ピアノ教材研究 編曲集
小川一朗編 音楽表現練習への<ピアノ小曲集1> バイエル併用 シンコーミュージック
これは古い本である。現在店頭に並んでいる併用曲集の中では、おそらく最も古い本に属する。小川一朗編とあるが、小川さんは編集しただけなのか一部編曲もなさったのか不明(おそらく後者であろう)。
シンコーミュージックはむかし新興楽譜出版社という名前であった。小川一朗さんと共に発展したような会社かも知れない。
番号 | 曲名 | 作曲者 | 難易度 | 評価 |
1 | ドレミファソの歌 | 1 | D | |
2 | 歌調 | 1 | C | |
3 | ちょうちょう | 1 | A | |
4 | ワルツ | 1 | D | |
5 | ぼうやねんね | オウガステン | 1 | C |
6 | 雨だれのおどり | エンゲル | 1 | D |
7 | ブンブン小蜂 | ドイツ民謡 | 2 | A |
8 | ドイツの歌 | 2 | C | |
9 | 水車 | イエンセン | 2 | A |
10 | ジングルベル | 2 | C | |
11 | おやすみなさい | オーガステン | 3 | C |
12 | メリーのかわいい羊 | 2 | A | |
13 | 春の声 | ハリオット | 3 | B |
14 | おどり | バーディー | 3 | D |
15 | 五月に | ベール | 3 | B |
16 | よろこびの歌 | ベートーベン | 2 | B |
17 | 子供の歌 | ベール | 3 | B |
18 | 田舎のおどり | バーディー | 3 | C |
19 | かっこう | オーストリヤ民謡 | 3 | B |
20 | 谷川の流れ | ハリオット | 2 | D |
21 | 狩り | パガニーニ | 3 | B |
22 | 小川の水車 | ツィリッヒ | 3 | D |
23 | ハーモニカを吹く子 | コルトー | 3 | D |
24 | クリスマスの鐘 | ケーラー | 3 | C |
25 | 手品 | ストリーボッグ | 3 | B |
26 | そよ風 | ハリオット | 3 | D |
27 | 楽隊あそび | エンゲル | 3 | D |
28 | 泉のほとり | エーステン | 3 | C |
29 | オルゴール | ツェルニー | 3 | B |
30 | ライオンの大行進 | サンサーンス | 4 | A |
31 | ロングロングアゴー | ベイリー | 4 | B |
32 | 人魚の歌 | ウエーバー | 4 | B |
33 | ふるさとの小川 | オーノルド | 4 | C |
34 | 時計交響曲の第二楽章より | ハイドン | 4 | B |
35 | インデアンのおどり | コルトー | 4 | A |
36 | 槌音高く | コルトー | 4 | C |
37 | チクタク時計 | チェルニー | 5 | B |
38 | かわいいオーガスティン | ドイツ民謡 | 4 | B |
39 | ドイツ民謡 | ケーラー | 4 | A |
40 | こもりうた | エンゲル | 4 | C |
41 | オレンジのラプソディ | エンゲル | 5 | B |
42 | 故郷の人々 | フォスター | 5 | D |
43 | 夕べの歌 | グルリット | 4 | B |
44 | ジーグ | アイルランド民謡 | 5 | A |
45 | おもちゃシンフォニーより | L.モーツアルト | 5 | A |
46 | 田舎風の踊り | フンテン | 5 | C |
47 | ミュゼット | ダカン | 5 | C |
48 | 子供の謝肉祭 | ストリーボッグ | 6 | A |
49 | 小鳥のさえずり | ストリーボッグ | 5 | C |
50 | エコセーズ | ベートーヴェン | 7 | B |
51 | 黒い瞳のスーザン | ストリーボッグ | 6 | B |
52 | 小舞曲 | ハイドン | 7 | A |
53 | アリア | バッハ | 7 | B |
54 | 五月のそよかぜ | ロルセーズ | 6 | C |
55 | すみれ | ストリーボッグ | 6 | B |
56 | フリュートをふく人 | チェルニー | 5 | C |
57 | 王子のチャーミングなワルツ | チェルニー | 7 | D |
58 | ハバネラの歌 | ビゼー | 6 | A |
59 | アラベスク | ブルグミュラー | 6 | A |
60 | 陽気なかじや | グルリット | 6 | C |
61 | 春のおとずれ | グルリット | 6 | B |
62 | 舞踏の時間に | リヒナー | 6 | A |
63 | 屋根の小鳩 | フィンク | 7 | C |
64 | 森の小川 | グルリット | 7 | C |
65 | 狩猟 | ブルグミュラー | 8 | A |
66 | そりに乗って | ケーラー | 7 | B |
67 | ミヌエット | パーセル | 7 | B |
68 | ウィリアムテルより | ロッシーニ | 6 | C |
69 | ポロネーズ | シュモール | 8 | C |
70 | 聖夜 | グルーベル | 8 | C |
71 | トルコ行進曲 | ベートーヴェン | 8 | B |
15。バイエル20番程度では逆立ちしても演奏不可能であろう。
19。註に書いてある和音の弾き方は有益。
23。34の拡張がある。使わない方がいい。
24。繰り返しとダ・カーポを併用しているが、ダルセーニョにして2小節目にセーニョ記号を持って来るのがいいんじゃないかな。
25。同音同指の連打が少し気になる。指が硬くならないように。
29。リトルピアニストの14番。フレージングを変えてあるが、元の方がいい。すなわち2,4段3小節目Gからスラー。
31。最後の左手の指は51315か41214。
32。最後の左は4214、もしくは5315とする。
37。8、16,24小節目左手42の方がいい。
40。音感テスト用の曲だそうな。意図は面白いが、「ねこ踏んじゃった」でも弾かせる方がいいのではという気もする。
42。この変改は私としては容認できない。
47。オクターヴがある。
49。原曲を大分短くしてある。理由不明、賛成できない。
50。メロディーの一部異なる楽譜もある。たとえばグローバーピアノ併用曲集5。私としてはそちらの方がいいと思う。
52。トリルが実音で記されている、主音から始めるより補助音から始める方がいい。学問的にも正しいしかつ弾きやすい。7小節目左手二つとも51。前半の繰り返しはつけるべき。
57。3度の練習曲。
58。トンプソン2巻のものと同一であると思われる。とすると終わりから6小節目の左でのフェルマータの音が変えてある。(これでもいいと思う)
59。最後のrisoluteのoとlの間が空いている。
60。最初の形の指使いは色々と考えられるところだが、4段目のGisの2323は少し弾きにくいかも知れない。代案は迷うところだがあえていえば3232か2222か。
62。5段目左手最初の音42の方がいい。同じ小節右手ナチュラルつきのCはCisの間違い。
63。終わりから3小節目、左21とあるが42。
65。繰り返しの6小節目左手42。
66。3段4小節目左手42。
68。最初の指使いは色々あるところだが32132121がいいのでは? 3小節目のメロディの変改はいただけない。
69。最初の右手124の方がいいと思う(次が3)。右ページ2段目最初の左手542。
71。4段目右手Eの連打、3213の方がいいと思う。
総合評価 B
非常に古い本なのであるが、選曲その他今でも十分通用する併用曲集である。ただし表を見ても分かるように後半に優れた曲がそろっている。バイエル前半程度ではなかなか良い曲が少ないのだが、この本でもやはり前半は取り上げるほどの曲はほとんどない。
小川一朗さんという方はおそらく相当のご年輩であろうが、今ならばともかく、戦後間もない、資料を揃えるのも難しい時期にこれだけの併用曲集を編まれたということに対しては敬意を表せざるを得ない。
特筆すべきは指使いが非常によく考えられているということ。ミスプリがほとんどないこと。これだけでも非常に良心的に作られているということが言える。
解説その他の表現はお人柄のせいか少々古めかしい。