あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 教本 

 

トンプソン 現代ピアノ教本 2 大島正泰訳    全音楽譜出版社

トンプソンの2巻、ゆるゆる暇なときに見るつもりでしたが、3巻にリクエストが入りましたので、 あわてて2巻を片付けます。

トンプソンの2巻はクロスから、ということで、まずは12のクロスの練習が4曲入る。これはなかなか丁寧。

トンプソン 2
曲名 作曲者 難易度 評価
アルプスの山々で
 4  B
彼方の岩にもたれて オベール  4  A
私のおや指をとびこせ
 4  B
メヌエット (バッハ)  4  A
村のあちこち
 4  A
田舎の庭園 古いイギリスのダンス  4  A
時の踊り ポンキエリ  5  A
クリスマス・キャロル
 4  C
遠くの鐘の音 ストリーボッグ  5  C
エチュード デュベルノア  4  B
子山羊と赤シャツ カレッジ・ソング  5  A
教会の中で
 5  B
速度の遊び ツェルニー  6  C
なつかしいヴァージニアへ私を連れて帰っておくれ ブランド  6  A
夢想曲
 4  B
パック
 4  A
イ長調の前奏曲  ショパン  6  A
星明りのワルツ ブレイナルド  7  A
北極圏の旅
 5  A
空のパイロット
 5  B
かくれんぼ
 5  B
ジプシーのキャンプ
 5  A
ドン・ジョバンニのメヌエット モーツアルト  6  A
小さなポーランドのおどり
 5  A
野うさぎと猟犬たち
 5  A
さあ、出かけましょう ストリーボッグ  5  A
黒いひとみ ロシア民謡  6  A
エチュード
 5  A
ロマンス ベートーヴェン  5  A
小さなスケルツオ
 5  B
愛の夢№3の主題 リスト  5  A
小さなスラブ人のラプソディ
 6  A
ハレルヤコーラス ヘンデル  5  A
スキップしながら森を通って
 4  B
エチュード ベーレンス  5  B
エチュード ツェルニー  4  B
ピンキー、ディンキー パーレー、ブー 世界大戦時の歌  5  C
深い河 黒人霊歌  6  A
蛾たち
 6  A
ジョナサンおじさん
 5  C
カルメンから”ハバネラ” ビゼー  6  A
みつばちとクローバー ガイベル  6  B
テスト飛行
 4  C
ナイチンゲールとカッコウ
 5  A
二つのギター
 6  A
小鳥たちの歌
 5  C
ホフマン物語から「バルカローレ」 オッフェンバッハ  7  A
ジプシーロンドから主題 ハイドン  6  A
こびとたちの行進
 5  C
ウイーンのメロディー
 7  A
おどけた曲
 6  A

○アルプスの山々で 曲名にふさわしい。ロマン的な表情がほしい。保持音も入る。8度ポジションがある、 小さい子には不適切かもしれない。

○彼方の岩にもたれて オベールのオペラ。

○私のおや指をとびこせ エチュードだが、曲らしく作ってある。

○メヌエット ペツォルト(伝バッハ)のト長調のメヌエットの前半。フレージングはロマン的になっていて、 これは変えたほうがいいだろう。

ここで加線の説明が入る。

○村のあちこち 半音進行の説明がある。いい曲だが、2を使う半音階の指使いだけに、少し迷う。このまま使うか、 指使いを1313に修正するか、口頭で12と13の両方の指があることを説明し、この曲では12を使うというべきか。

○田舎の庭園 拍子記号の説明がある。フレージングを大切に

○時の踊り フレージングの説明がある。バレーを念頭に浮かべ、うまく表情をつける素敵になるが。

○クリスマス・キャロル 手首のスタカートの説明があるが、予備練習はともかく、この曲はさほどその課題の練習にはならない。

ここでペダルの説明がある。

○遠くの鐘の音 ストリーボッグの練習曲Op.63-6。ペダルの練習にはなる。

○エチュード アルペジオのグループをペダルで弾くという練習。これは使える。

○子山羊と赤シャツ ペダルを使って左手だけで弾けとあるが、普通に両手で弾くことも可能。

○教会の中で 連続したペダルの練習。

○速度の遊び こういうのは速度によってまるで難易度が異なる。ここにおいてあるということは、 あまり速く弾かせるつもりはないということ

○なつかしいヴァージニアへ私をつれて帰っておくれ ちょっと本格的な曲らしい。2段目最初の小節右1235とあるが1245の方がいい、次も。 2ページ2小節目右最初、4から5への指替えをするといい、3段目も。

○夢想曲 13のクロスが出る。As Dur。

○パック これも13のクロス。短いが内容豊富。

○イ長調の前奏曲 少し易しくなっている。大人の入門者の発表会用にいい。

ここで音階の説明がある。

○星明りのワルツ 右手のフレージングは3ページ目の変奏に合わせた方がいい。

ここで短音階の説明がある。

○北極圏の旅 平行調をうまく使った佳曲

○空のパイロット 14のクロスが出る。

○かくれんぼ 両手スケールが出る。

○ジプシーのキャンプ 速度の対比がどこまで出来るか。

○ドン・ジョバンニのメヌエット 7,8小節の4分音符はノンレガート。

○小さなポーランドのおどり 繰り返しはつける。中間部を速くするかどうかは微妙なところ。「小さな」はつまり英語の Littleの直訳、むしろ「短い」が正確な訳。

○野うさぎと猟犬たち 「たち」は不要。中間部のアーティキュレーションを正確に。

○さあ、出かけましょう ストリーボッグの練習曲 Op.63-5。半音階の指使いは修正してもいい。

○黒いひとみ 最初の右の指23の次42とあるが、41。その次も32とあるが31。次のフレーズも同じく 23から41,31が一番弾きやすい。手が小さいと苦しい。

ここでカデンツについての説明がある。

○エチュード 単純だがバロック的で美しい。この後に属7の和音の説明がある。

○ロマンス ベートーベンのソナチネ5番の前半。フレージングを修正すべきかどうか。

○小さなスケルツオ Des Dur。アラ・ブレーヴェの説明がある。

○愛の夢 これもなかなかいい編曲。

○小さなスラブ人のラプソディー こういう速度の対比を伴う曲がトンプソンには多い。

○ハレルヤコーラス 指使いに気をつけること。

○スキップしながら森を通って これは易しい。相当速く弾けということか。

ここでアルペジオの説明がある。この段階で2オクターブのアルペジオはまだ早いと思う。

○エチュード 2曲とも短い。音楽としてもまあまあ。

○深い河 長調で深い悲しみを表す。3小節目の終わりから右43とあるが32でもいい。

○蛾たち 「たち」はいらない。日本語の名詞に単数複数の区別はない。トンプソン2巻屈指の名曲。

○ジョナサンおじさん 3連符の説明がある。これはエチュード。

○ハバネラ これはほとんど同じ楽譜があちこちにある。

○みつばちとクローバー 子どもは結構喜ぶみたい。

○テスト飛行 分散和音のエチュード。

ここでトリルの説明があり、無題の練習曲が入っている。他の練習曲とあまり差はない。

○ナイチンゲールとカッコウ トリルの練習。ナイチンゲールも鳥であることは言ってやること。

○二つのギター ロシア民謡を元にトンプソンが作ったのかな。中間部のアーティキュレーションを正確に。

○小鳥たちの歌 トリルの練習。

○ホフマン物語 後半、アルペジオでメロディを出すところ、アルペジオが不揃いになりやすい。

○ジプシーロンド 最初の部分だけ。prestoだから相当速く弾くこと。

○こびとたちの行進 ローリングアタック(回転奏法)の説明があり、その練習。この奏法は相当速いスピード じゃないと、あまり意味がないと思う。この段階で使うかどうかは微妙。

○ウイーンのメロディー これはトンプソンが作曲したものではない。しみじみと歌って。

○おどけた曲 2巻の最後にふさわしい名曲、ブルグミュラーのアラベスクに少し似ている。右ページフェルマータの 箇所の右手、CisDAとあるが、CDisAの誤り。

総合評価   A

トンプソンの中で、おそらくこの巻が最も出来がいいと思われる。教本だけに、テクニック習得のための曲に一部Cがあるが、6割以上評価Aというのは、すごいものです。

教本として優れているのは、一つのテクニックの習得させるのに3~4曲、しかもほとんど出来のいいものを使っているということ。選曲が幅広く、ピアノ曲以外のクラシック全般に目を向けていて、しかも編曲はピアニスティックになされているということ。

あえて、難点を挙げれば、曲順が少々首をひねる。難易度4~7までだが、前半に7があるし終わり近くに4がある。ただ、実際に使う上においてはさほど気にすることはない。易しいのが混じっている分には何の問題もないし、難しいといっても非常に幅広い観点から見た場合の話で、この本を順にやっていく場合は、一足飛びに難しいテクニックが出てくるというようなことはないので、大丈夫。

つまずく可能性があるとすれば、他の教本からトンプソンの2に移ってくる場合。メトードローズ終了くらいまで(レベル5くらいまで)進んでいれば問題なし。レベル3~4程度でこの本に移ろうとすると、少し危ないかもしれない。トンプソンの場合は1巻でレベル3の曲を相当たくさん弾くことで地力をつけて、2巻で6くらいまで一気に上るという感じがある。使うのなら1巻から、あるいは余裕を持って2巻から。

あと、近現代のものが一曲もない。これは考えは分かれるところだが、私はこのレベルでは別になくともまだかまわないと思う。この巻までトンプソンだけでくることが可能であると思う。さすがに次の巻からは考えた方がいいが。

トップへ戻る   1つ上に戻る

© 2015- 田所理央 ご意見・ご感想は t.masato@mathemarimo.bird.cx までお願いいたします。