あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 教本 

 

ゆめのミュージック・トレーン ピアノ・エチュード  成田剛  音楽之友社

 ワードさんのリクエストにより、成田剛さんのピアノエチュード1を取り上げます。これは「ゆめのミュージックトレーン」シリーズの中核をなすもので、同シリーズはステップ1~6まであり、ステップ1,2は「ピアノさん こんにちは」と「ドレミでうたいましょう」から成る導入テキスト、3~6が「ピアノエチュード」「ソルフェージュ」「ピアノ連弾曲集」からなるそれに続くテキストである。95年に初版が出され、現在もそれなりに出ているようである。

 「ピアノエチュード」はブルグミュラーの練習曲を小さくしたような楽しい曲ばかりで、というコンセプトのもとに作られた教本である。バイエルの10~50番程度までと記されている。各曲には短い指の体操、及び教師用の伴奏が付いている。

 1巻の最初から大譜表である。

ゆめのミュージックトレーン ピアノエチュード 1

番号 曲名 難易度 評価
 1 祭のたいこ   2  C
 2 まりつき   2  C
 3 ワルツをおどりましょう(1)   2  B
 4 おもちゃのラッパ   2  C
 5 今日も元気に学校へいこう   3  C
 6 かえるの合唱   2  C
 7 くじらは でっかいぞ   2  A
 8 なかよしの二人   2  C
 9 なわとび ピョンピョン   2  D
10 びっくり箱   2  B
11 はと時計   3  C
12 わにの 歌のおけいこ   3  A
13 ママの作った おべんとう   3  C
14 地下てつ こうじ   3  B
15 さわやかな春の風   3  C
16 おやすみ バンビちゃん   3  B
17 すいすい スケート   3  B
18 タランテラ   3  C
19 ワルツを おどりましょう(2)   3  B
20 トンネルくぐって   3  C
21 魔法の じゅもん   3  B
22 一年生の行進   4  B
23 ゆりかごの赤ちゃん   3  C
24 メダカの学校   3  C
25 ホッピング   3  C
26 おもちゃのマーチ   3  A
27 とおい国の お話   3  C
28 メリーさんの羊は おしゃれです   3  A
29 青い洋服の お人形   3  B
30 蛇つかいの笛   3  B
31 たこたこ あがれ   3  B
32 ママの たんじょう日   4  A
33 はたらくロボット   3  B
34 朝の トランペット   4  A
35 一人で 旅にでる ピノキオ   4  B
36 雪の国の サンタさん   4  C

7.歌詞を含めてA。

1.大体ユニゾンだが、最後でポジションの移動と6度がある。

2.スタカートの練習。ポジションの移動あり、最後に6度あり。

3.3拍子の練習かな。8分音符登場。

4.B音を使わないFdur。13の分散4度がある。曲としては面白いが、8分音符の同指の連打をどう考えるか。

5.3段目のポジションの移動はやや難しいし指の運びもあまりピアニスティックではない。12のクロスがある。

6.歌詞がある。蛙の鳴き声を模した和音があるが、この不協和音はあまりでかしていない。

7.2段目と4段目のスラーは、手首の上下を伴うと良い。ちょっと面白い曲。指の体操は音階。

8.バイエル11番を8分の6にしたようなもの。指の体操はアーティキュレーション、これも手首の上下が使えるから7番と体操の順を入れ替えても良い(どちらも曲と体操の間に関連はない)。

9.これが8番の体操と関連がある。

10.オフリガートを付けないと面白くない。この曲当たりがこの本では最も現代的か(現代と言うほどのことはない)。思いつきの域を出ない気も少々するが。

11.成田さんはスタカートが好きですな。

12.G dur、Fis音登場。歌詞が面白い。

13.同じくG。左右交互が出てくる。音の充実度の差が少し気になる。

14.半音的な動きの練習かな。

15.3度のクロスがあるが、AFisだからほとんど抵抗はないだろう。

16.F dur。ペダルがある、無理なときは先生におねがいとあるが、普通は無理なんじゃないかい。指の体操にヘ長調の音階。

17.もう一つF。左手にメロディー。4段目からの右手3度、全て31になっているが、全て42の方が良いかもしれない(4度は52)。

18.イ短調。8分の6。曲としてはいまいち。

19.ユニゾンだった3番を、右手メロディ、左手伴奏にしたもの。

20.スケールの練習。機関車という奴には今の子どもはお目にかからないと思うが。

21.ちょっと面白い曲。挿し絵はもう少し怖そうなものの方が良いと思う。ニ短調。

22.アウフタクトの練習かな、なかなか良い曲。

23.右、3段目から4段目はクロスするのではなくポジションの移動を行う(微妙に違和感を感じるが)。

24.良い曲だけれど「メダカの学校」という曲名はいかがなものか。ぱっと聞いて他の曲を思い浮かべるような題名は付けない方が良いと思うが。

25.右手は手首からのスタカートだろう。

26.こういう感じの曲は、成田さんお得意なのかもしれない。

27.8分の6にこれという曲がないね。

28.「メリーさんの羊」の8分の6バージョン。ここから35を除いて先生の伴奏がなくなる。

29.成田さんの曲は、私時々和声の選択その他に違和感を感じることがあるのだが、たとえばこの曲だと、私なら5小節目はG、6小節目はCの第2転回、7小節目は属7を使う。あえて、つまり何らかの意図があって、わざわざ通常と違うというか、やや稚拙さが感じられる現在の和声にしたのかどうか(その意図の推測が出来ないわけでもないが)が少し解らない。指の体操はa mollの旋律的スケール。

30.これは必ず臨時記号を伴うところまで弾かせるように。指の体操に付点4分が出てくる(31の課題)。

31.6小節目の左は2131が正統的、8小節目は3121となる。

32.(ちょっぴりフォークっぽい)良い曲だが右手の指には多いに疑問がある。つまり記されている指は、3小節頭に2、ということは前からの続きの指である、だったら5小節目の頭は3になるはず、もしくは3小節目を212にしないと整合しない。スラーの切れ目で離すというのなら、3,5小節の頭は3でよい、以下全く問題なくなる(6小節は212とクロスして次は3か1)。

34.トンプソンの「妖精の宮殿」の影響ありあり。良い曲だし、歌詞が面白いが、この歌詞には少し曲が整いすぎているような気がする。出来のいい生徒にだが、2番の左手のCをCis、BをHに変えて、速く弾かせると、大慌て、という感じになる。それから2番は別の歌詞にすれば? たとえば「さあたいへんだおきろ、歯磨きをして、トイレに行って、ごはんをたべろ」。

35.オフリガートを美しく弾いて上げること(オカリナか何かの感じ)。

総合評価   B-

 これは1巻であるが、導入部分ではないので(ピアノさんこんにちは、という本になっているらしい)、教本としての最終的評価は未だ出来ない。

 バイエルの10~50程度とあるが、もう少し難しいだろう。ただ成田さんは、前に検討したものでもそうであるが、入門段階での5度のポジションということにあまりこだわらない方なので、成田さんに言わせれば、そんなもんですよ、ということなのかな。

 頻繁にポジションが移動するのならともかく、たまに6度があったり、一度や二度移動するくらいなら、レベル2段階でも、それほどの抵抗がないということは事実である。そして1巻ということで、終わりまでいっても、さほど難易度的に難しくなってはいない。進度的には無理はないと言えよう。

 言ってみれば、バイエルとトンプソンを足して2で割ったような感がする。そしてバイエルよりは面白いが、何というか洗練さに欠けるというかトンプソンより野暮ったいような感はする。

 「指の体操」がその番号に関係しているもの、次の番号に関係しているもの、どちらにも関係のないものとバラバラ。関係ないものが出てくるものは致し方ないこともあるが、その番号に合わせるのか一つ先の番号に合わせるのかは統一すべき。・・先生は前もって調べておいて、その曲の前にさせるのか、同時にさせるのか決めておかねばなるまい。

 加線の新しい音が出てくると、カタカナで記してある、一つの工夫。

 書法的にやや限界があるというか、入門書ということで自ら限定したというか、微妙な枠を感じる。時代的にはたまに近代っぽいのもあるのだが、本質的に、一昔前かな、と思わせるものを感じるのである。逆に言えばあまり目新しいものは望まない、かといってバイエルにはさよならしたい、という先生にはお勧め、となる。

 ときどき、私なら別の音にするな、という部分がある(29だけ記した)。そういうのを感じさせるということは、こういっちゃ何だが、少し推敲不足、なのかな、という気がしないでもない。

 入門書としての評価は導入部分を見てから。あと曲集としては、むしろ巻を追うにつれて書きやすくなるはずで本領発揮となるであろうから、これも他の巻を見る必要がある。

 とりあえず1巻の評価としては、こんなものでしょう。ま、使えるかな。

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