あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 教本 

 

バスティン おとなのピアノ教本 2   東音企画

リング式の珍しい綴じ方になっている「おとなのピアノ教本」の2冊目。とても分厚く一冊に曲からテクニックから理論まで記されている。 まあ、でも大人はこれでいいのかもしれないと思う。

第1章 ト長調
曲名 作曲者 難易度 評価
セントルイスで会いましょう ミルズ  4  B
イーストリバーブギ    4  C
朝のブルース 民謡  4  B
ト長調のプレリュード    4  C
ヒイラギとツタ 英国キャロル  5  B
グリーグ  4  B
交響曲第五番 チャイコフスキー  4  A
踏車の上で    4  C
指広げの練習 ハノン  4  D
ミュゼット ル・クッペー  5  A

○セントルイスで会いましょう ハ長調、臨時記号が出てくる。14のクロス。

○イーストリバーブギ 終わりがやや唐突な感じもする。

○朝のブルース ここまでハ長調、臨時記号に十分慣らしておいて、ということか。

ト長調の説明と、練習がある。

○ト長調のプレリュード スケール練習に近い。

○ヒイラギとツタ メロディの受け渡しがある。

○朝 「みんなのオルガンピアノの本」の編曲の方がいい。大人といえども34の3度は避けたい。

○交響曲5番 原曲を知ってる方がいいでしょうね。

ここで、ト長調の音階のエチュードがある。

○踏車の上で これは単なるエチュード。

○指広げの練習 ハノンの1番。

○ミュゼット ABCの5番。アーティキュレーションを変えている。賛成はしがたいが、音楽としておかしくなっているわけではない。

第2章 ホ短調
ラフィング・ソング J.シュトラウス  4  A
スモーキーの嶺に 民謡  4  A
エジプトの輝き    4  B
ヨーク街ブルース    4  A
オーシャンビュー    5  A
夜明けの家 アメリカ民謡  5  B
シンコペーションのエチュード    3  D
ハローマイベイビー ハワード  5  A
さくら 日本民謡  4  A
ホ短調のエチュード    5  C
フランキーとジョニー 民謡  5  C

○ラフィングソング これは1章の復習でしょうかね。

○スモーキーの嶺に 分散和音が出る。

○エジプトの輝き ハ短調。

ここで、長3和音と短3和音の説明がある。

○ヨーク街ブルース 8分音符をジャズリズムにすると、よりそれっぽくなる。

○オーシャンビュー 大人用の佳曲。

ここでホ短調の和声的短音階と和音の説明がある。

○夜明けの家 一般に流布されているメロディーと少し異なる。

○シンコペーションのエチュード 純然たる練習。

○ハローマイベイビー それほどいい編曲でもないが。

○さくら 「さくら」をあくまで西洋音楽風に理解するとこういう伴奏になるという感じ。ちょっと違うなとは思うんですがね(笑)。

○ホ短調のエチュード 短調の反進行の音階は難しい。

○フランキーとジョニー Traditionalとあるが、私は初耳だなあ。

第3章 ヘ長調とニ短調
イ短調のプレリュード    4  B
スコットランドのバグパイプ スコットランド民謡  4  B
夏のつむじ風    4  A
メリーウィドウワルツ レハール  5  A
吟遊詩人の歌    4  B
エチュード グルリット  5  B
ジョー ターナー 民謡  5  B
ヴェニスの歌 イタリア曲  5  A
ワルツ ブラームス  5  A
指広げの練習 ハノン  5  D
やさしい調べ    5  B

最初に6/8の予備練習がある。

○イ短調のプレリュード 6/8の練習。D.Cの位置が誤解を招きやすい。

ヘ長調の音階と和音がある

○スコットランドのバグパイプ にぎやかに。

○夏のつむじ風 つむじ風というよりはさわやかな印象を受ける佳曲。

○メリーウィドウワルツ その昔いい編曲がヤマハから出ていた。

ここでニ短調の音階と和音がある。

○吟遊詩人の歌 ニ短調の練習。

○エチュード 手が小さいと難しい。大人用教本ならではかな。

○ジョー・ターナー ゆっくり目に弾くのがいいと思う。

○ヴェニスの歌 バスティンは「歌」の前奏に少しこだわりがあるような気がする。この曲は後奏まであるが、ない方がいいような気はする。

○ワルツ これはいい編曲。

○指広げの練習 ハノンの3番。

○やさしい調べ 19小節目の右は531、次を32の方が大人といえどもいいと思う。

第4章 三和音と転回形
曲名 作曲者 難易度 評価
故郷の人々 フォスター  3  A
陽気なラッパ 伝統的軍隊曲  5  C
すばらしき日没    5  C
秋風    5  A
スペインのフェスタ    5  A
バイユーブルース    5  B
メヌエット フック  4  C
タンゴ    5  B
海の霧 バスティン  6  B

○故郷の人々 ほとんどメロディーだけ。ヘ長調の復習ということか。

三和音と転回形の説明がある。

○陽気なラッパ 左手が和音の転回の練習になっている。

○すばらしき日没 転回ともいえないが和音の練習とペダルの練習かな。

長三和音と短三和音の説明がある。

三連符の説明と予備練習がある。

○秋風 ハリウッド風。これも大人向き教本ならではか。

○スペインのフェスタ 確かにスペインっぽい。

○メヌエット ポジションの移動はほとんどなく、易しい。

○タンゴ こういうタンゴもあるのか、微妙にタンゴっぽくないのか。

長三和音、短三和音、三連符の練習が4つ。

○海の霧 ペダルをマスターしているかどうかの試金石。

第5章 グループ2の調
曲名 作曲者 難易度 評価
チェイシングブルース    5  B
バーバラ アレン スコットランド民謡  5  B
博覧会見物    5  C
ミラノの鐘    4  C
全世界は彼の手に 黒人霊歌  4  A
アイススケート    4  C
メープルリーフラグ ジョプリン  5  A

○チェイシングブルース チェイシング(Chasing)=追跡する? ジャズでは別の意味のある隠語なんでしょうかね。

シャープの付く順序の説明があり、D、A、Eをグループ2の調としてひとくくりにして説明している。(真ん中が黒鍵であるという説明― これは少し苦しいと思う、EはD,Aと異なるし、それが同じだと強弁するならHだって真ん中が黒鍵であるといえる。)

次いで三つの調の予備練習があり、Dの音階と和音の練習がある。

○バーバラアレン メロディが左右を行ったり来たりしている。

○博覧会見物 ニ長調の練習曲。

○ミラノの鐘 三和音の第一転回形の説明があり、これはその練習曲。

○全世界は彼の手に これは有名かな。

ニ長調の音階と和音の練習曲が二つ。

○アイススケート これもニ長調の練習曲。

○メープルリーフラグ アメリカ人には日本の何倍も有名な曲なのであろう。

第6章 イ長調
曲名 作曲者 難易度 評価
思いをよせて    4  B
バルカローレ オッフェンバッハ  4  B
びっくり交響曲のテーマ ハイドン  5  A
皇帝の入場    5  B
ブルーソウル    4  C
フープを回そう    3  D
イ長調 音階のエチュード    4  C
ニ長調のカノン パッヘルベル  7  A

○思いをよせて ブルースっぽい曲。

イ長調の音階と和音がある。

○バルカローレ イ長調。これも前奏と後奏がいまいち。

16分音符の説明と練習がある。

○びっくり交響曲 これはいい編曲。

○皇帝の入場 3和音と音階の練習。

○ブルーソウル 装飾音の練習。装飾音の説明は「近代奏法」の場合の説明。厳密に言えば正しいとは言えないだろう。

○フープを回そう イ長調の分散和音の練習。

○イ長調音階のエチュード 一応曲らしく作ってはある。

○ニ長調のカノン これままさに「チャレンジ」。

第7章 ホ長調
ビッグスカイブギ    4  B
ブラジルのブギ    4  C
アイルランドの洗濯女 アイルランド民謡  5  A
第二転回形のエチュード    5  B
白鳥のワルツ    5  B
ヘ長調のエチュード ツェルニー  5  C
ホ長調 和音のエチュード    4  C
ホ長調 音階のエチュード    4  C
トルコ風ロンド モーツアルト  7  A

○ビッグスカイブギ スケールの練習に近い。

○ブラジルのブギ これもほとんど練習曲。

ホ長調の音階と和音の説明がある。

○アイルランドの洗濯女 ホ長調にしてあるのでこの段階ではやや特殊な指の運びがある。

○第二転回形のエチュード 響きが面白いといえば面白い。

○白鳥のワルツ 中間部が美しい。

○ヘ長調のエチュード テンポ次第で難易度は変わる。

○トルコ風ロンド 「トルコ行進曲」の簡易版。それでもチャレンジだねえ。

第8章 新しい音階と三和音
ミッドナイトエクスプレス    5  B
王宮を訪ねて バスティン  5  C
アラベスク ブルグミュラー  6  A
リンゴの木の陰で アルシュタイン  6  B
ハ長調のソナチネ ビール  5  B
主よ人の望みの喜びよ バッハ  6  A
プレリュード バッハ  8  A
セントルイスブルース ハンディ  7  B
同主調のエチュード    7  B
月光ソナタ ベートーヴェン  8  A

ハ長調とハ短調の音階が最初にある。

○ミッドナイトエクスプレス ハ長調とハ短調の練習でしょうねえ。

増三和音の練習がある。

○王宮を訪ねて 微妙に弾きにくい音型が出てきている。

○アラベスク 指使いが普通の版と異なるところがある。これでもいいと思う。

減三和音の練習がある。

○リンゴの木の陰で しみじみと。

○ソナチネ Op.57-1の2楽章。分かりやすい曲です。付点8分の練習。

○主よ人の望みの喜びよ 譜面面よりはずっと難しい。

○プレリュード BWV939。これはチャレンジですねえ。装飾音は実音で記されている。

○セントルイスブルース ゆっくりと。年輪を出すように弾くことかな。

○同主調のエチュード 面白いと思う人もいるかな。

○月光 調性はあまり変えてほしくない。正確なリズムはこの段階では無理だろう。付点は5:1にするのかな。

総合評価      B+

分厚い本なので、印象が散漫になりがちなのだが、評価Aという気はしない、かといって、見直してみると、まあそこそこの教本かなあと言う感じなので、B+ということになりました。

大人向きの本にしては、難易度4~5あたりでとどまりすぎという感がします。最終章でようやく少し難しいのがでますが、それまでは 理論的に新しいことは出ても、技術的にさほど難しくなっているという感じがないのです。普通の大人はもう少し進度を早くしてほしいんじゃないかなあ。

逆に言うと、かなり老齢の方、あるいは手が大きいだけでまだ小学生なんて生徒は、このままでいいのかも。

アメリカ系の教本らしく、ブギやらブルースやらが頻繁に出てきます。ただ、そういうのはほとんどバスティン作なのですが、一級品とも言えないような気がします。

この本を終えると、クラシックかポピュラーかお好きな方に進みなさいということになるのでしょうが、ちょっとまだ大作曲家の曲集などに進むのは無理がありすぎる。トンプソンの2か3あたりに移るんですかねえ。あるいはソナチネ&バロック。いずれにせよ、この先を考えるのが少し難しい本ではあります。

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