あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 教本 

 

トンプソン 現代ピアノ教本 3  大島正泰訳    全音楽譜出版社

トンプソンの3巻。通常はこのレヴェルになると、もう教本ではなしに、色々な曲集から選択することになるが、アメリカ系の教本は たまに中級あたりまでずっと一つの教本が続いていることがある。その中でもトンプソンは最も高レヴェルまであるほうで。 まだ後2冊ある。

曲名 作曲者 難易度 評価
誰も私の苦しみを知らない 農園霊歌  8  A
メロディー シューマン  6  B
ミュゼット バッハ  6  A
闘牛士の歌 ビゼー  7  A
ロンドンデリーの歌 アイルランド民謡  7  A
ドロシー スミス  8  A
魔女たちのおどり クーラック  8  A
セレナーデ シューベルト  8  A
糸車の歌 エルメンライヒ  7  A
子守歌 ゴダール  7  B
鬼火 ベール  7  C
メヌエット ベートーベン  7  A
軍艦ピナフォアより サリヴァン  8  A
バラード ブルグミュラー  8  A
サラバンド ヘンデル  8  A
さあ、私といっしょに踊りましょう フンパーディンク  6  A
夕べの祈り フンパーディンク  8  B
ハ長調のプレリュード バッハ  9  A
ソナチネ Op.36-1 1楽章 クレメンティ  8  A
ドナ・ノービス・パーチェム 作曲者不明  9  B
ラ・クカラチャ メキシコ民謡  8  A
スケートをする人々 ワルトトイフェル 10  A
ほしょうの歌 グリーグ 11  A
タランテラ トンプソン  8  C
アンダンテ チャイコフスキー  8  A
ガヴォット ポッパー 11  A
メヌエット ボッケリーニ  9  A
ロマンス ルビンシュタイン 10  A
バブリチュキ ロシア民謡  8  A
メロディー マスネー 10  A
ハンガリアン・ラプソディー 第2番 リスト 10  A
ハ短調のプレリュード ショパン 10  A
ト長調のメヌエット ベートーヴェン 10  A
めずらしい話 へラー 10  B
太陽への讃歌 リムスキーコルサコフ 11  B

○誰も私の苦しみを知らない 練習ポイントは「手を交差して弾く」。手が小さいと苦しい。

ここで演奏解釈について記されている。高学年以上なら読めるかな。

○メロディー この曲の微妙なニュアンスは、普通の子どもには難しいと思う。

○ミュゼット ミュゼットについての有益な説明がある。これはあちこちのバロック曲集によく出ていて、フレージングは 必ずしもこのとおりでなくともいい。

○闘牛士の歌 行進曲の説明がある。途中のスケールの左右分割は、他の分け方も考えられる。

○ロンドンデリーの歌 3段の譜表になっている。手が小さいと苦しい。

○ドロシー 舞踏についての説明がある。これはなかなかいい曲なので是非やらしてあげたい。小さい子は左のオクターヴを省く。

○魔女たちのおどり これもあちこちで見かける。雰囲気を出して。

○セレナーデ トンプソン編曲。ペダルのちょっと高級な使い方が必要。

○糸車の歌 「紡ぎ歌」です。繰り返しはつけること。

○子守歌 トンプソン編曲の「ジョスランの子守歌」。この曲の好きな人には使える。

○鬼火 「腕を使うスタカートのエチュード」とある。曲としてはこの本の中では最もつまらない部類に属する。

○メヌエット 室内楽の説明がある。これはベートーベンの7重奏曲の編曲(Op49-2の2楽章と同じ主題)。 4分音符のスタカートはそんなに短くなく。最後の箇所の左のスタカートは、切るというより離すという感じ。

○軍艦ピナフォアより 場面の転換をきちんと。

○バラード 繰り返しはつける。3段2小節目から通常の楽譜と、左右の分割が異なる。どちらでもいいだろう。

○サラバンド 第1変奏(難しい)を飛ばしている。第2変奏(この楽譜では単なる変奏部分)の左のフレージングは バロックの定型ではあるが、この曲に関してはあまり見たことがない。

○さあ、私といっしょに踊りましょう。 「ヘンゼルとグレーテル」から2曲続けて入っている。これは3巻で一番易しいかもしれない。

○夕べの祈り このオペラを知っている人には親しみやすいだろうが・・日本にはあまりいないでしょうな。

○ハ長調のプレリュード BWV939です。この楽譜は少々デュナーミクがオーバー。

○ソナチネ ごく普通の解釈。

○ドナ・ノービス・パーチェム クラシック音楽が日常に浸透していれば、いい教材といえよう。日本ではちょっと・・

○ラ・クカラチャ トンプソンのなかなかうまい編曲。ただ原曲を知らないと面白さが半減。

○スケートをする人々 これもいい編曲ですが、ペダルをうまく使う必要あり。

○ほしょうの歌 繰り返しはつけること。この曲の難易度は相当高いが、トンプソンをずっとやってきている場合は、 さほど気にする必要はない。

○タランテラ さほど難しくない。

○アンダンテ 「悲愴」の1楽章の中間部分。高学年向きか。

○ガヴォット これも名編曲。デュナーミクの変化、アーティキュレーションの正確さに気をつけて。

○メヌエット 通常流布されている編曲とは大分異なる。繰り返しはD.Cで戻ってからはつけない。最初はつける。

○ロマンス トンプソンの時代(20世紀初め)ではルビンシュタインが大作曲家として扱われていたらしい。 正直このルビンシュタインについての解説はどうでもいい気がする。

○バブリチュキ テンポしだいでは少し難しくなる。

○メロディー 「悲歌」ですな。ペダル必須。

○ハンガリアンラプソディー さすがに原曲には比べるべくもないが、雰囲気は充分伝わる。繰り返しはつけること。

○ハ短調のプレリュード 荘重に

○ト長調のメヌエット 全体にわりとオーソドックスな解釈。右ページ5段1小節目の左のスラーだけ、独自の解釈かな。

○めずらしい話 へラーは膨大な数の作品を残し、欧米ではそこそこ評価が高く(練習曲)、日本でも出版されたりしたが 結局根付かなかったようである。練習曲と楽曲との中間的性格ゆえに使いづらいということであったのだろうか。

○太陽への讃歌 トンプソン編曲。オリエント風味で半音的進行の練習になるのかな。好みは分かれるだろう。

総合評価   A

8割方の曲が評価Aで、文句なしの評価Aなんですが、私の中では、2巻より評価は低い。

曲集としてなら文句はない。ただ教本となると、収録曲の偏りはやはり気になる。圧倒的にロマン派が多いのである。8割がロマン派、古典派とバロックが1割ずつ、近現代はゼロという比率。

近現代ゼロはまあ、分からないでもない。しかし古典とバロックが1割ずつというのは、「教則本」としてはやはりまずいだろうと思う。

日本の状況を考えるとある意味使いやすいかもしれない。日本においては初級者の併用曲集は、逆にロマン派が一番少ないからである。

バロックは各種出ている併用曲集、古典派はソナチネ、近現代は日本人の適当な曲集、をそれぞれ使って、メインにこの本を使う というのが、この本を使う場合の定型となるであろう。

表情をつけることを学ばせたい生徒にはぜひとも使うとよろしい。

低学年、特に手が小さいとあまりお勧めできない。使える曲が限られてくる。

もちろん普通の併用曲集として使うのもいい。

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