あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 教本 

 

バスティン ピアノベーシックス  プリマーレベル     東音企画

さて、いよいよ近年日本でも評価の高いバスティンの検討に入ります。これまで副教材は何種類か検討してきましたが、 主教材である「バスティン ピアノ ベーシックス」の「ピアノ」のシリーズです。なお、ベーシックスには他に 「セオリー」と「パフォーマンス」「テクニック」がある。4冊併用するのが望ましいとある。まあ、それは何でも そうである。とりあえず併用しないとしてどれだけのものであるか、を調べてみよう。

最初に「すわりかた」「てのかたち」「ゆびのばんごう」の説明がある。

「ピアノのけんばん」の説明があり、右へ行くと「上がる」、左へ行くと「下がる」ことを教える。(これは案外 見過ごされていて重要)。二つの黒鍵のグループと三つの黒鍵のグループを知る。

「ひくいおととたかいおと」とあり、左の方が低い音、右のほうが高い音であることを教える(これも重要)。

「リズム」とあり、4分音符と2分音符、小節と縦線と終止線(複縦線)の説明があり、
○マーチ がある。二つの黒鍵を弾く。五線はなく音符の上下で判断する。左手用。

○ふうせんやさん 三つの黒鍵を使う。右手用。

○3びきのこぶた 三つの黒鍵で両手(同時ではない)。全音符が出てくる。

○メリーさんのひつじ 右手が三つの黒鍵と二つの黒鍵にまたがる。いきなりここまで弾かすのは珍しいが、 こういう曲はまず大丈夫。繰り返しが出てくる。これは☆

○マクドナルドおじさん 左手が三つの黒鍵と二つの黒鍵にまたがる。繰り返しをつけること。☆

ここで「おとのなまえ」が出てきて、ドレミファソラシを覚える。なお英語によるCDEFGABも記されているが ドイツ音名と異なるだけに、その処理をどうするかは微妙な問題である。私は通常はとりあえず無視するのだが、 バスティンの場合は五線が出てくるまでのしばらくの間、各音符に英語音名が記されているだけに教えざるをえない。

○のぼっておりて 音域C~G、まだ五線は出ない。レガートの説明がある。

○いもむしはいはい 上に同じ。

「ひょうしきごう」の説明があり ○きゅうこうれっしゃ 4分の2拍子。右手。

○おさるのてつぼう 同じく2拍子の左。

○にわのベル 4分の3拍子。付点二分音符が出てくる。

○じてんしゃにのって 三度音程が出てくる。五線はないが間隔が大きく開いているから分かる。

○うちゅうりょこう 4分の4拍子。

○たのしいサーカス 上に同じ。

ここで「おさらい」として簡単な楽典の問題がある。

「ふひょうとおんぶきごう」として五線とト音きごう、ヘ音きごうの説明がある。

「おんぷのうごきかた」として、五線上における二度進行、三度進行、同音進行の説明がある。

○Cメージャーのうた ○スキップのうた ○おなじおと それぞれ右手による二度、三度、同音進行の例。

○ローディおばさんたいへんだ 総合練習、☆

「おんぷのぼうのつけかた」の説明があり、左手の二度、三度、同音進行の例として
○スケートボード ○ジェットコースター ○ボートあそび

○よろこびのうた 左手の総合練習。☆

○Cメージャーのじゅんびうんどう 「だいふひょう」が出てくる。ポジションはこれまでと同じく右手が一点ハ~ト、 左がハ~ト。まだ両手同時奏ではない。

○おおきなこえとちいさなこえ fとpが出てくる。

○2るいへとうるい 二度の説明がある。

○かえるのスキップ 三度の説明がある。

○たのしいハロウィーン スラーとフレーズの説明がある。ドーリア旋法。

○ノアのはこぶね タイが出てくる。

○4人のゆかいなピエロ 4度音程が出てくる。音域はおなじだがヘ長調。

○ブギ これは特に伴奏の必要がある。リズムを明確にしないとブギにならない。ヘ長調。☆

○5ひきのりょうけん 5度音程の説明がある。

○インディアンのたいこ 旋律的音程と和声的音程の説明があり、左手に5度の重音が出る。

○パソコンのうた 全休符と四分休符が出てくる。両手同時奏に入る。

○Cのわおん 曲というよりは和音と分散和音の練習というか確認。ただ4歳以下くらいの子は3和音を弾くのに 非常な困難を覚える場合がある。その場合はバスティンは止めたほうが良い。

○ロー、ロー、ローユアボート ここから難易度2。☆

○だれかさんがすき ここまでの総合練習かな。

○ミドルCのじゅんびうんどう 左手のポジションが1指を中央のドに置いたものに変わる。

○ぼくはちいさなティーポット ト長調。

○たのしいたんじょうび 八分音符が出てくる。割と早い導入である。難易度1。

○ルーとあそぼう アメリカ民謡ですな。難易度1。☆

○おかしなふとっちょゆきだるま 臨時記号のシャープが出てくる。ト長調。

○ラベンダーブルー ちょっと曲らしくなる。ト長調。難易度2。

○オーラリー これは有名。☆。

○スカボローフェア これは民謡だが、私の知るメロディーと一部異なる。ドーリア旋法。

○Gメージャーのじゅんびうんどう 右手が一点ト~二点ニ、左は2オクターブ下。しばらくこのポジション。

○おんぼろぐるま 右手が3和音の伴奏、左がメロディ。

○かんしゃさいのしちめんちょう 調子よく弾く。

○うたうろばさん 臨時記号は小節内では有効ということを教える。スラーの切れ目で切ることを教えるんでしょうね。

○ふりこどけい スタカートの練習。難易度1。

○バスケットボール これも同じくスタカートの練習。難易度は2。

○ベースギター フラットが出てくる。ポジションの移動がある。

○ドラゴンのほらあな mysteriouslyを「あやしげに」と訳しているのは良い。真ん中が「あやしげな」箇所。

○インディアンのおどり ト短調。☆。

○ジングルベル 困難であれば、あるいは手が硬直するようなら、八分音符の連打の箇所を四分音符に修正しても 良いと思う。☆。

最後に「おさらい」があり、楽典の復習がある。

総合評価   B-

入門書としては、まあまあという評価。

この難易度ではオリジナルのもので良い曲はめったに見られない。それはバスティンも同じであった。民謡などをうまく散りばめていて、子供が嫌気をささない程度には、耳になじみのメロディーが時々入ってくる。まあ、選曲に関しては他の教本に比べて特に劣っていることも特に優れていることもない。

気になる点は三つ。一つは同一ポジションの曲がしばらく続くので、指の番号と音の固定化(1指はドと思い込んでしまうこと)の危険性が少しある。(導入が黒鍵なのでバイエルなどに比べると少ない)

もう一つは、新しいポジションのときに一度に大量の新しい音が出てくる。カード類を使えという指示があるが、そういう類の対策をとらないと、普通の子供はまず確実に読譜でついてこれない。

最後に幼児用の入門書だが3和音の導入が極めて早い。重音は幼児でも楽に弾けるが、3和音は子供の肉体的条件によりある程度ピアノになれていない段階では、非常に苦労する子供もいる。体が硬そうな子供にはこの本の使用は避けたほうが良いかもしれない。

最初に5線を使わない導入法というのは、数十年前、心理学的に見て極めて良い方法であると賞賛されたもの。アメリカ系教本に多い。今となれば絶賛するほどのものでもないと思うが、教師は一通りこの手の教本の導入法についても熟知しておく必要はあるだろう。

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