あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 教本 

 

ピアノランド2 樹原涼子作曲 岡久留美絵  音楽之友社

先月の1巻に引き続いて2巻を調べます。この巻まで横長の楽譜ですな。

番号 曲名 難易度 評価
 1 リズムを たんたかたーん   2  A
 2 みかんころころ   2  B
 3 バイバイバイ   2  B
 4 おいしい きのこさん   2  B
 5 がんばれうんどうかい   2 B(C)
 6 まーちゃんの バナナ   2  B
 7 オバケやしき   2  B
 8 だいふく じぞう   2  A
 9 さかあがり    2  C
10 レイン レイン レイン   2  B
11 はしれ きかんしゃ   2  B
12 ぶらんこ   3  B
13 メリー クリスマス   2  B 
14 きてごらん みてごらん   2  A
15 パパのおみやげ   2  B
16 ブリキのへいたい   2  B
17 ほしのたびびと   2  A
18 にげだせロック   3 A(C)
19 もりのまつりだ   2  C
20 おつきさまのふね   3  A

13.8分音符があるだけで、実質的には難易度1。

○ぶらぶらたいそうをしよう というのがまずある。リトミックまで書かれている教本というのは珍しい。音楽を先生が弾いてあげて子どもに体操をさせるのだが、音楽の難易度は10くらい、体操は面白く簡単、腕の力を抜くというより、子どもをリラックスさせる効果が一番でしょう。

1.「たんたかたーん」のリズムは初めて。最初の先生の範奏の時に、手を叩かせると良い。

2.曲は何ということないが、絵が面白い。このシリ-ズは岡さんの絵で、ほんとうに得をしている。

3.イ短調。8分の6。どちらも1巻で既出。タイが出てくる。

4.4分の2。右手G登場。

5.付点8分+16分を登場させている。欧米系教本では考えられないことであるが、日本の童謡の付点の感覚で弾かせている。これは賛否両論あるだろう。最初に出てきたときの印象は非常に大切で、ただでさえ付点の苦手な(甘くなる)日本人が、この本で学習すると、正確な付点の修得にはマイナスにしかならないという考え方と、付点は親しみやすいリズムと思うことはとてもプラスになる、という両論でしょうね。

 なお1,2拍目は連打となり、その面からも教材としてやや気にはなる。1,2拍目は4分音符にしてしまうという手はある。 左手のF登場。アクセント登場。

6.4分の3。4分+2分のリズムが出ている。曲はどうということない。

7.8分の6。「タタn」と「タnタ」のリズムが出ている。これも絵をよく見ると面白い。

8.何となくとぼけたような雰囲気がある。

9.歌詞がないと、どの教本にもあるような曲になる。

 ここで「指の練習曲」が5つ入っている。読符の必要はないとあり、楽譜が小さいが、④などはすぐ覚えられないと思う。①②は5指の練習、③④はクロスの練習。⑤はスケール(二分音符、きわめてゆっくり)。

 ここまでが5度のポジションで次からポジションの移動があるということ。

 5つの練習曲をマスターしてから次に進めとあるが、生徒にとってはそれなりに楽しい「曲」からただの指練習になってしまうわけで、先生はこの5つはあちこちに分散して、適宜やらせるのが良いと思う。

10.d moll。13の分散4度が出てくる。ヘ音記号上部加線が出てくる。黒鍵を初めて弾く。

11.後半で初めてハ長調であることが解る。調性的にやや不安定(前半だけではC、F、a〔ちょっと苦しい〕、dのいずれにもなりうる)。ドレミランドは8分の6に結構意を払っているようである。ト音記号のA登場。スタッカート、テヌート登場。

12.14の分散5度が出てくる。

13.これは易しい。ヘ音記号のE登場。

14.ちょっと雰囲気のある曲です。こういうのをそれっぽく弾ける子はセンスがあると言えよう。ナチュラル登場。

15.これも8分の6。

16.D dur。2分の2。

17.4分の5、さすがに新しい教本だけのことはある。g moll。ポジションの移動あり。

18.これは傑作。歌詞と曲と絵が見事にマッチしている。6度ポジション。12のクロス登場。ただ教材としては4小節目の右手全部5で弾かせるのだろうが、気になる。8小節目も同様。どちらも四分音符で良いと思うのだが。

19.ト音記号H登場。ダルセーニョ、セーニョ、フィーネ登場。

20.2巻の総合練習になっている、少し難しい。一応e mollだが、空虚5度をうまく使い、mollっぽさは強調されていない。ヘ音記号のD登場。

総合評価  A

 Bかなと思いましたが、最後に良い曲がそろっていて格上げ。

 入門者用教本としては、この巻くらいまでで大体の特徴が出たと言えます。当会がその評価で最も重視しているのは「曲が本物の音楽であるかどうか」「子どもの受容度」その2点です。

 その2点についてはまず申し分のない教本であるということができます。2巻を終えたところでバイエルの上巻が終わったくらいでしょうが、両者の40曲ほどを弾いてみたとき、バイエルが毎日食パンばかり、たまーにジャムやバターが付いてる、とすれば、ピアノランドはパンあり、ごはんあり、スパゲッティからプリンから、焼き肉から納豆まであるという感はします。こどもたちにとって非常に幅の広い音楽的栄養を与えていることは間違いない。

 もう一つ、この本が意を払っているのは、音域の拡大に極めて慎重であるということです。ここまで、一度に1音しか増やしていません。これは特に小さい子には、とても大切なことです。ピアノが一部の恵まれた家庭の子どもたちだけの時代はとっくに終わっており、万人に開かれた現在、ごく普通の特別の才能のない子でもそれなりに音楽を楽しむことが出きるように工夫された教本が必要であり、この本はそれを満たしていると言えましょう。

 しかし欠点が全くないわけではない。

 ピアノ教師として最も気になるのは、同音連打の扱いである。この段階では指をかえることは出来ない、しかし同指による連打は、特にテンポが速くなると、手首の硬直化の原因となりやすい、その点にどうも無神経であるような気がしてならない。

 この本だと5番と18番、どちらも曲としては良いだけに惜しい。この本をお使いの会員諸子のための一応の解決策は記しておいた。5番はリズム感の良い子だと、1小節目は3音目、5小節目は2音目を休符にしてしまうという手もある。

 基本的に幼児向き、小学生で背伸びしたがるような子には向かない。また18番の歌詞は面白いが、幼児にはぴんとこないような気もする。

 なお1巻の手書きっぽさは姿を消している。

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