ピアノ教材研究 逝ける大作曲家
Tchaikovsky,Pyotr Ilyich
(チャイコフスキー 1840~1893 ロシア)
○こどものためのアルバム
番号 |
曲名 |
難易度 |
評価 |
1 |
朝の祈り |
9 |
B |
2 |
冬の朝 |
9 |
C |
3 |
木馬に乗って |
10 |
C |
4 |
ママ |
8 |
C |
5 |
おもちゃの兵隊 |
7 |
B |
6 |
病気のお人形 |
7 |
A |
7 |
人形のお葬式 |
9 |
A |
8 |
ワルツ |
9 |
A |
9 |
新しいお人形 |
7 |
B |
10 |
マズルカ |
10 |
A |
11 |
ロシアの歌 |
8 |
C |
12 |
お百姓の歌 |
8 |
D |
13 |
ロシアのおどり |
8 |
C |
14 |
ポルカ |
9 |
B |
15 |
イタリアの歌 |
7 |
A |
16 |
古いフランスの歌 |
7 |
A |
17 |
ドイツの歌 |
8 |
B |
18 |
ナポリの歌 |
9 |
A |
19 |
乳母のお話 |
10 |
C |
20 |
ババヤガ |
9 |
B |
21 |
甘い夢 |
9 |
B |
22 |
ひばりの歌 |
10 |
C |
23 |
辻音楽師 |
9 |
B |
24 |
教会にて |
8 |
B |
1.ペダルは欲しい。
2.ロシアの冬は日本とは比べ物にならないくらいチョー寒いということを、必ず説明してあげること。アクセントの表現が変わるはず。
4.ペダルを使わないで左手のメロディーをレガートにしようとすると相当難しくなる。
6.発表会などでは6,7,9の3曲続けて弾かすと良い(やや9が他に比べて劣るのが玉に瑕だが)。感情移入の練習になります。
7.3,7,11小節のスラーがテヌートになっている版あり。23小節がfで25でpになり26からcresc、29の頭はアクセントがついてmf、32の右手後ろ三つ、ポルタメント、33からppになっている版あり。最後の4小節 lentoになっている版あり。
8.ヨハン・シュトラウスは「ワルツ王」ですがチャイコフスキーは「ワルツの皇帝」だと何かに書いてあったのを読んだことがあります。これも非常に優れたワルツ、手が小さい場合は左の和音の指を少し変えた方がいいかもしれない。
10.出だしは2拍目にアクセントか3拍目にアクセントかちょっと迷う。ペダル記号から見ると校訂者は3拍目だと思ったようだが。中間部は間違いなく3拍目ですがね。
12.7小節目の省略の仕方は解説にある。こういう曲の感覚は私にはよく解らない、おそらくロシア独特のものであろう。
15.初めの4小節、9~12,13-16、右手スラーになっている版あり。7小節目の右手Cisスタカートの版あり。最後から4小節目Gでスラーが離れて、残りが終わりまでつながっている版あり(ここはその方がいいと思う)。
16.名曲です。出だしの右手は12341がいい。4段3小節目左CEsGになっている版とACEsになっている版がある。原典がどちらかは知らないが、断然CEsGにすべき。ACEsが原典だとするなら単なる書き損ないだと私は思う。最後から2小節目の右は31でとって52に指換えをする。
17.手が小さいとやや苦しいかもしれない。9小節目の右手が全てスラーでつながっている版あり。2段目終わり2小節の右手の指使いは初心者にはさせたくない。5とあるGを1で取る方がいい。3度のスタカートが1回目と7回目にしかない版あり(他はスラー)。4段1小節目右手最後のFがEsになっている版あり。
18.白鳥の湖にも使われている名曲。「ナポリ」はイタリアの一部なのになぜ「イタリアの歌」と「ナポリの歌」が別になっているのかと訊いてきた子どもがいました、鋭いですね。私の記憶では1860年か70年まで「ナポリ王国」という国が存在していました。
この曲が作曲されたときにはもうイタリアは統一されていて「ナポリ王国」は消滅していましたが、それまでの1000年近くにわたってイタリアはずっと分裂していましたから、チャイコフスキーの頭の中ではまだイタリアとナポリは別々の国だったのでしょう。
22.「ひばりの歌」は「四季」にもあるがそちらのほうが出来がいい、これよりは少し難しいが。
23.ペダルが使えないと面白くないでしょうね。
総合評価 A-
超一流作曲家が「こどものために」と題して書いた作品はシューマンのものとこのチャイコフスキーのものが有名でしょうか。メンデルスゾーンにもありますが余り有名ではない。
シューマンのものもそうですが彼らの一級の作品に比べるとやはり見劣りします。彼らの高い芸術性は「こどものため」に向いているとは決して言えないということなのでしょうかね。
さてこれは使える曲と使えない曲が割とはっきり分かれている曲集です。シューマンのものに比べると子供用に妥協しているというか、子どもにも解りやすいことは確かです。ただチャイコフスキーのピアノ曲というのは、先にも書きましたが膨大な数がありますが、当たり外れが結構大きい。この作品集もつまり当たりの曲と外れの曲がはっきりしている、そういうことなんですかね。
時代の違いかお国柄の違いか、一部よく解らない曲がある。
先生は当然持っているべきです。生徒に買わすかどうかは微妙なところ、日本人の優れた作品集の方がいいという気もしますし、かのチャイコフスキーの曲なんだよと、ということで何らかの+が生じるとお考えならば、買わすのでしょうかね。
ソナタクラスの生徒に初見用に渡してやってもいい。
○四季(12ヶ月曲集)
番号 | 曲名 | 難易度 | 評価 |
1 | 炉端にて | 17 | B |
2 | 謝肉祭 | 18 | B |
3 | 雲雀の歌 | 12 | A |
4 | 松雪草 | 15 | A |
5 | 白夜 | 14 | A |
6 | 舟歌 | 16 | A |
7 | 麦刈りの歌 | 15 | A |
8 | 収穫 | 18 | A |
9 | 狩の歌 | 20 | A |
10 | 秋の歌 | 16 | A |
11 | トロイカ | 18 | A |
12 | 聖誕祭 | 18 | A |
○その他
作品番号 | 曲名 | 難易度 | 推薦 |
Op.1-1 | ロシア風スケルツオ | 26 | |
1-2 | | | |
Op.2-1 | 城の廃墟 | 19 | |
2-2 | | | |
2-3 | 無言歌 | 15 | ☆ |
Op.4 | | | |
Op.5 | ロマンス | 20 | ☆ |
Op.7 | ワルツ=スケルツオ | 16 | |
Op.8 | カプリッチョ | 21 | |
Op.9-1 | | | |
9-2 | サロン風ポルカ | 18 | |
9-3 | サロン風マズルカ | 18 | ☆ |
Op.10-1 | ノクターン | 19 | |
10-2 | ユーモレスク | 16 | |
Op.19-1 | 夕べの夢 | 18 | |
19-2 | | | |
19-3 | アルバムの綴り | 16 | |
19-4 | ノクターン | 17 | ☆ |
19-5 | | | |
19-6 | 主題と変奏 | 25 | ☆ |
Op.21-1 | 前奏曲 | 15 | ☆ |
21-2 | フーガ | 23 | |
21-3 | 即興曲 | 21 | ☆ |
21-4 | 葬送行進曲 | 25 | ☆ |
21-5 | マズルカ | 20 | ☆ |
21-6 | スケルツオ | 22 | |
| | | |
| | | |
| | | |
| | | |
○1-1 チャイコらしい叙情性がすでに豊かにあるが、やや冗長な感を受けるのは否めない。
○2-3 チャイコのはどれもそうだが、手の大きさでかなり難易度が変わる。
○5. 微妙に弾きにくい。ヴァイオリン編曲の方が有名かも。
○7. 人を選ぶだろうが、ちょっとユニークで面白い作品。
○8. 最初のリズムパターンがずっと続く。中間部は美しい。
○10-1 重音の連続が、技術的にも音楽的にも難しい。
○19-1 中間部がやや弾きにくいかも。
○19-4 これはよく弾かれる。チャイコフスキーの感傷的な美しさがよく発揮されている。
○19-6 結構大規模な変奏曲。時々弾かれる。
○21-1 Op.21は同一主題による連作、本来全曲通すべきものだろう。前奏曲は緩やかに美しく重く流れる。
○21-2 こういうメロディックな主題はどうもフーガという形式にはそぐわないような感じがする。
○21-3 あまり速く弾くよりは、チャイコらしく歌った方がいいと思う。
○21-4 そんなに悲痛というわけでもない。
○21-5 派手ではないが佳品。私はOp.21の中では一番好き。
○21-6 リズムに特色のあるスケルツオ。あまり速く弾きすぎると、途中で収拾がつかなくなる危険あり。
作品番号 |
曲名 |
難易度 |
推薦 |
Op.40-1 |
|
|
|
2 |
悲しき歌 |
14 |
☆ |
3 |
|
|
|
4 |
|
|
|
5 |
|
|
|
6 |
無言歌 |
13 |
☆ |
7 |
|
|
|
8 |
|
|
|
9 |
ワルツ |
15 |
|
10 |
ロシアの踊り |
14 |
☆ |
11 |
|
|
|
12 |
|
|
|
Op.51-1 |
|
|
|
2 |
少し踊るようなポルカ |
18 |
☆ |
3 |
|
|
|
4 |
ナタ・ワルツ |
18 |
☆ |
5 |
ロマンス |
17 |
|
6 |
感傷的なワルツ |
17 |
☆ |
Op.59 |
ドゥムカ |
26 |
☆ |
○40-2 これはよく弾かれる。こういう書法に慣れているとかなり易しいが、ソナチネ的なものばかりしていると激ムズと思うだろう。
○40-6 この手の曲の中ではいちばんとっつきやすいかも。
○40-9 チャイコフスキーは実はJ.シュトラウスに匹敵するワルツの大家である。
○40-10 わかりやすい。最後は一気に加速して。
○51-6 コマーシャルにも使われた。むしろヴァイオリン曲として有名かも。原曲はピアノソロ。
〇59 出だしはロシアの田舎の夕方という雰囲気が濃厚に漂う。チャイコの本格的作品の中では最もよく弾かれる。
18の小品 Op.72
番号 |
曲名 |
難易度 |
推薦 |
1 |
即興曲 |
20 |
|
2 |
子守歌 |
18 |
|
3 |
穏やかな叱責 |
16 |
|
4 |
性格的舞曲 |
21 |
|
5 |
瞑想曲 |
|
|
6 |
踊りのためのマズルカ |
|
|
7 |
演奏会用ポロネーズ |
|
|
8 |
対話 |
17 |
|
9 |
シューマン風に |
16 |
☆ |
10 |
スケルツオ・ファンタジー |
|
|
11 |
きらめくワルツ |
|
|
12 |
いたずらっこ |
18 |
|
13 |
田舎のこだま |
18 |
☆ |
14 |
悲歌 |
|
|
15 |
ショパン風に |
16 |
☆ |
16 |
5拍子のワルツ |
19 |
|
17 |
遠い昔 |
|
|
18 |
踊りの情景 |
|
|
曲名 |
作曲年 |
難易度 |
推薦 |
即興的カプリス |
1885 |
18 |
|
ワルツ=スケルツオ |
1889 |
19 |
|
即興曲 |
1889 |
16 |
|
ここに挙げたものは作品番号のないもの。
○協奏曲 変ロ短調 Op.23
素人にまで知られているという点ではピアノ協奏曲中最右翼かもしれない。戦前はこれを弾ける日本人ピアニストはいないといわれていたらしい、今は少しうまければ 誰でも弾く、それぐらいレベルが上がったということ。難易度28、推薦。