あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 教本 

 

スオミ・ピアノ・スクール 3 

     著者 リトヴァ・レヒテラ/アニヤ・サーリ/エーヴァ・サルマント-ネウヴォネン

           訳編 坂井百合子 久保春代       ヤマハ

スオミの最終巻です。私の入手したものが1997年発行の初版です、ということは7年にわたって売れていなかった、 さすがに3巻までこの本を使い続けている先生は少ないということでしょうか。

曲名 作曲者 難易度 推薦
おばあさんの時代のメヌエット ハンニカイネン  9  
練習曲 デーリング 10  
ないしょ話 Op.109-1 ブルグミュラー 11  
ジプシーの踊り Op.118-3 シューマン 11  
笛吹き奴のかくれんぼ 三善晃 10  
グノシェンヌ第3番 サティ 10
ブーレ テレマン 10  
ムソルグスキー 10
二つのワルツ ブラームス 12,9
高貴なワルツ Op.77-9 シューベルト 12
練習曲 スラヴィッキー 13  
ガボット ショスタコーヴィッチ 10  
舟歌 メリカント 11
ジーグ バッハ 12  
前奏曲 BWV935 バッハ 13
むちゃな追跡 トゥオメラ 10  
ピアノのための小品 №2 リスト 11  
道化師の踊り マルティヌー 11
ポロネーズ ショパン 11  
ワルツ ショパン 12
春がすみ パルムグレン 12  
ソナタ HobⅩⅥ/G1 ハイドン 11  
練習曲 スラヴィッキー 12
練習曲 チェルニー 13  
闘牛士の祈り デロ・ジョイオ 10
マラゲーニャ アルベニス 14
子供のための小品 ウェーベルン 15  
スイングするきりぎりす カープ編 10
ソナタ K.2 スカルラッティ 14  
バガテル Op.33-2 ベートーヴェン 15
練習曲 Op.45-15 へラー 15
カーニバル  カンターラ    
しずく      
六月 クオスマ 12
忘れられし時 サ-マント 14
アレグロ スケルツァンド Op.3-6 グリーグ 16  
主題と変奏 シューマン 13
小さな羊飼い ドビュッシー 13
7つの小品 №3 コダーイ 12
蝶々 エドグレン 15  
子供らしい小品 Op.76-8 シベリウス 13  

最初に「復習」があり、2巻までに出てきたテクニックやら記号やらをどれだけ覚えているかの確認が出来る

○おばあさんの時代のメヌエット こんな題名をつけているのはもちろん現代の作曲家。書法は一応古典派です。

「練習」として装飾音と重音の練習方法が記されている、有益。続いていくつかの体操が載っている。

○練習曲 純然たる右手の練習曲。当然速さによって難易度は大きく異なる。

○ないしょ話 25の練習曲ほどには使われていない18の練習曲の1番。

○ジプシーの踊り 子どものためのソナタ3番の3楽章。速いパッセージを記譜どおりに弾くことは至難、 付点を外さざるを得ないだろう。

○笛吹き奴のかくれんぼ 「海の日記帳」にある。特に中間部はいやらしく弾きにくい。

○グノシェンヌ サティがありますね。三善晃といいサティといいこの先のブラームス、シューベルト、以前定めた難易度がぴたりこの教本のここら辺に適合 しているのにちょっぴり自画自賛しておきます。

○ブーレ 出だしの右のアーティキュレーションに悩むが、私はアウフタクトから三回引っ掛けるスラーで良いと思う。 (正反対も可能ではある)

○涙 手が小さいと難易度が1か2プラスされる。というかオクターブが届かない生徒には使用しないほうがいい。 ペダルをたっぷり使う。

○二つのワルツ かの有名なワルツ集の15番と1番。

○高貴なワルツ 手が小さい人はやめた方がいい。

○練習曲 前半複調、やや思いつきだけかと思ったが後半はそうでもなく、杞憂であった。

○ガボット ショスタコーヴィッチの作品でこれをもってきましたか、フーンという感じ。

○舟歌 譜読みはらくだが、手が小さいととても難しくなる。

「展覧会にて」と題された即興演奏の練習がある。

減7のアルペジオの練習がある。

○ジーグ これはどこから採ってきたのでしょうかね。

○前奏曲 原典ですね。自分でフレージングを考える必要あり。

○むちゃな追跡 現代作品。二通りの終わり方が用意されている。

○ピアノのための小品 最後に唐突にdurに戻る気がする。4段目最後の小節の左Esの加線が落ちている。

○道化師の踊り マルティヌーの作品はまとまっては紹介されていないだろう。これは気まぐれで面白い佳品。

○ポロネーズ ショパン最初のポロネーズ。結構よく弾かれる。

○ワルツ これはショパン30歳の年の佳品。

○春がすみ ややエチュードっぽい。

「ソナタ」についての簡単な説明がある。

○ソナタ ハイドンの初期のソナタ。なぜこれを選んだのかは不明。

○練習曲 長7度を偏愛した奇妙な美しさのある佳品。

○練習曲 8小節の練習曲の105番。これはもう速さによって全然難易度が異なる。そもそものチェルニーの意図としては、 曲順から察するに少なくとも18程度の難易度を想定していたと思われるが、スオミの編者はチェルニーよりずっと遅いスピードを想定して いるのであろう。ここに記す難易度は♪=120程度の遅いスピードのものである。なおOp.82とあるが821の誤りと思われる。

○闘牛士の祈り メロディーが左右を行ったりきたりしている。易しいがしみじみと祈りをこめて。

○マラゲーニャ 「組曲スペイン」より。

○子供のための小品 ウェーベルンの死後発見された曲。何回繰り返してもいい。

○スイングするきりぎりす 「ポリ・ウォリ・ドゥードル」をジャズに編曲したもの。面白い連弾。secondは11くらい。

○ソナタ こういうのも速さによって相当難易度が変わる。文字通りprestoで弾こうとすれば大分難しくなる。

○バガテル 3度の音階は難しい。

○練習曲 へラーの練習曲は結局日本では絶版になったが、欧米ではよく使われているようである。これは跳躍と 和音の把握の練習だろうが、音楽としても良い。

「和音記号のジャングルへの近道」としてコードネームの説明がある。クラシック系教本では珍しい。

○カーニバル 記譜されているものは易しいが、これは即興の練習をしないとほとんど意味が無い。

○しずく これも即興の練習。

○六月 音による自然描写。難易度をつけるのは難しい。極めて自由に、ほとんど即興的に弾くこと。

○忘れられし時 これは結構本格的なジャズです。後半突然易しくなって初心者向けのジャズになる。

○アレグロ・スケルツァンド グリーグは叙情小曲集以外にもたくさんのピアノ曲を残している。

○主題と変奏 「子供のためのソナタ」1番の2楽章。ロマン派の短い変奏曲として有益。

○小さな羊飼い これも極めて自由に弾くこと。

○7つの小品 メトロノーム表示の数字が188-144となっているが、188は何かの間違いだろうと思う。 88か108と考えられそう。譜面は易しいし、ゆっくり弾けば問題ないが、100以上の速さになってくると 跳躍が結構難しくなってくる。独特の雰囲気のある曲。

○蝶々 最初の小さく書かれた一段は、本編の加線の楽譜が読みにくいので、こういう音だよと教えてくれているものと思われる。 結構弾きにくい。

○子供らしい小品 最後はフィンランドの教本らしくシベリウスで締めました。

総合評価   A

最終巻で最も高い評価を得た。

一つの理由は、これまで減点の理由であった手の小さい子にはきつい、という項目が、この巻くらいになるとそもそもあまり小さい子は対象外であるということで、減点の理由にならなくなったということがある。

もちろん積極的な理由もある。この巻は大体中級の初めくらいのレベルだが(ソナチネの終わりからソナタの初め)このくらいのレベルの併用曲集が最も数が少ないのである。普通の先生だと、結局古典派の易しいソナタしか選択肢がないに近い。近年出ている数多くの曲集はほとんどが初級、まれにこれくらいの難易度もあるが、なかなか一般の使用に耐える、あるいは一冊まるまる使用してみようという本が無い。これはそういう意味で、先生方の需要に応える本であるといえる。

こういう感じの使える本としては、トンプソンの4、5巻がこれまでにあった。ただあちらは選曲がロマン派に偏りすぎている嫌いがある。これはそういうことが無く各時代から満遍なく選ばれ、しかもあまりお目にかからない佳品がそこそこある。ということでソナチネ終わりくらいの生徒でソナタの前に力をつけたい、あるいは急ぐことも無いのでちょっと寄り道をして力をつけたい、あるいは能力のある子で、ソナタと併用して、という使い方が考えられる。

即興課題だけは、この本を最初から使用していないと難しい可能性が高い。飛ばしてもいいだろう。

純然たるクラシックの教本であるが、現代に足を踏み入れているだけに、ジャズも収録されている。間口が広いと言えよう。

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