あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 教本 

 

アルフレッド・ピアノライブラリー 基礎コース レッスンブック レベル1A

             W.A.パーマー/M.マニュス/A.V.レスコー編著 田村智子訳 全音楽譜出版社

その昔、パイパーズという出版社から出ていた「アルフレッドピアノ教本」は私の知る中でも最上の入門者用ピアノ教本の一つであった。それがまるっきり新しく生まれ変わって、全音から1998年に出版された。改訂というのではない。ほとんどすべて新しい曲である(旧版にいくつもあった珠玉の名曲を復活させてほしいと思うのだが)。期待通りのものか、期待はずれに終わるか、検討してみよう。

最初に姿勢、次に指番号。次にピアノの音を出す仕組みに触れ、音の強さのコントロールに触れている

次に鍵盤の説明と「上がる」「下がる」の説明。

次に4分音符の説明と、23指で黒鍵だけで1曲。5線を使わずに視覚的に「上がる」「下がる」を示している。

次に2分音符の説明と、234指で黒鍵だけで1曲

曲名 難易度 評価
メリーさんのボート  1  A
ハンドベル  1  B
サンタのおじさん  1  B
マグドナルドおじさん  1  A
いっしょに遊ぼう  1  C
おりこうワンちゃん  1  C
動物園  1  C
ボートのり  1  B
ローラースケート  1  C
まほうの井戸  1  B
雨やんでよ  1  C
ハッピーソング  1  C
シーソー  1  C
ちょっとまって  1  D
気球  1  B
サードはだーれ  1  B
メキシカンハットのダンス  1  B
ロックソング  1  C
ロケット  2  C
海の探検  2  C
4度弾こう  1  B
7月4日と4度  1  B
おじいちゃん  2  C
誰かさんが好き  2  C
運命の5度  1  C
ロバのかっこうしたカッコウ  2  C
ジングルベル  2  A
好きな物  2  B
ともだち  2  B
ぼくのロボット  2  B
ロックンロール  2  B
インディアンソング  2  A
ポッツンザッザッ  1  C
ハロウィン  2  B
馬カン  2  B

○メリーさんのボート 「メリーさんの羊」を黒鍵で弾く(ミソソのところをミミミにしている)。全音符の説明。

○ハンドベル pとfの説明。繰り返し登場。

○サンタのおじさん 黒鍵だけでそこそこの曲を弾かしている。

○マグドナルドおじさん 「ドナルドおじさん」ですな。これも黒鍵だけでうまくいく。

「音の効果」として、同じ音をオクターブずつ上げていって、その違いを確かめさせる。

白鍵が出てくる。音名は英語読み、アメリカ系教本はこれだけが少しまずい(無視してドレミで教えること)。

○いっしょに遊ぼう 中央のドを中心にラ~ミまで。

○おりこうワンちゃん 同じくソ~ファまで。4分の4拍子の説明。

○動物園 同じくファ~ソまで。新しい音の登場が早すぎると思われるだろうが、5線を使っていないので鍵盤上で識別できればいい、 ということで、たぶんOK。

「新しいポジション」として、左手を右手の1オクターブ下にしている。

○ボートのり 4分の3拍子、付点2分音符の説明。

○まほうの井戸 3拍子に良くあるリズムパターンの練習。

ここで5線の説明がある。

ヘ音記号の説明があって ○雨やんでよ C~Fまで。

ト音記号の説明があって ○ハッピーソング C~Gまで。

大譜表の説明がある。

レガートの説明があるが、これまでも多くの曲は普通弾けばレガートになっていたと思う。

○シーソー スラーの説明がある。

2度音程の説明があって ○ちょっとまって これは純粋に2度を覚えるためのもの。

○気球 タイが出てくる。ニ短調。

三度音程の説明があって ○サードはだーれ これは日本人でも分かる駄洒落。

○メキシカンハットのダンス ここら辺を見ると、極めてオーソドクスな教本だと思う。

和声の音程と旋律の音程についての説明。

○ロックソング 四分休符登場。

○ロケット 重音の登場。

○海の探検 前曲の左右をひっくり返したようなもの。

○4度弾こう 曲としても良いメロディー。

○7月4日と4度 この題名の意味は日本人には分からない。

○おじいちゃん ややバイエル的。

○誰かさんが好き 全休符が出てくる。

○運命の5度 この題名にはすごい違和感がある(運命は3度だ!)。

○ロバのかっこうしたカッコウ 微妙に流布されているものとメロディーが異なる。

ポジションが変わる。右手が一点トから二点ニ、左は2オクターブ下。

○ジングルベル 最も簡単な伴奏だろう。

○好きな物 アウフタクト。

○ともだち 二分休符が出てくる。

○ぼくのロボット シャープが出てくる。

○ロックンロール フラットが出てくる。

○インディアンソング 5度の連続あり。

○ポッツンザッザッ スタカート登場。

○ハロウィン crescとdimが出てくる。「山の魔王の宮殿にて」のもじり。

○馬カン 総合練習。

総合評価   B

特色としては、最初に5線を使わないで、視覚的な上下の関係を見て鍵盤を弾かせるというやり方をとっている。最近のアメリカ系教本で良くあるやり方である。利点としては、子どもにとって大変なことである5線を読むという作業を2つの段階に分けたということで、一度にかかる負担が少なくなっている。ただし教師がそこを良く理解して、音の上下に意を払わせること、そして5線に移った当座も音の上下の動きに意を払わせること。それをしないとほとんど無意味になる。

で、できばえだが、とりあえず旧版より曲数が増えている、しかしこの段階で増やされた曲に大したものがないのはまあ決まってますわな。明らかに良くないのは、旧版は歌詞の翻訳が見事であった、アウフタクトは日本語でもアウフタクトになるように非常に注意深く訳されていた。この新版はまあほとんど直訳に近いのだろう(旧版が他に例を見ない素晴らしいものであって、他のアメリカ系の訳と大して変わらない水準に落ちたということで、他より悪くなったわけではない)。

導入書だけあって、なかなか音楽として良いものは少ない。これはどの教本についても言えることであるが旧版のほうがこの点でももう少し耳になじんだメロディーを多数含んでいたと思う。

挿絵が、アメリカのコミック作家だろうと思うが、私は日本人の漫画家、もしくは画家の方がうまいと思う。

この巻だけでは、他のアメリカ系教本を大して差はないと言える。次の巻以降でどうなるかである。

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