あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 教本 

 

ピアノの学校 1 コダーイ・こどもの音楽教育  加勢るり子訳編   音楽之友社

ハンガリーの国民的作曲家コダーイの考えに基づいて作られた「ピアノの学校」が日本に紹介されたのは1969年のことである。

雑誌などで相当宣伝されたが、日本に定着とまではいかなかったようである。しかし今なお発刊され続けているということは信奉者もいるのであろう。

全2巻でリクエストは2巻のほうであったが、教本なので1巻から調べることにします。なお原著の編者は次の5名。ファントーネー・カッシャイ・マーリア。ヘルナーディ・ラヨシュネー。コムヤーティ・アラダールネー。マーテー・ミクロシュネー。V.インシュルト・カタリン。

番号 曲名 作曲者 難易度 評価
 1

 1  B
 2 のばらのなかに
 1  B
 3

 1  B
 4 うさちゃんどこへ
 1  B
 5

 1  C
 6 ハンカチなくして
 1  B
 7

 1  C
 8 おねえさん
 1  C
 9 きんのゆびわ
 1  C
10 よちよちあひる
 1  B
11 わらいおうじ
 1  B
12 ベルケシュビシュタ
 1  B
13 くさかり
 1  B
14 プレゼント
 1  B
15

 1  B
16 はなよめさん
 1  B
17

 1  C
18 ピクニック
 1  C
19

 1  B
20 おおきくなれ
 1  B
21

 1  B
22 はなよめいしょう
 1  B
23 おすましさん
 1  C
24 たねまき
 1  B
25 どんぐりとこぶた
 1  B
26 はな
 1  C
27 おんどりとめんどり
 1  B
28 こおろぎ
 1  C
29 鏡の映像
 1  D
30 平行運動
 2  C
31 対話 エルジェーベト  2  D
32
カッシャイ  2  B
33
カッシャイ  2  C
34
カッシャイ  2  B
35
カッシャイ  2  B
36
カッシャイ  2  B
37
カッシャイ  2  D
38
エルジェーベト  3  D
39
カッシャイ  3  D
40
カッシャイ  2  D
41
エルジェーベト  2  C
42
エルジェーベト  3  C
43
タルドシュ  2  C
44 ねむりの精 イシュトバーン  2  C
45 小さいながれと大きいながれのある二声カノン ミハーイ  3  D
46
タルドシュ  2  C
47
ショプロニ  3  C
48
エルジェーベト  3  C
49
カッシャイ  2  C
50
カッシャイ  3  C
51
エルジェーベト  3  C
52
バルトーク  2  D
53
バルトーク  3  D
54
バルトーク  3  C
55 ”ソーミ”オスティナート ミハーイ  4  C
56 二つの小さなカノン a セルバーンスキー  3  C

          b
 3  C
57 開拓者の歌 サボー  4  C
58
タルドシュ  3  D
59 花のうた イシュトバーン  3  C
60 歌曲のメロディ カッシャイ  3  C
61 メリーゴーラウンド イシュトバーン  3  C
62 民謡 バルトーク  3  B
63 民謡 バルトーク  3  C
64
コダーイ  2  C
65
コダーイ  3  C
66
コダーイ  4  D
67
コダーイ  2  C
68
コダーイ  4  C
69
コダーイ  3  C
70
コダーイ  3  C
71 古い民謡 アベリェフ  3  C
72 おかし味 ハイドゥ  4  C
73 あそび ルーバッハ  4  D
74 スケルツオ カバレフスキー  3  C
75 こもりうた カバレフスキー  3  D
76
ショプロニ  4  D
77 ノッキング ラーンキ  4  C
78
タルドシュ  4  D
79 うた テュルク  3  C
80 うた テュルク  4  B
81 ダンス ホーフェ  4  C
82 メヌエット スペロンテス  4  C
83
ショプロニ  4  C
84
レジェー  4  B
85
タルドシュ  4  C
86
ショプロニ  4  C
87
バール  4  C
88
バール  5  D
89 ついばみ カミロー  4  C
90 イギリスのダンス 作者不詳  4  C
91 オランダのダンス ノイジードラー  5  C
92 フランスのダンス 作者不詳  4  C
93 昔のフランスのうた 作者不詳  5  A
94
エルジェーベト  4  B
95
ヤーノシュ  4  B
96 マーチ ティボル  5  C
97
レジェー  5  C
98 マズルカ ミハーイ  4  C
99
バール  4  C
100
バール  5  C
101
バール  4  B
102 うなづき ミハーイ  5  C
103
ミハーイ  4  B
104 スロバキアの調べ ティボル  5  D
105 ダンス カバレフスキー  4  C
106
カッシャイ  5  A
107
エルジェーベト  5  A
108
レジェー  5  C
109 北の客 ティボル  5  C
110 ダンス サボー  5  B
111
サボー  5  C
112 エチュード a バール  4  C

      b
 6  B

      c
 4  C

      d
 5  B

      e
 6  C
113
L.モーツアルト  5  A
114 ガボット 作者不詳  4  A
115 ブーレ ランベール  5  B
116 ロシアのダンス ベートーヴェン  5  A
連弾
番号 曲名 作曲者 難易度p 難易度s 評価
 1
マイカパル  2  7  C
 2

 2  6  B
 3
エルジェーベト  2  5  B
 4 緑の森の露 エルジェーベト  2  8  A
 5 こもりうた レオー  3  8  B
 6 しゃくやく二本  セルバーンスキー  3  6  C
 7 なにを洗うの  ガールドニー  4  4  C
 8 ダンス リュリ  4  6  A
 9 漁師のおじさん・・  エルジェーベト  4  4  B

○まず3曲の「遊戯うた」がある。歌ってからピアノで弾く、楽譜は見ない(日本で言えば「なべなべ」みたいなもの)

次に音名と譜表の説明があり、リズムうちの練習、そして両手交代の練習曲が6曲。手の体操があり練習曲が5曲。次いでレガート奏法への準備の練習があり変化記号の説明。
ここまでが予備段階のようなもの、音符は四分音符と八分音符、で、6ページ進んだだけで登場する音域は2オクターブ近い、とこれだけで少なくとも普通の日本の子供たちにはふさわしくないといえる。すでに譜読みはできている人間用ということですな。中学生以上か、二度目に使う入門書としてか

1.右手。音域1点トから2点ニまで。

2.のばらのなかに音域、1と同じ。

3.左手。音域、ヘ長調の基本ポジション

4.うさちゃんどこへ 音域、3と同じ。

5.右手。音域、ニ長調の基本ポジション。

6.ハンカチなくして 5と同じ。

8.おねえさん 左手。音域、ニ長調の基本ポジション。7も同じ。

9.きんのゆびわ ここから両手交替。ハ長調。

10.よちよちあひる ヘ長調。

11.わらいおうじ ハ長調。左手にポジションの移動あり。

12.ベルケシュピシュタ ト長調。

13.くさかり ト長調。繰り返し記号が出てくる。

14.プレゼント ハ長調。

なおこの6曲で1ページであるが、最近の日本の教本なら6ぺーじひょっとして12ページ使うところである。曲そのものは(技法の制限が少ない分)割と良い、入門書の最初期のものとしては音楽っぽい。

15. 右手、イ短調。(「ラ」ペンタコード とあるが、そのまま教えるのかどうかはやや疑問)

16.はなよめさん 4分音符4つに「はーなーよめさん」と歌詞を割り振っているが、「はなよめさーんー」の方がいいと思う。

17. 左手、ニ短調。この本は移動ドを採用しているだけに、D音に「ラ」と記されている。日本では論争の当否はともかく、実質的にもう固定ドが勝利を収めているといって過言ではないだろう。それだけに扱いは難しい。

18.ピクニック 3小節単位の構造の典型。

19. 右手 上部加線を含むニ短調基本ポジション。

20.おおきくなれ

21. 左手 イ短調基本ポジション。

22.はなよめいしょう 聞いたことがあるような気もする。

23.おすましさん ここから28まで両手交替。25まで後楽節が前楽節を5度下で模倣、一種の複調に近い感じを受ける。

24.たねまき

25.どんぐりとこぶた 

26.はな

27.おんどりとめんどり

28.こおろぎ

ここで音符と休符の説明、両手奏の準備、指の独立のためとして保持音の練習がある。

29.鏡の映像 反進行の練習曲二つ。二分音符と全音符とタイが登場。

30.平行運動 並進行の練習曲二つ。

31.対話 mf登場。ポジションの移動と25の分散5度がある。

32. フレーズの終わりを示す記号が登場している、手をいったん離しなさいと教えるのだろう。

33. mp登場。32と同じようなことを今度はスラーの区切りで表している。ただこの曲の場合は32と同じ意味で構わないが、一般的にスラーの区切りがそういう意味であると教えると、後に古典派の原典版を見たときにとんでもない演奏をすることになる。

34. 5指の黒鍵は少々弾きにくいが、この本の対象年齢から考えるとまあいいのだろう。

35. スタカート登場。レガートとの対比。ニ長調、調号が出ている。

36. ホ短調、調号が出ている。crescと松葉のdim登場。32から6までは曲としてまずまず。

37. legato登場。4から5小節の左はクロスではなく、ポジションの移動。14の縮小がある。

38. 松葉のcrescがある。フレージングの練習。

39. 左右のフレージングの違いがある、これは難しい(38が一応予備練習になっている)。松葉のdim登場とあるが36で出てきている。

40. 狙いは39と同じ。37からここまで曲としてはいまいち。

ここで両手独立のための練習曲が入る。これは絶対させること。この本を使用はしないが、所持しているという先生は、ここだけ拡大コピーして適宜自分の生徒に与えるといい。

41. p登場。

42. f登場。

43. giocosoの表題。フェルマータ登場。

44.ねむりの精 14の分散5度がある。

45.小さいながれと大きいながれのある二声カノン ミクロコスモスに似たような曲があった。

46. 調性を聞かれれば一応ハ短調だろうが(前半右はG音を主音としたラ・ペンタコード・・つまりト短調)、調号はフラット二つ。

47. 12の分散3度がある。最後の左は拡張ではなくポジションの移動。

ここら辺の段階になると、他の教本では技法の制限が少なくなるだけに、今の子供の感覚にあった曲が結構出てくる。しかしこの本は逆にここら辺から今の日本の子供の感覚とは余りあわない曲が多数を占めるようになる。

48. cantabileが出てくる。ポジションの移動しばしば。

49. parlando(話すように)の表題。3度のレガート。

50. 13の分散4度。

51. テヌートが出てくる。7度が出てくる。

52. バルトークの曲。ミクロコスモスに含まれていてもおかしくないような曲

53. 付点4分音符登場。意外なことだが3拍子がここで初登場、少し遅すぎるのではないか。

54. 付点2分音符登場。

55.”ソーミ”オスティナート 右手にオスティナートがある。ポジションの移動が頻繁にあり易しくはない。

56.二つの小さなカノン 付点の逆のリズムがbに出てくる。

57.開拓者のうた 15の分散8度あり。いきなり3度クロスあり。12のクロスもあり。1番カッコと2番カッコ登場。

58. ホ長調。

59.花のうた 淋しい花です。

60.歌曲のメロディ 調号はホ長調だが、A音を主音としたリディア調。

61.メリーゴーラウンド やや現代物に近い。

ここで左手の重音の練習が4つ入る。特に3,4は有益。

62.民謡 バルトークの曲。これは「子供のために」に入っていてもおかしくないような曲。

63.民謡 5度のポジションだが、左がもつれやすい。

64. ここから70までコダーイの曲。

65. 69までは半音移調することで黒鍵だけで弾くことができる。そうでもしないと、正直まったく面白くない。

70. これも一部の子供しか使えないだろう。

71.古い民謡 ハ短調。 

72.おかし味 「おかしみ」と読むんでしょうな。

73.あそび 交互のスタカート。

交互のスタカートの練習が2つ入る。

74.スケルツオ 次と2曲カバレフスキーの曲。

75.こもりうた

76. 題名がないが、こちらのほうが「こもりうた」のように聞こえる。

16分音符のリズム打ちの練習が入る。

77.ノッキング 連打の指使いに2通り記されている。

78. 16分音符の練習。

16分音符のリズム型の練習が入る

79.うた テュルクの作品。古典派らしい曲は初めて。

80.うた これもテュルク。ここら辺から曲にバラエティが富んできてまあまあ使えるという感じになる。

81.ダンス 2小節から3小節への左の指替えを必ずすること。D.CとFineが出てくる。

82.メヌエット レガートとスタカートの練習(この曲の後にもある)。

83. これはハンガリーっぽい。84も。

85. 複調。面白いと思うか大嫌いか。

86. 田舎っぽい。

付点のリズム打ちの練習が入る。

87. この本に収録されている典型のような曲。結構いい曲だが日本の子供が喜ぶかどうか。

88. sostenutoがある。これはおそらくmolto ritの意味。

89.ついばみ スタカートにしないと「ついばみ」にならない。

90.イギリスのダンス 古典派もしくはバロック。

91.オランダのダンス 古典派を模しているがおそらく最近の作。譜面面より弾きにくい。

92.フランスのダンス 素朴。

93.昔のフランスのうた これは一覧表の特選曲候補であったが、この本から一曲だけというのも、と思って落としたもの。

ここで音の長さと正確さと指の練習がある。

94. ホ短調。フレージングをきちんと。

95. カノン。結構いい。

96.マーチ 現代もの

98.マズルカ マズルカっぽく弾かせると難しいだろうが、そこまでする必要もないか。

99. 調号はフラット5つ。全部黒鍵で弾く。65~9までをしていれば難しくない。

100. 変拍子。

101. ハンガリーっぽい、変拍子。

102.うなづき 左右のフレージングが異なるが、これもここまできちんとしていればもはやさほど抵抗はないはず。

103. 上部加線の練習かな。曲もまあまあ。

104.スロバキアのしらべ 臨時記号が多く譜読みが面倒。

105.ダンス 4和音が登場する。

ここでレガート奏法の練習が入る。

106. ヘ音記号の上部加線の練習かな。曲もいい。

107. parlandoの標語がまさに当てはまる曲。

108. 4拍子+5拍子の構造。

109.北の客 保持音の練習。

110.ダンス 最後に交差がある。

111. 最後はたっぷりと弾く。

112.エチュード aからeまで5曲ある。現代曲を弾くためのエチュードかと思う。なおdの右はすべて3で弾くのだろう。

113. L.モーツアルトの曲。これは結構有名。

114.ガボット 「アマリリス」です。

115.ブーレ バロックかな。

116.ロシアのダンス 最後にベートーヴェンがあります。 

○付録として、指の練習が10、小さなエチュードが12ある。エチュードの方はチェルニーっぽいものが多い。

○連弾

1.2. 1はマイカパル作とある。2には何も記されていないが、1のマイナー版という感じ、書法も同じ。

3. 曲全体として対位法で書かれている。Primoは易し区、テーマの受け渡しが理解しやすい。

4.緑の森の露 primo3小節目最初の2音は右で取るほうが楽。primo7小節目左3とあるが4だろう。

5.こもりうた 題名がなければ活発に弾いてみたくなるかもしれない。

6.しゃくやく二本 「しゃくやく」は花の名前。

7.なにを洗うの これはハンガリーっぽい。

8.ダンス リュリの曲。おそらく編曲でしょうが。

9.漁師のおじさん リズムに特徴がある。

総合評価    C&B

 上記の意味は、通常はC、8歳以上の一部の方にはBという意味です。

 入門書であるが結構小さい譜面なので、この1冊で膨大な量の情報が入っていることをまず知るべきであろう。バイエル上下巻合わせたよりたぶん多い。

 良書であることは間違いない。特に最初期の曲はどの教本に比べても音楽的であるといえる。問題は全体の半ば以上を占めるハンガリーっぽい(五音音階的な)曲が、編者の主張するように日本の音階と似ているから日本の子供たちにも親しみやすいのか、どうかということである。そして私の経験では、今の日本の子供たちはこの手のものを好むことはまれである。

 もう一つ問題は、ハンガリーのピアノ教育事情によるものだろうが、対象年齢が7,8歳以上と思われる。音域の拡大のテンポが極めて速いし、かなり早い段階から7度、8度の拡張が登場するからである。 これも日本の幼い子供たち用とするにはまずい部分である。

 もう一つこれは出版社サイドの責任であるが、時々入るエチュードの楽譜が極めて小さい。それだけでも未就学児にはまず無理であると判断される。

 これまで挙げた欠陥は、しかし製作者には不本意というか、何の責任もないものである。本国ハンガリーにおいては広く受け入れられる教則本であろうことは推察できる。

 前もって研究をし、自分の趣味を生徒に押し付けられるだけの強い意思(ある程度は教師に必要なものであろう)を持って、情熱的にこの本を指導することができたならば、いい結果を生むことは十分可能である。 それだけの内容があり、よく練られて作られている本であることは確かである。

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