あるピアニストの一生

ピアノ教材研究 教本 

 

バイエルピアノ教則本

 やっと、と言うべきか、ついに、と言うべきか、最もポピュラーな教則本、バイエルを取り上げることにする。このサイトを運営し始めた当初は、取り上げるつもりはなかった。しかし「ピアノ教材研究会」と銘打った以上、やはりポピュラーなものは一通り検討せずばなるまいと思い、取り上げることにした。

番号 難易度 評価
 1   1  B
 2   1  C
 3   1  C
 4   1  C
 5   1  C
 6   1  C
 7   2  C
 8   2  D
 9   2  D
10   2  C
11   2  C
12   2  D
13   2  D
14   2  D
15   2  C
16   2  C
17   2  D
18   2  D
19   2  D
20   2  C
21   2  D
22   2  D
23   2  C
24   2  D
25   2  D
26   2  D
27   2  C
28   2  D
29   2  C
30   2  C
31   2  C
32   2  B
33   2  C
34   2  B
35   2  D

 

番号 難易度 評価
36   2  D
37   2  C
38   2  C
39   2  D
40   2  D
41   2  B
42   2  C
43   2  A
44   3  C
45   2  D
46   3  C
47   3  C
48   3  C
49   3  C
50   3  C
51   3  C
52   3  B
53   3  C
54   3  C
55   3  C
56   3  C
57   3  B
58   3  C
59   3  B
60   4  A
61   3  B
62   5  C
63   3  B
64   3  B
65   4  C
66   4  A
67   4  C
68   4  C
69   4  C
70   4  C

 

番号 難易度 評価
71   4  C
72   4  B
73   4  C
74   4  A
75   3  B
76   4  B
77   4  A
78   4  A
79   4  B
80   5  A
81   5  A
82   5  B
83   4  B
84   4  C
85   4  B
86   5  C
87   4  C
88   5  A
89   5  B
90   5  B
91   5  A
92   4  B
93   5  A
94   5  B
95   5  C
96   5  A
97   5  B
98   5  B
99   5  B
100   6  A
101   5  C
102   5  A
103   5  C
104   5  A
105   6  B
106   8  C

○最初に基礎的な楽典の説明が一通りある。子どもはもちろん大人であっても、全くの初学者がいきなりこれだけの楽典の説明をされても、覚えきれるわけがない。

○右手の練習 音域2点ハ~ト

○左手の練習 音域1点ハ~ト

○両手の共奏練習 H~Fという音域。ミクソリディアなどというまず使われない旋法をなぜこんな初期に使ったのか、考えられる理由は右の1、左の5の指がCという固定化を避けるためであろう。しかしながら極めて非音楽的なためにここは飛ばす先生が多い、また使用したからといって、固定化が避けられるともあまり思えない。狙いは正しいが効果を上げていないということ。

○1.右手の練習。主題と12の変奏。全音符、付点二分音符、二分音符、四分休符が出てくる。3拍子も出てくる。2もそうだが教師は必ず伴奏をつけること。

○2.左手の練習。1点ト~2点ニ。

 ここまででト音記号の全ての音が出現している(加線を除く)。すでに学校等で音楽についての何らかの知識がある場合はともかく、そうでない場合、この進み方はあまりにも速い。読符について何度も何度も復習する必要がある。

○3.ここから両手の練習。しばらく(31まで)音域は右手が2点ハ~ト、左手が1点ハ~ト。これが長すぎて指の固定化(特に右手)という非常にまずい事態が生じる。6番まで完全なユニゾン。

○8~10.左手が単音になっている。Comodoが出てくるが、これはバイエル以外では滅多にお目にかからない。 

○11.ここまで教師の伴奏が付いている、必ず付けること。

○15.ポルタメントが出てくる。普通に弾けばそうなる、ということで記号の説明は聞かれない限り私は不要だと考える。

○16、25.やや対位法的。

○18.左手に重音が出てくる。

○29.タイが出てくる。

○32~34.上部加線(Dまで)が出てくる。曲そのものはユニゾンで美しい。G durだが調号はない。

○35~40.下部加線(Gまで)が出てくる。曲は陳腐。

○41~43.上部加線(Eまで)。a moll。ユニゾンで美しい。

○44.子供向きではここから下巻。8分音符登場。理屈を音楽の形にしたもの。 

○46.6度ポジションが出る。

○48.付点4分音符登場。

○51.5小節目右、523とあるが423の方がいいかもしれない。

○52.8分の6拍子登場。

○53.8分休符登場。f出現。

○54.ヘ音記号登場。

○55.mf登場。

○57.p登場。

○58.松葉のcresc.とdim.登場。

○59.8分の3登場。アクセント記号登場。

○60.言葉のcresc.dim.登場。対位法の優れた曲。ここら辺からバイエルは良くなる。

○61.G dur 調号はない。明るく穏やかに。

○62.ポジションの移動が頻繁にあり、極めて難しい。スタカート登場。

○63.スタカティッシモ登場。

○64.右手の最初の指使いはちょっと考えるところ。テンポが速い場合はともかく、そうじゃない場合指を代える必然的理由はない。

 厳密に言えば、ゆっくりの同音の指換えのプラス面は脱力がやさしい、マイナス面は面倒。指を代えない場合は、プラスは何といっても自然、マイナスは手首に力が入る危険がある、ということ。

☆クロスの練習とC durのスケールの練習がある。

○65.スケールの練習。

○66.良くできた曲。

○67.6度重音の練習。アウフタクト。

○68~69.3度のレガートの練習。もう少し後でも良いような気もする。

☆G durのスケールの練習が入る。

○70~71.3度のレガート。68~9よりほんの少し高度。71の最後の右手、極めて手が小さい場合スラーが困難ならば離しても良いだろう、指を12に代えるのは賛成しない。

○72.右手の出だしの指、これは記譜どおりが良いかもしれない。これも重音の練習だが、こういう形の方が70~71に出てくる形よりも易しい。

○73.ここから版によって曲順を変えてあるので注意。原典の番号です。半音階の指、12131231でも良いだろう。これも大分難しい。

○74.3連符の練習。まさに構築性だけで成り立っているような名曲、古典派の典型と言えます。右手Fisの連続、指換えの必要はないかもしれない。

☆D durのスケール。 

○75.D durの練習。易しいがなかなか良い曲。

○76.この段階で35の4度を弾かせるかどうかは一考の必要。右手の3度は二分音符の連続を除きノンレガートで良い。 

○77.ここら辺は佳曲が並んでいる。

○78.発表会でも使えそう。最初の6度はスタカート。次のレガートとの対比。左の保持音はこの段階では難しいが、2拍延ばして1拍休むくらいで良いだろう。

☆A durのスケール。

○79.バイエルはA,そしてEまで登場するが、スケールの指使いが同一であるというのが理由かもしれない。子どもによっては抵抗がある。

○80.装飾音、交差、転調と出てきて、大分難しい。

○81.これもA durの練習。連打が出てくる。これは指使いを守らせること。

☆E durのスケールと練習曲一つ。

○82.E durの練習。生徒によっては難しい。

○83.スケールの総合練習という感じだが楽曲としても出来は良い、73同様にドイツ的構築美というやつがあるわけです。

○84.これは純然たる3度のエチュード。

○85.Fのスケールは未だなのですが、どういう訳かF durの曲。易しい。

○86.44を拡大したようなもの。リズムの練習としては極めて有益。これがいきなり正しく弾けるようなら極めて優れたリズム感を持っているか、無茶苦茶頭がいいかのどちらか。

○87.16分音符の練習。

○88、89.付点8分音符の練習。8分音符の間に入れるという形を選んでいるところに、周到さがうかがえる。

○90.重音と連打の練習かな。中間部の左の指は版によって異なるようだがDFに21を使うのが良いと思う。

☆a mollのスケール。旋律短音階のみ。

○91.a mollの練習。再現の手前の右、1432とあるが5432で良い。

○92.これもF dur 易しい。

○93.8分の6拍子で16分音符が出てくると、その曲は弾けても、理解はしていない場合が多い、要注意。これは名曲。 

☆ここでF durのスケール。

○94.F durの練習曲。シンコペーションを教えるべきだろう。

○95.6度の練習。手首から前のスタカートで軽く弾くべきだが難しいかもしれない。 

○96.5~8小節の右はつなげるか1小節ずつにするかやや迷うところ(私は軽く離す)。中間部右手和音はスタカート気味で弾くべきだが、それが結構難しい、左手を伸ばし右手を切るという練習をする。

○97.3度の練習だが、そこそこの速さで正確に弾くのはこのレベルでは大分困難。

○98.最初に単独の付点がある。次に左が入ったときと比較すること(左が入ればまず正確に弾ける、単独だと甘くなる可能性が大)。

○99.Bdur 音階練習無しにいきなり曲(子供用はスケール練習を補っているようである)。複前打音あり。

○100.最初の繰り返しは付けた方がいい。結構本格的な曲です。装飾音の弾き方を入門段階でどう指導するかによるが、古典奏法で指導するのなら、16分音符に付いている装飾音は、結局3連符になる、ということでも良い。

○101.これも73や83と同系の曲。できばえは良いとまではいえないかも。

○102.複付点登場。入門書で出てくるのは珍しい。指換え登場、重要な技術です。最後の右手の音型を最初から間違わずに正しく弾いて来れたら、楽典をそこそこ理解できているという事かな。

○103.8小節目の左右の受け渡しを正確に。

○104.長いスケールの練習。

☆半音階の練習がある。黒鍵に主に2を使う弾き方と3を使う弾き方の両方が載っているが、2を使う方は現在まず使われることはない。最初に2種類教えて混乱を招く可能性もあり、Ⅰ、Ⅲ、Ⅶは省いた方がいい。

○105.これを使用するのなら最後の右手の半音階の指をドイツ式(黒鍵3の指使い)に変えておく。

○106.両手の半音階はこの段階では非常に困難。

☆付録としてテクニック的練習が34ある、いずれも有益で何ならこれだけコピーしてハノンその他の本格的テクニック養成書に入る前に使っても良いくらいである。なお最後に3度練習があるが8分音符になっているところから見ると、バイエル自身が97番などを、入門段階でどの程度弾けると思っていたのかしらん?

総合評価  C

 前半と後半でまるで評価が異なります。

 前半は陳腐な曲の羅列、言い古された欠点(ヘ音記号が遅い、中央のドから始まっていない、対位法が少ない等々)より大きい欠陥と私は思う、指と音の混同を招きかねない、同じポジションばかりの曲、等、まあ、良いことはほとんどなくてDですな。

 後半やや曲がましになってきて、60以降、Bの評価が与えられます。

 知り合いの先生は別の入門書を使い、途中でバイエルの下巻に乗り換えます。それは一つの手です。

 あるいは別の入門書を使い、その併用曲集として、下巻を使うという手もあります。

 日本の子どもは73番以降辺りのバイエルは結構好きです。バイエルを使わないにしても、その一部の曲を抜粋して子どもに与えることは有益ですし、結構喜ばれます、私は発表会でも使います(主教材にはしておりません)。

 前半は全くお勧めできない、一月以内に一気に片づけてしまいそうな大人はともかく、とりわけ子どもには前半は使用してはならない、数ヶ月の内にピアノがイヤになる確率が極めて高い。

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