくる。シャープも。

16.属音で終わっている。長い長い冬が終わる感じ。

17.ポジションの移動がかなり頻繁にあるが、片手。

18.フェルマータとスフォルツァンド。

19.同じことを4回繰り返す「とても退屈な日」。面白いと言えば面白いが、やはり、それほど面白いメロディでもないしねえ。かなりやさしい。

21.ハ長調の属音終止なのか、最後はト長調と考えるべきかは微妙かな。

22.イ短調。

23.美しい曲です、ロ短調。

24.ハ長調になったりハ短調になったり。

25.ここで初めて、ソコローヴァ以外の人の作品が出てきますが、これはなかなかいい曲。

26.2ページめ最終段の最初の指に注意。ハ長調で始まって、終わりはホ短調と見るべきか。

27.両手ユニゾン。

29.secondが入ると、いい雰囲気になる。

30.とても落ち着いて穏やかに。日本人は苦手かも。教える者がせかせかしているとだめ。

31.これは一転して早く。SLの力強さはsecondが表現すること。

32.スタカートの練習。

33.ニ長調。

34.3/8が出てくる。

35.secondが入るととても美しくなる。悲しく。

36.6/8。色々な表現の練習。スラーの初めにスタカートが付いている珍しい記号があるが、ミスプリではない。

37.何がいいのかよく解らない。作曲者不詳と言うほど皆が知ってる曲なのかな? 私は知らなかった。ここから先生の伴奏がなくなる。

38.前の曲とこの曲と、普通の教則本っぽくなる。

40.対位法。この本で学んできた生徒にはさほど困難でもないだろうが、他の教本で学んだ生徒にはかなり難しいかも。

41.ユニゾン。

42.カバレフスキーの連弾はほとんど紹介されていない。これは名曲。

44.これもとてもいい曲。ポジションの移動がかなり多いが、両手同時に弾く個所がないので、難易度3の範囲内でしょう。

45.左はクロスにせずに、ノンレガートで弾くのだろう。

49.かなり現代的。面白い。

50.連弾。付点四分音符。

51.これも付点四分の練習。

総合評価     A-

かなり迷いましたが、評価Aということにしておきます。

ただし、教師を選ぶ本です。前もっての研究は必須。

類書にない特徴として、ノンレガート奏法を最初に徹底的に仕込むという方式を採用していることです。そのノンレガートも両手交互という弾き方が当初はメインです、そしてテンポも遅く設定してあります。つまり一音一音腕を柔軟に使って音を出す習慣をつけさせることという編者の考えがあるものと思われます。

そして評価Aになった理由は、大半それにふさわしい曲が選ばれているということです。ソコローヴァという方の曲がメインですが機能和声の範疇ながら微妙に近代的味付けをし、一音一音の表情付けが大切であると子どもに気付かせる曲となっています。

必然的に、教師も、最初のうちは進度などは気にせずに、音楽表現に意を払うこと。子どもが「表現」というものを習得することの手助けを入門段階からきちっと行う、音楽に対しての本当の愛情というものが要求されます。

教えることがルーティンワークとなってしまっている先生はやめた方がいい。

ただ、かなり大きな欠点が二つあります。一つは、最初期の読譜に意を払っていない。未就学児は一挙に音が増えるのでかなり困難を覚えると思われる。

もう一つはかなり長く、片手だけの(両手の曲であっても一度に音を出すのはどちらかだけ)奏法の曲が続き、両手奏になると一気に難易度が上がると思われること。

そういうかなり大きな欠点を抱えているが、ピアノという楽器への導入の一つの新工夫を提示したものとして評価したい。

欠点については、教師が併用曲集その他でカバーすべきであろう。

トップへ戻る   1つ上に戻る

© 2015- 田所理央 ご意見・ご感想は t.masato@mathemarimo.bird.cx までお願いいたします。