あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 教本 

 

スオミ・ピアノ・スクール 音楽への旅立ち

       著者 リトヴァ・レヒテラ/アニヤ・サーリ/エーヴァ・サルマント-ネウヴォネン

              監修 館野泉  訳・編 坂井百合子 久保春代          ヤマハ

フィンランドのピアノ教則本が日本に翻訳されている。<スオミ・ピアノ・スクール>である。「スオミ」とは 「フィンランド」という意味である。これが導入書、次が1巻になる。96年初版、2004年で第7版ということは まだあまり普及はしていないが、それなりにファンはいるのかな、というところか。検討してみましょう。

前書きがあり、(先生は読んでおくこと)、音楽的創造力を最大限に引き出すことを目的とした本である、と書かれている。 4,5歳から使うに適した教本である、とも。また館野さんの言葉は、先生方への指導法のヒントになるであろう。

導入として、黒鍵だけの自由演奏が3題、「のぼるよトントン」が四種類、知っている歌を自由に弾かすで 「あそびましょ」と「ぶんぶんぶん」と「ジングルベル」と「メリーさんのひつじ」と、「チューリップ」と 「かくれんぼするものよっといで」がある。次にレガート演奏の練習。ここまでは譜面を原則として使わない

西洋の子どもに比べていわゆる「いい子」が多い日本では、自由演奏を要求するのは難しいかもしれない. 生徒の心をすばやく掴み、うまく誘導してやれば可能か。

26ページ(実質20ページくらい)で五線が登場する。ト音記号CEGの3音、ヘ音記号FACの3音、 次がト音記号DFAの3音、ヘ音記号EGHの3音。音型は全く同じで弾くのは問題ないだろう、記憶を定着させるためには 教師の工夫がいると思われる。

全音符、二分音符、四分音符の説明。2拍子、4拍子、3拍子の説明、これは実際に行進させたり一緒に踊ってみたりするのが良い。

休符の説明。5線が小さくなっている。これはこの本の難点の一つ。

7曲課題がある。音を覚えているかどうか。

「おんかい」の課題があり(左右で)音域が一気に拡大する。

 ○ヨットははしる ○なぐさめ 難易度1 評価B。

リズムの整理があり付点二分と八分が出てくる。

fとp、クレシェンドとディミネンドの説明。

スタカートの説明。

 ○たのしいな ○おにごっこ 難易度1 評価C。

フレージングの説明。

 ○ちっちゃなうしかい 難易度2 評価B。

「こどものあそびばで」として6曲課題がある。最後の交差で、どのくらい長く弾き続けられますか、というのが面白い。

「にほんのわらべうた」で3曲(原版にはないと思われる)。

 ○かっこう 難易度2 評価A。

 ○しんごう ポジションの移動あり。 難易度2 評価A。

臨時記号の説明。

移調の練習がある。黒鍵の課題2曲(ニ長調とト長調)どちらも難易度1 評価C。

 ○うさちゃんのかなしみ ハ短調 難易度2 評価B。

 ○パレード ト長調 難易度3 評価A。

八分音符の説明と課題。

 ○マルユッカ 難易度2 評価B。

 ○ちいさなこねこ 難易度2 評価B。

リズムの楽典的問題がある。

 ○あっ あめだ 難易度2 評価B。

 ○うまのリール 交差あり。難易度2 評価B。

 ○ベールのおどり 13の4度がある。難易度2 評価A。

クロスの説明があり、スケールの課題がある。

音程の説明がある。「みみをすまして」としてフラジオレットの説明がある、これは珍しい。さすが現代の教本。

フラジオレットの課題2曲。

 ○ラップランドのうた 難易度2 評価B。

 ○ほしはかがやく ポジションの移動あり 難易度2 評価B。

 ○さばく 難易度3 評価A。

 ○うちゅう 完璧に現代 難易度2 評価B。

楽典の問題あり。

 ○こどものうた 難易度3 評価B。

 ○ふゆさんさようなら 伴奏がユニーク 難易度2 評価A。

 ○ねこと おおおとこ 連続の交差で結構弾きにくい。難易度4 評価A。

 ○とびはねる2度 短前打音の練習。

 ○おうむとさる 現代もの、思いつきだけという気もする。難易度2 評価B。

 ○カヌーこぎのうた 交差あり。難易度3 評価B。

 ○いたずらねずみ 難易度2 評価B

 ○のぼるよトントン 最初に弾いた曲をカノンにして使用。

 ○わたりどり カノン 難易度3 評価B

    連弾バージョンあり。カノンじゃなくなってちょっと易しい。

    変奏曲バージョンあり。発表会向きかな。やはり難易度3 評価B。

総合評価   B+

評価に迷ってますが、減点材料にしたのは音が一気にたくさん出てくるだけに、読譜にてこずる子どもが多いのではなかろうかということ。あと5線が小さいのも4,5才用としてある以上まずいでしょう。

対策としては、5線に入ってしばらくは、予習ですべての音を読ます、ノートを使って書かせる、等々でしょうね。それさえうまくいけば、なかなか良い教材であることは間違いない。

曲はなかなか良く考えられている。練習課題も必要最小限にとどめ、子どもをあきさせない工夫がある。

特筆すべきなのは、ウサギの挿絵が実にうまく、理論的説明を漫画で半ばこなしているという感がある。

頭のいい子にはぴったり。普通の4,5歳児がこれで本当についていけるのか、やや疑問あり。小学1年生くらいが適当かなという気はする。

基本的方針として、「クラシック」です。ピアノを「教養」として身につけさせたい(「娯楽」じゃなしに)という方針をお持ちの先生は、使ってみる価値あり。

使ってみて、案外読譜がスムーズにいくというのであれば、評価を変更しますので、会員諸氏の報告を希望します。

トップへ戻る   1つ上に戻る

© 2015- 田所理央 ご意見・ご感想は t.masato@mathemarimo.bird.cx までお願いいたします。