あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 教本 

 

江口寿子 ピアノの学校1     全音楽譜出版社

多くの著作を著している江口寿子さんの入門テキストです。江口さんははるか以前日音から「がんばれキャッツ」 という入門書を出していて、これがとてもよかったの(特に幼児向けの理論的説明が)ですが、すぐに絶版になってしまったことがあります。私はそのとき 日本のピアノの先生の意識はまだまだだなあ、と思ったものでした。なおシリーズに「おみみの学校」「リズムの学校」「おんぷの学校」「スケールの学校」があり、さらに「音楽の学校」が出るらしい。この「ピアノの学校」は 「主に音楽の仕組みを学ぶ」とある。

番号 曲名 作曲者 難易度 推薦
 1 ちからもち ドイツのうた  2  
 2 アン ドゥー トロワ 江口寿子  2
 3 おやすみ フランスのうた  2
 4 和音のエチュード 江口寿子  2  
 5 じょうずにひけました 江口寿子  2  
 6 メロディー 江口寿子  2  
 7 かめのワルツ 江口寿子  2  
 8 しちめんちょうがにげた アメリカのうた  2
 9 たいこ 江口寿子  2  
10 先生のおはなし ケーラー  3  
11 ゆうべに フランスのうた  3  
12 ぴょんぴょんダンス アメリカのうた  3
13 はしれこうま アメリカのうた  2  
14 こぐまのダンス 江口寿子  3  
15 和音をさがそう    2  
16 月のひかり フランスのうた  3  
17 おじいちゃん ケーラー  2  

最初に調号の説明があり、ハ長調、ト長調、ヘ長調が出てくる。

○1.D.Cとフィーネが出てくる。中央のCを両手の1指に置いたポジション。両手奏。これはつまりこのテキストは 入門テキストではないということであろう。(「おんぷの学校」がそれに当たるようである)

♯と♭の説明があり、問題が3ページある(調号も含めて)。

○2.同音の連打が少し気になるが(あまり速くひかさないほうがいい)、簡明で美しい。ト長調。

○3.スラーが出てくる。ヘ長調にしているがこの曲はヘ長調のポジションが3つの中では最も弾きにくい、わざとだろうか?  もう一つ、この曲は私の知っている限りでは最初の楽節は繰り返すのだが・・

ハ長調の和音としてドミソとファソを出している。シファソにしていないのは6度ポジションをこの段階では避けているからと思われる。 花の和音とちょうちょの和音という説明をしている。

○4.これは純然たるエチュード。

○5.これはまあなんということない。

音程の復習? がある。

○6.3拍子。スタカートが出てくる。

音程と指使いを関連付けた課題がある。初心者には重要。

○7.5~7まですべてドミソとファソの和音の練習。いずれも簡明。

○8.アーフタクト(アウフタクト)の説明がある。

音符の模様読みの課題がある(おそらく「おんぷの学校」に出てきていた課題の復習)。

○9.たいこ fとpをきちんと区別すること。

○10.右手に3度の連続がありやや難しい。ケーラーの練習曲から拾ってきたものと思われる。

加線の音符の説明がある。

○11.12のクロスがある。和音記号だけで音を省いているところがある(生徒に考えさせる)。

○12.これも和音記号だけの箇所あり。

加線と模様読みの課題がある。

○13.ヘ長調。やや弾きにくい。

○14.アクセントが出てくる。ト長調。

「ひびきあう和音」として、メロディーにふさわしい和音であるかどうかを決める課題がある。理屈ではなく 耳で聞いて決めるとある。

○15.これは和音を探す課題

○16.これも和音を探す課題になっている。

○17.ケーラーの練習曲。これも和音を探す課題。

総合評価   A-

何というか、狙いのはっきりした教本です。

「はじめに」に書かれている著者の狙いは①楽しく②易しく③自分らしく、ピアノを弾かせるということである。この巻を見た限りにおいては①と②はほぼ達成されている。③はこの巻ではまだ分からないということになる。

「易しく」に焦点を絞った教本としては、他に呉暁さんの「アキピアノ教本」があったが、それよりもおそらくこちらの方が子供は喜ぶ。曲自体もそうだが、塗り絵の出来るような漫画的な挿絵、易しく有益な課題等、こちらの方が一工夫 凝らされているという感じがする。

「楽しく」については、自作の曲は基本的和声進行の極めて単純な曲だが、あいだに耳なじみのあちこちの民謡を数多くひっぱって来ている。子供の興味をそぐことはないだろう。

この本独自のものとしては、伴奏和音を生徒に探させるというものがあるが極めて易しく、問題は生じないはずである。

欠点(と言えるかどうか)がないわけではない。特に新しいものの好きな先生にはお勧めできない。古典派の機能和声オンリーであって、いわゆる新しい響きの曲は全くない。この段階ではそんなものは不要と考えるならばこの本はすばらしい教材となろうし、入門段階から色々な響きを耳にさせてあげたいと考えるのならば、少なくともこの本単独ではまずいということになる。

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