あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 教本 

 

トンプソン 現代ピアノ教本 4   大島正泰訳    全音楽譜出版社

引き続いてトンプソンの4巻に行きます。この巻あたりから中級用という感じですね。

曲名 作曲者 難易度 評価
手品師 レシュホルン 11  B
アンダンテ ベートーヴェン 12  A
アラゴンの人々 マスネー 11  A
小さなロシアのラプソディ トンプソン編曲 12  B
イル・ペンセローソ へラー 13  B
妖精の踊り イエンゼン 13  C
ワルツ Op.12-2 グリーグ 12  A
夕べに シュッテ 13  C
ひばり チャイコフスキー 10  C
様式を持ったエチュード トンプソン 12  A
感傷的なワルツ シューベルト 12  B
ヘ長調のプレリュード バッハ 10  A
アルカンサスの旅人 トンプソン編曲 12  B
スカーフのダンス シャミナーデ 15  A
即興曲 トンプソン 13  A
ハンガリア人 ハウザー 12  A
あなた キューバ民謡 12  C
ロ短調のプレリュード ショパン 13  A
アイアイアイ クリオール・ソング 13  B
ソルフェジェット E.バッハ 13  A
エチュード ベルティーニ 14  C
夜のような静けさ ボーム 13  B
メヌエット ハイドン 13  A
ニ短調のプレリュード バッハ 13  A
ノクターン トンプソン 14  B
ロミオとジュリエット チャイコフスキー 14  A
トロイメライ シューマン 15  A
芸術家の生涯 シュトラウス 16  B
子守歌 ブラームス 13  B
ロンド モーツアルト 14  A
カンツォネッタ シュット 15  C
君が御声にわが心開く サンサーンス 14  B
ソナタ ベートーヴェン 18  A
交響曲第6番 チャイコフスキー 15  A

○手品師 左右分割の練習。レシュホルンは練習曲集が1冊出ているが、詳細不明。

○アンダンテ 「運命」の2楽章。トンプソン編曲。

○アラゴンの人々 易しく分かりやすい。

○小さなロシアのラプソディー ロシアの民謡をトンプソンが編曲したもののようである。トンプソンはこういう形式の 物が相当好きなようである。骨の髄までロマン派って感じね。

○イル・ペンセローソ へラーのエチュードOp.45-16 「イル・ペンセローソ」は原題ではないと思う。

○妖精の踊り イエンゼンもへラーもロマン派の群小作曲家の一人(へラーは少し大物か)。これは指がもつれやすい。

○ワルツ ペダルを使わないほうが効果的とあるが、普通の手の大きさなら使わざるを得ないだろう。

○夕べに メンデルスゾーンがよく使う書法。無言歌のやさしい曲をする方がいい。

○ひばり 「子どものためのアルバム」の最終曲。

○様式を持ったエチュード なかなかいい曲です。これもロマン派でよく使われる書法。

○感傷的なワルツ リスト=シューベルトの「ウイーンの夜会」6番の一部分。

○ヘ長調のプレリュード BWV.927。この楽譜でそのまま使える。

○アルカンサスの旅人 アメリカ民謡をトンプソンが編曲したもの。速く弾くとそれなりに難しい。

○スカーフのダンス むちゃくちゃゆっくりならともかく、これは跳躍その他が大分難しい。 一覧表の難易度19は別の曲との間違い、訂正しておきます。

○即興曲 結構いい曲です。トンプソンは作曲家としても中級程度までの曲なら相当いいものを書いている。

○ハンガリア人 ハンガリア狂詩曲のラッサンの部分だけという感じ。

○あなた 曲想の転換が早い。

○ロ短調のプレリュ―ド 17,21小節目にsosutenutoが記されている。おかしい解釈ではないがやり過ぎないように。

○アイアイアイ いわゆる軽音楽。リズムにのって。

○ソルフェジェット 少々ロマン派的にデュナーミクが付けられている。

○エチュード 純然たるオクターブのエチュード。小さい子はやめるべき。

○夜のような静けさ 歌曲の編曲。これもロマン派のもはや忘れ去られた作曲家。

ここで装飾音についての説明がある。次いで3連と2連の合わせ方の説明。

○メヌエット Hob.49のソナタの3楽章の前半。名曲だがこういう中途半端な形で取り上げたくはない。

○ニ短調のプレリュード このアーティキュレーションは、現代においてはさすがにめずらしい部類に属すると思う。

○ノクターン すべて左手で弾く。むしろペダルの練習になる。

○ロミオとジュリエット チャイコフスキーらしい叙情性にあふれた名曲。この本を使うのならこれは外せない。

○芸術家の生涯 シュトラウスのワルツの編曲。あまりピアニスティックじゃない。

○子守歌 初めは左手だけで。ユニークな編曲ではある。

○ロンド K.545の3楽章。アーティキュレーションの改変がある。使いたくない楽譜。

○カンツォネッタ これもよくあるロマン派の小品。

○君が御声にわが心開く これは原曲を知っていると、さすがに編曲では物足らない。

ここで、ソナタ形式についての説明。

○ソナタ ベートーベンの1番の1楽章 原典を大分改変している。あまり使いたくない楽譜。ここに置くには相当難しいと思うが。

○交響曲第6番 「悲愴」の2楽章。5拍子の有名曲といえばこれか。

総合評価   B-

3巻まで評価Aを保ってきましたが、さすがにこの巻は、Aというわけにはいかないでしょう。

3巻でも指摘しましたが、教本としては偏りがありすぎるというのが最大理由。ロマン派が7割を占めています。

そしてこのレベルになれば、仮にロマン派を中心にするにせよ、大作曲家の曲がいくらでも選べるようになります。無価値とはいいませんが、 まあ、どうってことのない曲も結構含まれています。

むしろここでちょっと考えてみたいことは、日本ならばこの段階では、レッスンはハノンに類するもの、チェルニー、 バッハ+曲(通常はソナチネorソナタ)、というのが最も一般的でしょう。つまりロマン派がないわけです。 ロマン派ばかりというのも首をひねりますが、ロマン派がないというのはもっと首をひねります、少なくとも私は。

ぼちぼちピアノの先生はもう少し頭を柔軟にしてもいいんじゃないかと思います。具体的には、たとえばバッハは必修でしょう、しかしインベンション全曲やるこたあない、ソナチネアルバムやソナタアルバムも全曲レッスンでする必要はない、もちろんそれらは名曲ですが他にも名曲はいくらでもあるし、とりわけ思春期においては、ロマン派が最も適していると私は思います。

そしてチェルニーをやるよりは、曲を一曲増やしてやる方がなんぼかいい。どうしても不安ならソナチネ、ソナタの 速い楽章、あるいはバロックの速い曲を常に1曲は与えるようにしていれば、まず問題は起こらない。

外国の審査員によく言われる日本人の演奏の面白くなさ、正確ではあるが、音楽的にいまいち、という評価の土台を築き上げているのが、このレベルでのロマン派不在のレッスンではなかろうかという気がします。

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