あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 教本 

 

すてきなきょくでたのしくひける ピアノひけるよ シニア3  橋本晃一編  ドレミ楽譜

 「ピアノひけるよ」というシリーズはジュニア編とシニア編があり、各3巻ずつ。全6巻終了するとブルグミュラー25に達する程度だという(本当だとしたら大分のんびりした教本である)。これはもう教則本という類の本です。1冊だけ検討するというのも少し妙だが、まあ大体のことは分かるでしょう。なお、またまた橋本晃一さんです

○説明 ニ長調の音階     ロ短調の音階     変ロ長調の音階     ト短調の音階 

     複付点4分音符     イ長調の音階     半音階     変ホ長調の音階

 どの説明もあっさりしている。理屈を言うのではなく、慣れさせるという感じ。短調の音階は3種類。複付点は付点の意味そのものを説明はしていない。半音階はドイツ式指使い。

 バイエルではお目にかからない調性もある、結構なことである。複付点を入れたのはやはりバイエルに呪縛されているのかなという気もする(複付点は滅多に出てこない、出てきたときに教師が説明すりゃいいと私は思っている。ここで説明しても、次に出てくるのは何年もあとで、子どもは大抵忘れてしまっているのだから)

曲名 作曲者 難易度 評価
ホフマンの舟唄 オッフェンバック  5
愛のロマンス 外国曲  6
ハバネラ ビゼー  6
山の魔王の宮殿にて グリーグ  7
フニクリ・フニクラ デンツァ  6
眠れる森の美女 チャイコフスキー  6
スクランブル交差点 橋本晃一  6
交響曲 第40番 モーツアルト  6
モルダウ スメタナ  6
ラデッキー行進曲   J.シュトラウス1世  6
ピアノ協奏曲 第21番 モーツアルト  5
アベ マリア グノー  7
プレリュード イ長調  ショパン  6
アメリカンパトロール ミーチャム  7
ジムノペディ №1 サティ  8
くまんばちのブギ リムスキーコルサコフ  6
ノクターン №2 ショパン  8
エンターテイナー ジョプリン  6
白鳥  サンサーンス  7
緑の風のトッカータ 橋本晃一  8 C 

○ホフマンの舟唄 繰り返しはつけること。ペダルがやや汚い。

○ハバネラ 最後の右手の指、5と1が逆さま。

○山の魔王の宮殿にて ロ短調は割と弾きにくい。最後の左手Fis,D,Hとあるが、Fis、E、Hのほうがよかったのでは?

○眠れる森の美女 左にメロディーです。

○ピアノ協奏曲21番、アベマリア 複付点に2曲費やしてます。協奏曲にトリルが出てきます。実音のみで記されているが、記号で書いて註として上に実音で記す方が親切なのではと思う。

○ジムノペディ 移調した理由が分からない。

○くまんばちのブギ この曲だけわざわざ橋本晃一編曲と書いてある。この本は全部そうでしょ。それとも他の奴は編曲ではなしに簡単にしただけ、これは完全な編曲という意味なのかな?

○白鳥 私の知る限りソロ用としては最上の編曲。

○緑の風のトッカータ たとえば6,7,8小節の空虚さが気になるのは私だけでしょうかね。Eの音にこだわりすぎて必要な音が欠けているのでは? 右で全部弾かせて左手を補うと良い曲になるような気はします、はるかに難しくなりますが。

総合評価   B

 教本としての評価です。

 曲集としての評価ならもう少し上でもいいという感じ。

 初心者用ピアノ教本に含まれるものは通常、曲及び理論的説明。その曲を3通りに分けるとテクニック養成用のもの、練習曲、楽曲の3つに分けることが出来ると思う。

 この本は理論的説明は極めて少ない。必要最小限度という感じ。最近流行のアメリカ系の教本は手取り足取り極めて懇切丁寧に説明してあるものもあるが、別にそうでなければならないわけでもない。教師がどちらを好むかというだけの問題。説明が少ない方が教師が自由に教えることが出来るという考え方もある。

 曲であるがこの本はスケールが各調にあるだけで、後はすべて楽曲である。これをどう判断するかでこの本の評価が分かれる。つまり先ほどの3通りの分類でいえば、テクニック養成及び練習曲が極端に少ないわけである。

 私の個人的考えであるが、そのこと自体は悪いことではない。というのは私はピアノ上達においてテクニック養成書の類(ハノン、ピッシュナその他)は必須であると思うが、練習曲は不要であると思って使用しない人間だからである(念のためにいうとそういう私の指導でも音大音高あるいはコンクールにちゃんと入学ないし入賞している)。

 そしてテクニック養成書が必要になるのは初心者用教本を終えたあと、ということで、この本が楽曲のみに偏っているということが、教本として不適切であるとは思わない。

 私が気になるのはこの本に含まれている楽曲自体の偏りである。つまりそのほとんどが編曲なのである。最初からピアノ用に作られたものと、他の楽器に作られたものを編曲したものとではやはり異なる。ピアノにはピアノという楽器に適したテクニックがあるからである。そういうものがふんだんに使われているとピアニスティックな曲だなという印象を受ける。その意味においてこの本でピアニスティックな曲は橋本さん自らが作られた二曲だけである。ピアノのテクニックを学ぶべきピアノ教本としては少なすぎるのではないかという若干の危惧が残る。

 もっとも、そういうことが問題になるのは初心者の域を脱してからである、と言うことも可能である。そう考えるのならばこの教本を終えてからピアニスティックなテクニックを仕込めばよいということで、この本の使用に何の問題もない。ただそこまで私としては断言できない。評価Bにとどめておく由縁である。

 曲はほとんどすべて名曲揃いである、編曲も例によって無難で安心できる。ただしこのシニア編3以前のものは、シニア向けとは言えないようなやや幼稚な曲もあったようである。

 このシリーズを終えてブルグミュラーに進むという著者の方針はそのまま肯うことが出来る。

 小学校中学年あたりからの入門教材という感じであろうか。

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