あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 教本 

 

メトードローズ・ピアノ教則本 安川加寿子訳編  音楽之友社  

 バイエルと並ぶ教則本の老舗、メトードローズ。そもそもはバイエル1色であった日本の幼児ピアノ教育界に風穴を開けるべく(?) フランスで育った安川さん(おそらく日本人最初の世界に通用したピアニスト)がフランスの一番よく使われていたメソードを翻訳したもの。昭和26年(1951年)のことである。

曲名 難易度 評価
小さいお友だち   1  A
バラ色の円舞曲   1  C
子どものロンド   1  A
さあ!はじめます   2  C
最初の歩み   2  D
いなかの踊り   2  C
子守歌   2  D
満足   2  C
ブーレ   2  A
とべ!小さな蜜蜂よ   2  A
お山の大将   2  C
おばあちゃまのお話   2  C
小さい円舞曲   3  A
月の光に   3  B
シュゾン   2  C
お父さま   3  A
木彫りの小さい兵隊さん   3  A
かっこう鳥   3  B
問いと答え   2  C
そら!人形が踊る   3  C

 

曲名 難易度 評価
バラ色のメヌエット   3  B
ああかわいい   3  B
ガスコーニュの兵士たち   3  A
冬さん、さようなら   3  A
お城を攻めとられるな   3  C
夜の歌   3  C
私はいいもの持っているのよ   3  B
よい子よ、ねんねしな   3  C
春の朝の歌   3  B
ブリュターニュの小唄   3  B
風車やさん、ねむっちゃだめよ   3  C
小さい子守唄   3  B
シラノ・ド・ベルジュラック   4  A
アルザスの円舞曲   3  B
踊り続けましょう   3  A
アラビヤの歌   3  A
ごきげんよう   3  A
むかしの歌   3  A
バーゼルの思い出   3  C
マドロン   3  B
かわいいミュゼット   3  A
山の歌   3  B
マリちゃん、パンをおあがりなさい   3  B
ヴェニスの謝肉祭   4  A
子羊   3  C
羊飼いの少女   3  C
アイルランドの歌   4  A
チロルの歌   4  B
民謡   4  C
夕べの星   4  A
お人よしの王様   3  B

☆第1課

◎ 五本の指 2度の練習から始まって3度、4度、5度まで。20課題。二点ハからトまで。

◎ リズムの練習 2度音程で2拍子 3拍子 4拍子とある。次に3度以上の音程で4拍子と3拍子、ここの練習課題はそれなりにきれい。連弾の楽曲が二つ、この二つも良い。

○小さいお友だち

○バラ色の円舞曲

◎ ソの位置 ポジションが変わる。一点トから二点ニまで。

○こどものロンド(連弾) これも使える。

 ◎ 低音部譜表への準備 ヘ音記号の課題が6曲、続いてト音記号一点ハからトまでの課題が3曲。ここら辺は相当頭の良い子でない限り幼児には(低学年でも)苦しい。新しい音が次々と出てきてとても覚えきれない。

☆第2課

 大譜表になる。このために1課の終わりに大分無理をさせているわけだ。

○さあ!はじめます 意気込みのある題名だが子供が喜ぶ可能性はほとんどない。

○最初の歩み ここからしばらくバイエルと同工異曲。

○いなかの踊り 3拍子

○子守歌 

○満足

 ソの位置になる。ヘ音記号の下のソまで登場した、つまり加線を除いて大譜表の音はほとんど全て出てきたことになる。とにかく新しい音の登場ペースが速すぎる。

 ここに限らず、この本の場合出来の良い子は練習課題は飛ばしてしまうか、レッスンの場で片づけてしまう方が良い。宿題にすると嫌がるだけだろう。

○ブーレ これは喜ぶ。左手の1拍目に軽いアクセントを付ける。

○とべ!小さな蜜蜂よ! ブンブンブンです。

 いろいろの位置での練習

○お山の大将 G dur 調号はない。

○おばあちゃまのお話

☆第3課 

 6度の練習が入る。ここまで練習課題もきちっと全てこなしているならば早いとは言えないが、楽曲だけだと早いだろう。そして練習課題はほとんど全てつまらないもので、あまり与えたくはない。楽曲だけだとしかし子供にはペースが速すぎる。ジレンマである。

○小さい円舞曲 いかにもフランス風で柔らかいという印象がある、佳曲。

○月の光に これは色々な編曲があるが、この編曲、私はあまり好きではない、中間部の和声がやや不自然な気がする。

 付点音符の練習が入る、まずは付点2分で、他の本よりこれは大分遅い。

○シュゾン これをこの曲らしいニュアンスを付けて弾くことができれば、相当のセンスがある。通常の子供にはつまらない曲でしかない。

○お父さま これはこの編曲が良い。

 シャープの練習が入る。親指黒鍵を初めから弾かせている、両論あるところ。

○木彫りの小さい兵隊さん 今の子は「兵隊さん」がわかるのだろうか。楽譜にあるように「いばって」。

○かっこう鳥 これも色々な編曲がある。これは耳になじんでいるものと少しメロディーが違う。

 休符の練習が入る。全休符、2分休符、4分休符。ここまで全く休符なしでくるというもの珍しい。

○問いと答え これは純然たる練習曲。

○そら!人形が踊る 対位法的扱い。教師は弾かせたいがさほど喜ばれる曲ではない。

☆第4課

 8分音符の練習が入る。難易度的にもバイエルの下巻とほぼ同じ。

○バラ色のメヌエット 良い曲だが52の分散5度がある。これが一つの難点。手が小さい子は結構苦しい。

○ああかわいい! 上と同様。

○ガスコーニュの兵士たち これは52の5度がない。やや難しいのだがかえって使いやすい。

○冬さん、さようなら 対位法的扱いだが易しい。これは5度ポジション。

 付点4分音符と保持音の練習が入る。

○お城を攻めとられるな アウフタクト

○夜の歌 G dur。この2曲で付点4分の3拍子と4拍子が両方出るということになる。考えられてはいるがさほど良い曲ではないのが残念。

 フラットと保持音の練習が入る。この保持音は相当難しいが良い練習になる。先送りにしても良いし出来の良い子はこの本が終わるまで毎週最初に弾かせても良いだろう。

○私は良いもの持っているのよ フランスの童謡。

○よい子よ、ねんねしな F dur。4小節目が微妙に気になる。

 8分の3と8分の6拍子の練習、そして保持音の練習が入る。

○春の朝の歌 久しぶりに52の分散5度があるが、ここまで来ればさほど抵抗はない。

○ブリュターニュの小唄 アクセントが出てくる。

 親指の移動(12のクロス)の練習が入る。

○風車やさん、ねむっちゃだめよ 左手に保持音が出るが、まだあまり厳密なことは要求する必要はないと思う。2拍ほど伸びていればいい。むしろ3拍目と1拍目をつなげないように。

○小さい子守歌 スラーの切れ目は微妙に離す。

☆第5課

 拡張(といっても6度)と重音の練習が入る。

○シラノ ド ベルジュラック 7度ポジションになる(予備練習が中途半端な気がする)。この曲の左の保持音はある程度正確に。最初の右のフレージングは二種類考えられる、いずれにせよ統一すること。

○アルザスの円舞曲 左のフレージングを右に合わせることは望ましいが、おそらく7小節目で無理。ということは初めから全部切る方が無難か。

 ハノンの1番みたいなのと、イ短調の練習が入る。

○踊り続けましょう バランス上繰り返しは付ける。リズムに乗って弾きやすい曲。

○アラビヤの歌 イ短調 8度の跳躍がある、手が小さいほど苦しい(大人なら全く問題がない)。

 縮小の練習とト短調の練習が入る。ニ短調より先というのがよく解らない。

○ごきげんよう 譜面上は第4課の初めと大して変わらないが、微妙に難しくなっている。

○むかしの歌 g moll。

 レガートとニ短調の練習が入る。

○バーゼルの思い出 あえて言えば半音的動きのための練習か。

○マドロン 速い8分の6で数えてもいいかな。

○かわいいミュゼット d mollの名曲。初めの繰り返しは付けた方が良い。

 7度ポジションと同音連打(大して速くないが)の練習が入る。

○山の歌 指を代えなければならないように作ってあるというところが優れもの。

○マリちゃん、パンをおあがりなさい 曲としてはこの方がずっと良い。指換えもするところとしないところが自然に分かれている。

☆第6課 

 p、f、クレシェンド、ディミネンドの練習がまずある。

○ヴェニスの謝肉祭 まず全体を大きくとらえてから細かいデュナーミクを付けていくようにする。

○小羊 fは強くというより豊かに膨らんだという感じ。だが使いにくいでしょうね。

 拡大・縮小の練習と、指換えの練習が入ります(指換えはもう少し後になってからもう一度やるといい)。

○羊飼いの少女 後半のデュナーミクの変化を大切に。

○アイルランドの歌 ロングロングアゴーです。中間部、小さい子はレガートが無理だと思う、3,4拍目は切る。

 拡張の練習、和音の練習が入る。

○チロルの歌 最後に8度ポジションが登場する。

○民謡 12の分散4度がある。

 反進行のスケールがある(C,G,D,A,E)。

○夕べの星 g moll。美しい。

○お人よしの王様 最後の曲にしては・・という気もする。

 最後に全調の2オクターヴのスケールがある、短調は和声。

総合評価   B-

 バイエルと似たようなものか、バイエルより少しましか、というところ。

 そのまま使えるのは第3課より後、つまりやはり後半の方が出来が良い。前半は良い曲は少なく、おまけにこの本は曲以外の予備練習が結構な割合を占めているので、そのまま使うと第2課辺りでイヤになる可能性大。

 しかし前にも指摘したように、前半は新しい音の登場するペースが速く、予備練習を余り省くわけにはいかないだろう、つまりほとんど使えないということである。

 第3課、特に第4課以降、優れた曲が数多く出てきて水準以上のものになっている。そして4課以降は難易度の上昇カーブが極めて緩やかで躓くことはまず考えられない。幼児用は上下2巻に分かれているので、他の入門書を使った後、下巻だけ併用曲集として使うことが可能。その場合は一部を除いて予備練習は割愛した方が良いだろう。

 なお近年日本の今のこどもたちに合わせて改訂版が出たようである。相当大きく変わったようであるが、未だ調べていない。  

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