ピアノ教材研究 練習曲集
チェルニー 40番練習曲 Op.299
久しぶりのチェルニーである。言うまでもなく純然たる練習曲集であり、楽曲としての評価はしない。そして難易度は速さによってまるっきり異なることも 、当会の会員、特にレスナー会員には常識であろうと思われる。ここにあげる難易度はだいたい、指定速度の6割強ぐらいで弾いた場合のものであると思っていただきたい。
なお、チェルニーの指示速度はどれもこれも異常に速いが、とりわけこの40番でそれが顕著である。例えば1番ならば、指示速度はハノンのスケールで言えば216になる。 それはつまり1秒の間に14個強の音を鳴らしている計算となる。その速さで弾けるならば、技術的にはプロの平均をおそらく凌駕している。それぐらいでたらめな数字である。 家並みを歩いていて、たまに聞こえてくるこの曲集の速さは5割以下ということが多い。ただ、さすがに5割以下では、この曲集をするには早すぎるような気がする。
番号 | 練習目的 | 難易度 |
1 | 右手スケール | 14 |
2 | スケール | 15 |
3 | 分散和音 | 15 |
4 | ターン | 15 |
5 | スケール | 16 |
6 | 5本の指 | 15 |
7 | 左の5本の指 | 16 |
8 | 5本の指 | 16 |
9 | スケール | 16 |
10 | アルベルティ・バス | 16 |
11 | 分散3度 | 16 |
12 | アルペジオ | 18 |
13 | 分散オクターブ | 17 |
14 | 5本の指 | 17 |
15 | 半音階 | 16 |
16 | 分散3度と6度 | 17 |
17 | 保持音 | 17 |
18 | 5本の指 | 17 |
19 | アルペジオ | 18 |
20 | 手首の回転 | 20 |
21 | 指の拡張と収縮 | 17 |
22 | 連打 | 16 |
23 | 5本の指 | 19 |
24 | スケール | 18 |
25 | スケール | 18 |
26 | 連符 | 19 |
27 | 保持音つきトレモロ | 17 |
28 | 分散オクターブ | 19 |
29 | スケール | 17 |
30 | アルペジオ | 18 |
31 | 半音階 | 20 |
32 | アルペジオ | 19 |
33 | スケール | 20 |
34 | 左手 | 20 |
35 | 分散オクターブ | 21 |
36 | 両手5本の指 | 22 |
37 | 総合練習 | 20 |
38 | 重音 | 22 |
39 | 跳躍 | 20 |
40 | 総合練習 | 21 |
2.一番の指示速度より一目盛り遅いだけ。普通の人は左手は右手より2~3目盛り劣るようであるから、1番より当然難しいと感じる。
4.この曲の指示速度に至っては1秒間に16音弾くことを要求している。
5.前二曲のスケール課題よりは一段高度になっている。
6.最後の小節の右の重音、52とあるが51でもいいかと思う。
8.かなり長いので、無駄な力が入っていると、途中でへばる。
12.両手のアルペジオ。ここから40番チェルニーは難しくなる。
13.手の小さい子にはかなり難しい。
14.楽曲としても、そこそこかもしれない。
19.仕上がった時点で、ペダルを使うのも可かな。
20.前半の最後という意味合いなのか、一段と難しい。
22.連打が得意かどうかで難易度はかなり変わる。
24.いろいろな形が出てくる。
25.両手スケール。ほぼユニゾン。
26.各小節の右手の音符の数をまずきちっと把握すること。
27.この程度の長さだと、疲労することもないだろう。
29.3度スケール。
30.8度に続くアルペジオ。
31.半音階に別の音がついている。ショパンのOp.10-2の形の練習曲。
32.左右の受渡しのアルペジオ。最終段階にペダルを使うも可。
33.スケールを主とした総合的練習。両手の短調の平行スケールがある。
34.オクターブの後のクロスの練習。曲としてもまずまず。
35.短いが、上級のテクニック。
36.ほぼ左右対称だが、かなり面倒な個所もある。
37.拡張あり、保持音あり、交差あり。
38.さまざまな重音が出てくる。速さしだいでは激ムズ。
39.右手の5本の指の練習であろうが、難しいのはむしろ左の跳躍。
総合評価 A
もちろん、これは練習曲集としての評価である。
チェルニーを使うのならば、この40番は外せないというところであろうか。
30番を外すのは私はありだと思う。中級の初めくらいの段階ならば練習曲集をするよりは、曲を一曲多くする方がいいという考え方は当然成り立つ。 また、50番は40番に比べて曲が長く、やや高度であるが、それでも、極端に難しくなっているわけではない。
40番チェルニーを1回目6割のスピードで弾き、2回目を7割のスピードで弾けば技術的にかなりのレベルまで到達することができる。 もし8割のレベルで弾くことができれば、ショパンのエチュードに移ることも可能であろう。
31番から後はかなり高度であり、場合によっては使わずに50番チェルニーに移行することも考えられる。
欠点は言い尽くされている感もあるが、左手用のものが少ないということ、あと、あえて言えば和音の練習がない。