あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 教本 

 

ピアノランド 5 作曲 樹原涼子 絵 岡久留実   音楽之友社

いよいよピアノランドの最終巻です。表紙の子どもも段々成長しているようです、ここら辺は芸が細かい。

番号 曲名 難易度 評価
 1 CAT WALK   6  A
 2 月夜の晩のおながざるの踊り   6  A
 3 Dreaming   6  B
 4 ふたりのカノン   7  C
 5 好きな色は   6  A
 6 小さな嵐   7  A
 7 哀しい戦士   6  A
 8 不思議の国のピアノランド   6  A
 9 夕べの祈り   7  B
10 きたきつねのカップル   7  B
11 午後のワルツ   8  A
12 ミステリーを追え   8  B
  マーメイドの夢   9  A
  ソナチネ 1楽章  10  B
        2楽章 11(12)  A

3.secondは難易度12。

5.secondは難易度7。

7.secondは難易度9。

○マーメイドの夢のSecondは難易度10。

○ソナチネのかっこ内はオクターヴを付けた場合。

1.CAT WALK 絵にもあるが、猫が「すまして気取って歩く」感じ。良い曲だが表現が難しいかもしれない。

2.月夜の晩のおながざるの踊り 解りやすい。子どもの反応は分かれるだろう。

3.Dreaming 連弾。中間部は美しい。3ページ目最初の小節右○432とあるが○431で次2のほうが良い。

4.ふたりのカノン 対位法のものはバロック作品に任せた方が良いかも。

5.好きな色は 連弾。時々先生パートに主役を渡す。 

6.小さな嵐 「不安と勇気をもって」という標語は面白い。その通りの曲です。左手のnon legatoを忘れないように。

7.哀しい戦士 連弾。良質のゲーム音楽という感じ。題名といい曲といい、この方ひょっとして重度のゲーマー?

8.不思議の国のピアノランド 1巻にあった「ピアノランド」のテーマ曲を全音音階に移調?したもの。ペダル必須。調号の付け方に気を付ける。(未だ全調出てきていない段階において、こういう変則の調号を使用するのは異論はあるだろう)

ここで指の練習曲が5つ入る。①三連と付点の練習 ②3度のハーモニーの練習 ③6度のハーモニーの練習 ④2拍3連の練習 ⑤シンコペーションの練習

③は子どもにはこの指では無理。④は2拍3連の曲が出てきたときに使うのが良い。

9.夕べの祈り B dur。ペダルはある方が良いがなくてもいける。

10.きたきつねのカップル 軽く作った感はあるが、子どもは好きかもしれない。

11.午後のワルツ Es dur。お洒落に弾くこと。

12.ミステリーを追え リズムに乗って。8ビート2小節を3、3、3、3、2、2と分けるのに慣れる。

○マーメイドの夢 メロディーの掛け合いを美しく。もちろんペダル必須(先生が使うと変則になる、迷うところ)。

○ソナチネ 両楽章とも後半良くなる感じだが、2楽章の方が出来が良いと思う。ただ少々難しい、オクターブをそのまま弾くとなるとさらに難しい。マイナーになって歌わせ始めてからが良くなるのを見ると、この人の基本的資質はロマン派っぽいものかなという気はする。

総合評価  A-       1~5巻全体総合評価  A-

 4巻で一旦落ちましたが、この巻の曲は結構高評価のものが多く、樹原さんがやや本気を出して?作ったものも結構良いということで、復活。晴れて総合Aに輝きました。

 高評価の理由を考えてみますと、入門者向け教本というものは、大体がすでに一般的に消化された技法を使って作成されると考えられます。たとえばバイエルはロマン派の時代の人間で、その教則本の書法は古典派止まりです。トンプソンは近現代の人間で、教則本の書法はロマン派止まり。

 近代のスタートが一般に言われるようにドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」(1892~4)とするならすでに100年以上の歳月が経ち、極端に実験的な書法も1970年代を最後にあまり姿を見せなくなり、ぼちぼち近現代というものが歴史的評価に耐えるように成りつつある今、その書法を含んだ教則本があっても不思議ではないということでしょう。

 現に、未だ当会では検討しておりませんが、現代的な書法を含む相当数の教本が市場に出回りつつあります。

 ただ近現代はロマン派に対するアンチテーゼから出発しており、現在依然として(あるいは半永久的に?)一般的には音楽の根幹ともみなされている調性そのものも否定する場合が多く、ともすれば難解になりがちであり、入門者用という枠内でどこまで近現代を組み入れ得るかということは作成者にとって難問として残る。

 そしてまた作成者が、プロの作曲家(つまり現代音楽の)というよりは、プロのピアノ教本作成者である場合、その作成者自身が近現代を消化し切れていないように見える場合も多々ある。逆にプロの作曲家の場合、近現代に偏りすぎる、入門者用としてはバランスを失していると思わざるを得ないものも多々ある(ミクロコスモスなどは、初めから居直っている例であろう・・もちろん優れているとは言えても一般的とは言えない)。

 ピアノランドが高評価を得たのは、作曲家としての樹原涼子の腕前が「子どものピアノ曲」というジャンルにおいて、優れたものを数多く生み出したということがもちろん最大の理由であるが、現在という時点において過去を俯瞰したときに、バランス良く近現代の書法を取り入れているということが、大きな得点になったと思われる。

 難点はバロック的なものがほとんどないと言うことであろう。4巻あたりから教師は併用を考えた方が良い。

 全巻通しで使えるが、3巻くらいまでで他に乗り換えても良い。表紙の幼さが気になり始めた頃がその時期か。

 最大の難点は、おそらく進度が速すぎるということ。これについてこれる生徒はかなり優秀。通常は何か別のものを併用する必要がある。 おそらく自覚なさっているのであろう、ピアノランドシリーズとして、併用曲集その他がいろいろ出ているが、ある意味泥縄であることは否めない。

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