あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 教本 

 

湯山昭ピアノメソード ピアノの宇宙 1 音が生まれる~星になる~  全音楽譜出版社

さて、湯山昭ピアノメソードの一巻です。3巻ではこのレベルで一人の特色ある作曲家の作品だけを弾くというのは? というクエスチョンが付きましたが、1巻ではもちろんそういう疑問は付かないでしょう。検討してみます。

番号 曲名 難易度 推薦
 1 ピアノはともだち  1  
 2 みぎてとひだりて  1  
 3 ピアノはくじら  1  
 4 ピアノとあそぼう  1  
 5 きれいなひびき  1  
 6 ひびくよフォルテ  1  
 7 ワルツのリズムで  1  
 8 ワルツゆれる  1  
 9 そよかぜのワルツ  1  
10 ピアノはうたう  1  
11 あつまれおんぷ!  1  
12 このゆびみてね  1  
13 おるすばん  1
14 そよ風のリボン  1
15 赤いトーシューズ  1
16 スラーとスタッカート  1  
17 さようなら Ⅰ  1  
18 ぼくのこいぬ  2  
19 ちいさな風  2  
20 鏡とおはなし  2  
21 エアロビクス  2  
22 うたうカナリヤ  2  
23 野いちご  2  
24 たのしいユニゾン  3  
25 ひびけ・トンネル・オクターヴ  3  
26 虹のハーモニー  3  
27 かがやけ 虹のハーモニー  3  
28 ピアノはこだまする    
29 わたしのピアノがこだまする  2  
30 トーンクラスター・マーチ    
31 バイエル先生 こんにちは  3  
32 主題と変奏  4
33 わたしとかげ  4  
34 ぼくと山びこ  4  
35 ホモフォニーとポリフォニー  4  
36 祭りの笛  4
37 さようなら Ⅱ  3  
38 まわるかげ絵  2  
39 なかよしワルツ  4  
40 スタッカート・マーチ  4  
41 ふたりでレガート  4  
42 空まで響けバグパイプ Ⅰ  5  
43 手をつなごう  4
44 手をつなごうマーチ  5  
45 アルペンホルンがこだまする  4  
46 空まで響けバグパイプ Ⅱ  4  
47 アンプロンプチュ  4  
48 アウフタクト・ワルツ  5  
49 少年アルベルティ  4  
50 ハ調のロマンス  5  
51 ペガサス  5  
52 フラットおりたらすてきな気分  5
53 まってたやくそく  5  
54 ちょうちょのバレエ  5
55 回転木馬  6  
56 シャープペンシル五線をのぼる  6  
57 お花がわらう  5

最初に「レッスンを始める前に」という説明があり、対象年齢が相当大きいことがわかる。(適切な説明があれば 5,6歳から可能、とはされている)

最初№1~№11は「ハ音の連打」ですべて中央のC、先生の連弾があり、リズムの変化のみ。ユニークといえばユニークだが これは一人で練習する分には何にも面白くない。

1.四分音符のみ。

2.四分休符がでる。

3.四分休符が頻繁に出る。

4.手の交替が頻繁にある。

5.全部二分音符。

6.二分音符と四分音符。fは説明にはあるが譜面には出てこない。

7.4分の3拍子。付点二分音符が出る。

8.タイが出てくる。ちょっと特殊な記譜法で入門段階でこう記すことに疑問を持つ人はいるだろう。

9.3拍目に四分休符。

10.全音符が出てくる。一番カッコ、二番カッコ、繰り返しが出てくる。

11.ここまでの総合練習。これでやっと全部Cというユニークな(信じられない)曲の羅列がおしまい。 これはまあ大人だから我慢できるという感じ。

12.ここから№16まで「ひとつのメロディー」として括られている。音域、中央のドを中心にラ~ミ。 mfとfが出てくる。

13.3拍子。短三和音をうまく使ってニュアンス豊かにしている。スラーが出てくる。

14.これも上記に同じ。松葉のクレシェンドとデクレシェンド、pが出てくる。音域が左ソから右ファに拡大。

15.ヘ長調。音域が左のファから右のソに拡大。mpが出てくる。これも3拍子。ここら辺いい曲が並んでいるが、 進度的には大分早い。

ここでアーティキュレーションの説明がある。

16.スタカートが出てくる。シンコペも出てくる。

17.ここから№25までが「モノフォニーからポリフォニーへの準備」として括られている。最後に両手の並進行がある。 イ短調。2声体、並進行、斜進行、反進行、ユニゾンの説明がある。

18.斜進行。

19.ピカルディの3度を使っている。

20.反進行。4曲ある。二点ハ~ト登場。

21.ちょっと曲らしくなる。

22.ユニゾン。

23.3拍子。これもユニゾンだが22よりよほど音楽になっている。

24.音域がハから2点ハまで。ポジションの移動あり。

25.24の右手を1オクターブ上げたもの。加線が出る。

「ホモフォニーのはなし」として音階と和音についての説明がある。

26.前項の和音の説明を音楽に当てはめたという感じ。6度ポジションがある。

27.26の左右を入れ替えたもの。

28.ここから№35まで「ピアノの魅力」として括られている。まず「倍音とトーンクラスター」で3曲。 これは合わせて初めて理解できる曲で、家庭で練習してくる曲ではない。難易度はちょっとつけがたい。

倍音についての説明がある。

29.これは一応練習できるが、これも合わさないと意味がわからない。

30.トーンクラスター、最後は腕全体で。これはリズムだけ。ほとんどお遊び。ppとffが出る。allargandoが出る。

31.これは「奏法とアーティキュレーション」。8小節のバイエル的楽曲を調を変えて、アーティキュレーションを変えて、伴奏形を変えて弾かせている。

32.これは「主題と変奏」曲名そのままですな。やっと湯山さんらしい曲です。ちと難しいが。

33.aは普通の伴奏、bはカノン。当然bが難しい。

34.33に同じ。

35.これも上二つに同じ。

36.ここから最後まで「広がるピアノの世界」として括られている。38までが「日本のメロディーと短音階」。 ト音記号の下部加線が出る。日本的、準推薦。

37.17番を2声体にしたもの。保持音が出る。

38.久しぶりの連弾。易しいがしみじみと、準推薦。

39.ここから3曲「協和音によるきれいな響き」とある。3度のレガート、6度のレガートがある。湯山さんぽい。

40.連弾。primoもsecondも練習することとある。難易度は同じ。

41.9~10小節から察するに、スラーの切れ目は離すのだろうが、そうすると冒頭はどうも不自然になる。 ちょっとたどたどしく弾くのでしょうかね。

42.ここから46まで「保持音・同音連打・倍音による不思議な響き」。これは保持音の練習、Cは相当 難しい。

43.同音連打だが速くはない、指換えをさせているが、この速さなら不要という考え方もある。曲はさわやかできれい。

44.43の変奏。これは速いので指変えの必要あり、ということはやはり43番も指変えなんでしょうね。

45.倍音を使った曲。どちらかというと知的に理解するという感じ。

46.ほとんど保持音の練習曲。

47.ちょっとユニークかな。

48.アウフタクトの説明がある。オクターブポジションがある。

49.前曲もそうだがアルベルティバスの変化が多く、見た目よりは難しい。

50.ペダルを始めて使用。

51.これは手が小さいと少し苦しい。

52.ここから最後までが「3声体から4声体~ピアノ星座めざして」。臨時記号初登場。これはずいぶん遅い。こういうちょっと都会っぽい曲は湯山さんの本領発揮。

53.これは繰り返した方がいいだろう。準推薦。

54.やや即興的。曲名にふさわしいか。

55.4声を厳密に正確に弾くのは難しい。

56.半音的進行の練習っぽい。

57.名曲「お花がわらった」を連弾にしたもの。さすがに良い。

総合評価   B-

たいていの教本は子供用、最近大人向けの教本はちょくちょく見かけます。思春期あたりの子どもに焦点を絞ったピアノ教本は珍しいといえましょう。

ユニークな点は最初の11曲がCのみでリズム練習ということ。ハーモニクスやトーンクラスターの現代の技法が使われていること。臨時記号の導入が遅いこと、などでしょうか。

「教本」にありがちな純然たる指の練習を避けて、すべて曲の体裁をとっています。

ただ、肝心のその曲が、やはりこの難易度ではさほど魅力のあるものにならない(後半平均点が上がりますが)。それと、にもかかわらず、やはり湯山さんの匂いというものが漂っていて、それは入門書として決してプラスに作用はしていない と思われます。

知的な理解を優先させるような子ども、つまり思春期あたりの頭の良い生徒には向いている可能性がある。 一般向きとしては、どうであろうか。

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